蒼穹のローレライ (Holly NOVELS)

著者 :
  • スコラマガジン(蒼竜社)
4.53
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本棚登録 : 163
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883864416

感想・レビュー・書評

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  • 1945シリーズ4作目
    今作で初めての零戦搭乗員×整備員という設定

    声の出ない碧い目の搭乗員・塁
    その容姿と父親が犯したとされる事件に巻き込まれ喉を焼かれ声を失います。零戦にある部品を取り付ける事で撃墜の精度を上げる塁は部品によって鳴る音から「ローレライ」と呼ばれ恐れられていました。
    音が鳴る事は敵に居場所がわかる為死ぬ確率は上がります…たくさん敵機を墜して俺も死ぬ!
    冤罪で殺された父親、地に落ちた家の名誉を回復する為に…







    もう始まりから塁が戦死した事がわかってます…
    整備員・三上のもとに18年後封書が届けられ
    それは塁が最後に零戦内から発信した電文でした。

    なにこれ!今作が一番泣けるじゃない。゚(゚´ω`゚)゚。
    初めて死んじゃうけど!
    ハッピーエンドじゃないこの終わり方に納得して号泣!!
    一緒に死ぬ事のないこの2人…
    三上がいるラバウルを守るために俺は戦う…

    悲しいけど最高でした(꒦ິ⌑︎꒦ີ)


    • おびのりさん
      ごめん、4月の間違いだわ。
      今年も私大の源氏物語講座と仮名書道受講するの。
      そうすると大学生協使えるのよ。
      ごめん、4月の間違いだわ。
      今年も私大の源氏物語講座と仮名書道受講するの。
      そうすると大学生協使えるのよ。
      2024/02/26
    • みんみんさん
      オー女学生(●︎´艸`)ムフフ
      オー女学生(●︎´艸`)ムフフ
      2024/02/26
    • おびのりさん
      ぴちぴち

      まあ社会人向けオープン講座だから、高齢者多し
      ぴちぴち

      まあ社会人向けオープン講座だから、高齢者多し
      2024/02/26
  • 1945シリーズ4作目。
    今回は初の整備員×零戦乗り。
    私は床と天井で萌える腐女子ですが、これが実際に雲の上と地上とで離ればなれになると何とまぁ切なくて、有り体に言えば泣きすぎて呼吸困難起こしました。

    毎回毎回しつこいほど泣かされてるシリーズなんですが、作者のここで泣かせるぞエヘン! みたいな意図が見えないので好きです。
    物語冒頭は終戦後18年も経ってから、突然元整備員の三上のところに上官の息子が訪ねてくる、というところから過去に遡っていきます。

    三上と零戦乗りの塁の出会い、整備員の矜持と搭乗員の信念。埋まらない溝と平行線を引く価値観。
    まるでいたちごっこのような二人のやりとりは、読んでる方が可笑しくなるくらいにお互い譲らないんですが、その譲らない想いが終盤になって涙腺を直撃してくる伏線になってます。
    声の出せない塁と、その声を唯一聴くことの出来る三上のコンビは、二人だけの関係を構築していくには最適でした。
    また三上の、整備員としての気配りが性格にもそのまま出ていて、剥き出しの刃のような塁にそっと布を宛がって包み込むような優しさが沁みます。
    悲惨を極めた塁の過去を、そっと解すように抱きしめ、本当は寂しくて仕方がなかった塁が三上に惹かれていく様はとても自然で心があたたまる。

    が、そんなふたりの絆を断ち切るかのごとく、徐々に悪化していく戦況。物資も乏しくなり次々と襲撃を受ける基地。そんな中で必死に互いを守り合おうとする二人ですが、声が出ないという弊害もあってか、塁の想いは三上には簡単に通じませんでした。
    「いってらっしゃい」の一言にこめられる三上の言葉の重みに、何とも言えない胸の痛みを覚えます。
    今までの話はペアだったので運命共同体という感じだったのですが、待つことの辛さをここにきて知った気持ち。

    そして最後まで塁を守ろうと必死に搭乗する零戦を整備した三上と、三上は絶対に死なせまいという決意を持って空に向かった塁……。
    そこからはもう、ずびずびと鼻をかみ、鼻の下は真っ赤、瞼はぼわぼわに腫れ上がり、ゴミ箱はティッシュの山で大変なことに。ケチって鼻セ○ブ使わなかったのを後悔しました。
    そして塁の発した「死にたくない」に、仕舞いには呼吸困難ひきおこし、ひんひん嘔吐いてもんどりうつことに……。

    結末としてはそれぞれ受け止め方が異なるとは思いますが、私はごく自然な終わりで良かったと思っています。
    そして初回封入ペーパーを読み、はじめてそこで三上の気持ちに区切りが付いたようにも感じました。
    この作品でも両者生き残って、というストーリーだと、ご都合すぎて非常に白々しくなってしまうというのもあったのですが、どうして表紙が塁ひとりなのか納得です。
    そしてタイトルを思い返し、またむせび泣く。

    塁の懐中時計には、三上のばらした時計の部品も入っていて、それはまるで二人が一つの魂となって時を刻んでいるようで、非常に美しかったです。
    初読はもどかしくてざざーっと読んでしまったので、じっくり再読しようにも、冒頭文からすでに滂沱の涙で先に進めないという非常事態。
    【あのとき、できなかったから】の文章で嘔吐いて咳き込むほど涙が噴き出してどうしようもなくなる。

    シリーズ自体がもう好みが分かれすぎているので、今更嫌悪感があるのに手を伸ばす方は少ないとは思いますが、わかりやすいハッピーエンドじゃないと、という方は避けた方が賢明かもしれません。
    戦争物に抵抗なく、身が引きちぎられるほど痛い話どんと来いな方には、ぜひともオススメしたいです。

  • Holy NOVELSから出ている尾上先生の本は大体涙腺が決壊します。読者は辛い悲しいと思うことしか出来ないけど、当人達にとっては幸せだったんだと思うとまた涙が出てくる。戦争のことを深く理解しようと思えた大切な作品。

  • あぁ...どうして尾上与一先生は塁の最期を悲しく終わらせてしまったんだろう
    塁を生かせてあげて欲しかった
    三上と平穏で安らかな幸せを掴んで欲しかった
    塁こそが誰よりも幸せになるべき人ではないのか
    最後まで読んで塁の心からの叫びと想いに涙し胸が張り裂けそうになった

    1945シリーズの4作目の本作も舞台は太平洋戦争中期のラバウル
    整備員の三上はラバウルに向かう途中、不思議な音を響かせて戦う一機の零戦に助けられる
    その零戦の搭乗員が声の出ない碧い瞳の「ローレライ」と呼ばれる浅群塁だった
    塁の言葉にならない声は零戦から奏でられるローレライの哀しい歌声と重なる


    塁の無謀とも死にたいとも思える飛行は塁の苛烈で過酷な過去の事件と生い立ちが原因だ
    撃墜数を上げる為に人を顧みず我儘に振る舞いその容姿のせいでいつも孤独に生きてきた塁
    塁の声を聞き取れるという事で専属の整備員となった三上にだけ見せる寂しげな表情
    誠実でいつも仕事に真摯で塁へも間違いを正そうとする三上は塁の言葉にならない声を優しく掬い上げるように理解しようとする

    汚名を着せられた家名と殺された両親の為にただひたすら殊勲を上げ戦場に命を散らそうとする塁へ「生きて帰ってきてください」と何度も直向きに告げる三上の想いが少しずつ塁の頑なな心に温かなぬくもりを注ぎ込む

    子供の頃から瞳の色のせいで社会から隔離され育った塁は物事の普通の尺度を知らない
    その心根にある無垢で素直で人一倍繊細で壊れそうな不器用さをいつも不遜な態度の裏に隠している
    塁の傲慢な態度から見え隠れする幼さや弱さに愛おしさと憐れみが心をいっぱいにする

    三上が愛した塁はとても可愛らしくいじらしい
    三上の側に居るだけで満たされる塁の微かなはにかんだような笑顔
    人に蔑まれた塁の碧い瞳を三上は美しいフローライトのようだと伝える
    首から鎖骨へできたケロイド跡も美しいと優しく口付ける

    ラバウルが舞台の前2作はペアとして最後まで側にいる事が出来たが、本作の三上は整備員として飛び立つ塁を痛む想いで待つしかない
    送り出したその瞬間が最期の時かもしれないという過酷さ
    帰って来ないかもしれないという不安を常に胸に抱えて待つ辛さ
    三上の心痛はいかばかりだろう
    飛行中の塁が緊急な空襲が基地を襲った時に、三上の安否を死ぬ思いで慮った時に、初めて待つ辛さ愛する人がただ存在する喜びを知る
    互いに平行線だった三上と塁の想い合う気持ちが命の儚さを織り交ぜて固く絡み合うように繋がっていく

    三上が塁の父の形見の懐中時計を自分の時計の部品と合わせて修理しなおす場面は、塁と三上が共に交わり合いひとつになり時を刻んでゆくような意味に感じられてとても美しい
    そして三上の手によって丁寧に大切に修理され時を刻む懐中時計に、ラバウルの海の上で散った塁の魂が煌めくように宿っている

    ※尾上与一先生の同人誌「青空のローレライ」には塁と三上達のささやかなラバウルでの日常や戦後の三上の姿などが描かれていて必読

  • 1945シリーズ

  • めちゃくちゃに良かった、めちゃくちゃ泣いた、、、太平洋戦争ものってこともあり、なかなか手を伸ばせずにいたけど、本当に読んでよかった。塁の人生を思うとやるせなさと切なさと悲しさで苦しいけど、ラバウルで三上と出会えたことは塁にとってどれ程の救いと幸せだったろう…内容もだし、プロローグからの構成も、BLとしてはやっぱり好みが左右されるカプも、全部◎すぎてもうこの本を泣きながら抱いて眠る…

  • シリーズ通して読ませて頂いています。今回は初めて少しバッドエンドというか、片方が亡くなってしまう最後です。けれどそのことが必ずしもバッドかどうかは読む人にとって変わってくるラストのように思いました。私は不幸ではないと思います。それはやはり尾上さんの書く描写の一個一個が繊細だからというのもあります。声が出ない零戦乗りのとはすごいなと最初思いましたが、読んでいくとそのことがきちんと意味を持ってくるのが面白いところでした。声がないから伝わるものもあって、逆に伝わらないものもある。徹雄だけがその言葉を理解できるのも互いが唯一になれるキーワードですね。想い合ってるはずなのに、生きて欲しいと伝えたのに、累が死んでしまうのは悲しかったけれど、徹雄も累が本当は生きたいと願って一生懸命生藻掻いての最期だとわかって本当によかったです。
    個人的には、零戦て無線の電波がを悪いと有名だと聞いたので、声の伝えることできない累が零戦乗りというのはなかなか深いことだなというところです。だからこそ歌うというのも生死を分ける戦場ならではでいいなと思いました。
    古参の恒や六郎、秋山さん、新などの名前が出てきてちょっと嬉しかったです。
    今回は『乗る人』ではなく『整備する人』の心情や機体に対する思い入れなどが語られていて非常に新しい気持ちで読めました。

著者プロフィール

小説家。代表作『天球儀の海』『さよならトロイメライ』『初恋をやりなおすにあたって』(キャラ文庫)、最新刊『雪降る王妃と春のめざめ花降る王子の婚礼2』(キャラ文庫)。

「2021年 『笠井あゆみイラストカードブック 旦那はんと痴話喧嘩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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