現代の覚者たち (ChiChi-Select)

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  • 致知出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884741594

感想・レビュー・書評

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  • 1988年に出版された7人の覚者との対話であります。森信三(教育者:1896~1992)、鈴木慎一(慎は正しくは金編:1898~1998:音楽教育のスズキメソッド創始者)、三宅廉(1903~1992:キリスト者、医師、産科と小児科の統合を図る、周産期医療の求道者)、坂村真民(1909~2006:詩人、念ずれば花ひらく)、関牧翁(1903~1991:禅僧、生也全機現、死也全機現)、松野重吉(1906~?:日本ビクター全盛時の社長、その後、JVCケンウッドとなる)、平澤興(1900~1989:京都大学総長、医師)。35年程前の対話ですが、なるほど、と思うところ多々あり。松野さんが社長を務めた日本ビクター(VHSビデオの開発会社)が、その後、傾いたのは、どうしてなのか、とも思いつつ、よんでおります(本当の覚者は、松野さんの上司だった松下幸之助さんだったのかな、とも)。★4つかな

  • ”<一言>

    <読書メモ>

    <きっかけ>
     社内木鶏全国大会会場にて。”

  • 渋いところをついてくる良書です!賢人の言葉は深みがある!

  • 雑誌「到知」の創刊35周年記念講演会で、編集長の藤岡さんが購読を薦めていたので購読。

    <真実は現実の唯中にあり 森信三>
    ・「人間いかに生きるべきか」というのが根本問題。この問題に対して無関係な学問は無用の長物。
    ・真理はこの現実の天地人生の唯中に、文字ならぬ事実そのものによって書かれており、しかもそれは刻々時々に展開している。
    ・みなそれぞれ神様から封書をもらっている。この世へ送られた、その使命がなんであるか解かねばならぬ。開けることを学問とか宗教とか名前をつけている。
    ・三十五歳を中心とする小十年の間で、遅くとも四十までには、自分に課せられた使命の見当をつける必要がある。偉人は三十歳前後でだいたい目を開いている。
    ・人間は三つの要素で形成されている。第一に遺伝的体質、第二は逆境による試練、第三は師匠運。第二第三は後天的条件で努力と精進次第で獲得できるが、とはいえ、これとても、天の恩寵と思わざるを得ない場合がある。しかしやはり「縁は求めざるには生ぜず。内に求める心なくんば、たとえその人の前面にありとも、ついに縁を生ずる到らずと知るべし」。
    ・天分や素質に心を奪われて嘆くよりも、自己に与えられたものをギリギリまで発揮実現することに全力を尽くすことこそ大事。結局、多少能力は劣っていても、真剣な人間の方が最後の勝利者になるようだ。
    ・とにかく人間は、自己に与えられたものを十二分に生かして実現することこそ、人間の生き方の根本信条でなければならない。
    ・いかに生きるかという問題を一般論でなくて、毎日の生活の中でときどき、ああ、先生だったらどうするだろうかと考えてみる。これが大事。

    ・書かれた言葉は平面。話すのは立体。書いたものを読んだだけではだめ。師匠につかないといかん。
    ・生命の弾力は、読書を介してその固形化を防ぎ得べし、故に読書を怠れば、心の大根にすが入り初めしものと思うべし。
    ・真の読書というものは、いわばその人がこれまで経験してきた人生体験の内容と、その意味を照らし出し統一する光と言ってよい。だから、せっかく、深刻な人生経験をした人でも、もしその人が平生読書をしない人の場合には、その人生体験の意味を十分にかみしめることができない。
    ・読書の中心は自分というものを、つねに内省できる人間になること。私達は平静読書を怠らぬことによって、つねに自己に対する内観を深め、それによって真の正しい人間になることが、なにより肝要。
    ・我々が知恵を身につけるには、すぐれた人生の師の言葉を傾聴すると同時に、できるだけ人生の知恵を含んだ生きた書物に接するほかない。しかし、結局は自分自らの人生の苦労というか逆境の試練によって、血税ともいうべき授業料をおさめ、世の中という生きた学校において、体をしぼって、身につけるよりほかない

    ・人間、億劫がる心を、刻々と切り捨てねば、ね。年をとればとるほど、それがすさまじくならねば。
    ・実践面で第一に取り組むのは日常生活の俊敏さ。日常の雑事雑用をいかに巧みに要領よくさばいていくか。
    ・傑出した人ほど言葉の慎みを重視している。
    ・腰を立てる「立腰」を徹底していると、文字通り、生きる力が湧いてくる。
    ・物事は一応八十点のできばえでいいから、絶対に起源に遅れないこと。これ世に処する一大要訣と知るべし。
    ・仕事は一気呵成にやる。
    ・人間は進歩か退歩かのいずれかであって、その中間はない。現状維持と思うのは、実は退歩している証拠である。


    <生命は行動する者に、その力を発揮する 鈴木慎一>
    ・どんなに成績が悪いと言われている子どもでも、ちゃんと日本語を話す能力は身につけている。どんな子どももみんな、母国語が話せるようになる教育をされている。いわば、この母国語の教育法こそ、どんな教育法にも勝る。さらにいえば、どの子もうまくしゃべる能力だけでなく、他のことだって高く育つ。その可能性を備えて生まれてきている。
    ・成績が悪いのは頭が悪いからではなくて、教育の方法が間違っているから。その子に才能がないのではなく、育てられなかった。
    ・鍛えることによって、人間の生命活動は本来の姿を現し、能力を生む。その能力は、さらに訓練することによって、すべての困難を解決し、より高い能力になっていく。
    ・才能はあるものではなくて、創るもの。下手な努力をすれば下手な才能が育つし、優れた才能を示した人達はそれだけ正しい努力を積み重ねた人達だと言える。
    ・最も大切なことは、何度も繰り返してやる。身につくまで何度でも、繰り返してやる。子どもが日本語をしゃべれるようになるのは、毎日毎日の繰り返し。どんな能力もそれと同じで、やさしく感じるようになるまで、何度でもやる。それが能力を高める秘訣。
    ・もともと不器用はない。不器用で指が速く動かないと言ってくる生徒がよくいる。しかしそれは不器用で指が動かないんだと自分に言い聞かせている。つまり、練習の仕方が下手。だから、そういう生徒には、ゆっくり丁寧に繰り返し繰り返し練習させる。で、少しづつ速くしていく。そうすれば、誰でもできるようになる。自分には生まれつき能力がないと嘆くのは、虫のよい身勝手。
    ・音痴は子どものうちに間違った音を身につけてしまった結果。例えば間違ったファの音を身につけてしまった子がいたら、新しく、正しいファの音を身につけさせればいい。初めはだめだが、やがて後から聴いて育った正しいファを発する能力が上回る。
    ・やるべきと思ったらすぐにスタートする。これは人の一生をも左右する重大な能力。
    ・思うだけでは能力ではない。思わないのと結果は同じだ。やってのけてこそ、能力なのだ。思ったら行う能力を身につけよう。
    ・行動がないということは、自らチャンスを放棄していること。
    ・やり始めたら、今度ややりぬく忍耐力を身につける。
    ・決心し行動したら、希望をもって生きる。高く大きな山を望む。しかし、登るからには一歩一歩近づかなければならない。急ぐべからず、これが原則。急いで倒れてしまっては何にもならない。しかし、休むべからず、これも弁即。誰が何と言おうと、休まず、急がず、歩を運んでいれば、必ず行き着く。
    ・打算的な考えはだめ。少しでも立派に、より美しい心の人に、そして幸福な道へと子どもを育てる。親としての心配はそれで十分。人間として立派に育てば、立派な道が開ける。
    ・怒るなんていう能力はとっちゃった方がいい。たとえこっちに馬鹿野郎と言う人がいても、あれはそれを言った自分のことを言っているんだな、かわいそうにねと思う。人に馬鹿野郎という能力が育ってしまっているということ。みんな素晴らしい能力を持って生まれてきたのに、誰がそんなふうに育てたんだろうと思う。

    ・生命が与えられて活かされている。死ぬ心配をするのは馬鹿なことだと気づいた。生命に従って生きるのが、私の本職だと気づいた。そう思ったら翌日から元気になった。死ぬとかいった問題が潜在意識にあると、生命の働きの邪魔になる。
    ・人間は、それぞれに与えられた生命が大きな働きをするということを知らない。与えられた生命を活かさない。

    <よく生きることは、よく死ぬことなり 関牧翁>
    ・人間というものは生まれたから死ぬ。それで、日常、与えられたささいなこと、そのささいなことをおろそかにしなかったならば、いざというとき覚悟の必要はない。
    ・「一日よく生きる」ということを徹底していけば安楽の死につながる。
    ・一日一日よく生きることは死の勉強することであり、よく死ねることである。

    <命を賭けてつくったものは、いつまでも生きる 松野幸吉>
    ・商売のコツは、まず自分より人が偉い、と思えということ。そうすると、人の長所を見るようになって、人の短所はみないことになる。あいつはいいとこあるなぁという感じになり、自然に、人が偉いと思えてくると、その人から学ぼうという態度になってくる。大抵の者は自分よりも、いいもの持ってるということを理屈でなしにわかったのが、商売のこつをわかった最初。

    <80歳になっても人間の成長はこれからである 平澤興>
    ・長生きに一番危険なのは退屈すること、それからくよくよすること。長生きに共通のファクターは心の安らぎと喜びを持つこと。裏からいえばストレスをなくすること。つまらん緊張、心配はない方がよい。
    ・現代人の七十五パーセントぐらいは程度の差はあるにしても、なにかに追われるような、縛られてるような感じで生きている。それは一種のストレスで、そういう状態では本当の力は出せない。
    ・一生懸命に働くなんていう表現は、本当は素人。一生懸命なんていうことを考えたのでは、百パーセントは出ない。楽しんでやらなきゃ。だから、言葉は悪いが、仕事が道楽にならなきゃ、いけないのだろうと思う。
    ・本当に偉い人は偉そうに言わない。偉そうに言う人は成長が止まっている。

    ・教育とは火をつけて燃やすこと。教えを受けるとは、燃やされることであり、火をつけられること。
    ・火をつけさえすれば、後は本人が燃える。しかし、火をつけるということは、こちらが燃えなくてはできない。こちらが真に燃えておれば、いつの間にか、火がつく。

    ・賢いと燃ゆることができない。燃ゆるためには愚かさがいる。愚かさは力だ。
    ・優等生のやり得る仕事は大抵、型が決まっている。日本の将来に大きな変化を与えて、自ら進むべき道を断固として守っていくというようなのは、むしろ優等生でない方に多い。
    ・愚かさ。損とか得とか考えないでひたむきに行く人。
    ・器用な人は目先だけでさっとやる。一見誠に器用だが、時に思わぬ間違いを起こす。
    ・誰がやってもできるようなことにも、なお祈りを込めて、百やれば百、絶対に間違いを起こさんという、これが真の名人。
    ・京都大学でノイローゼになって新潟の故郷の雪道を歩いていたら、ベートーヴェンの声がドイツ語で聞こえてきた「勇気を出せ。たとえ、肉体にいかなる欠点があろうとも、我が魂はこれに打ち勝たねばならない。二十五歳、そうだ、もう、二十五歳になったのだ。今年こそ、いよいよ本物になる覚悟をせねばならぬ」
    ・ベートーヴェンは大いに悩んだが、結局、彼は踏みとどまる。そしてその時に、自分に向かって叫んだ言葉がさっきの言葉。

    ・表だけを見ておるような誉め方はだめ。誉め方も、裏まで見えるような人でないと、本当の誉め方ができない。誉めるには、こちらがこれだけの行をしていなければならない。愛情だけじゃ、あかん。だから誉めるなんて、そう簡単なことではない。結局、人の欠点が目につく間はまだだめ。それらの欠点が飾りに見えるようになれば本物だろう。
    ・意地悪をされて、それが意地悪にだけ映るようでは、本当の成長はできない。意地悪をされても、それでもなおかつ、これもまた人生の修養かと思えるほどのゆとりがあれば、きっとこういう人は成長し、運が悪いなどということはない。
    ・不幸とか失敗とか、そういうもので腐っておるだけでは、その人はやっぱり本物になる資格がない。不幸でも失敗でも、その裏までも読んで、これになお感謝ができるだけの深さとゆとりがなければだめ。

    ・ふつうの人は数の少ないもの、珍しいものなどをただ不思議だとか、有り難いとかいうが、それは見方が粗末だから。いかに数が多くても、尊いものは尊く、不思議なものは不思議。しかも学べば学ぶほど、知れば知るほど、いよいよその不思議は多くなるばかり。そうなると万物が有り難く、拝まずにはいられない。
    ・学べば学ぶほど、いよいよわからんことが多くなるほどの不思議な人間に生まれてきた。そういう人命を与えられたということは、感謝しても感謝しきれないこと。

    <対談 生きることは燃えることなり 森信三/平澤興>
    平澤:誠実というのは、愛情と努力と言い換えてもいい。大きな仕事を成し遂げるのに最も必要なのは必ずしも才ではなく、むしろ多くの場合、物に対する愛情と努力です。偉大な仕事には必ず偉大な愛情と努力がある。ただ努力というと、ハチマキ型の堅苦しいことを思うが、足立先生のような人は仕事を楽しんでいる。仕事を楽しんでやるというのはのん気に要領よくやるということではなくて、自分の仕事に対して、つねに変わらぬ心の緊張を失わないということです。学者でも芸術家でも宗教家でも、真に偉大な人はこの無緊張の緊張を身につけ、むしろ働かずにはおれない人です。

    平澤:「わかる」と「わかったつもり」は大いに違うと感じさせられました。モナコフ先生は「ドクター平澤、わかったということと、わかったつもりは違うね。標本を見る時は君がこれを世界で初めて見るんだという目で見なければならん」と。「本などというのは、どんな本といえども、それに頼ってはならん」といって褒めて下さいました。

    平澤:私は頭の回転が非常に遅いんだ。ただ深く考えることは、これは負けない。その点を、みんな認めてくださり、「もっと賢くなれ」とか、「頭の回転をもっと速くせよ」などというような先生は一人もおられなかった。

    森:先生の語録の中に、「長所を伸ばせば短所は自ら隠れる。小木の時は曲がっていても大木になれば、真っ直ぐになるようなものです」と。大木になるってことは宇宙の生命を直に受ける。それだから、直ってくる。曲がりってものは我だものね。
    平澤:人の欠点が目につくようではまだだめですね。人の悪口しか言えぬ人は、もう成長能力のない人であり、また人の短所しか見えない人は成長が止まっている人ですよ。
    森:長所が見えんのは、こっちに我があるから見えん。向こうから学ぶものを見つけるっていう態度にならないとね。

  • 生きるとは何か、先人たちの教えが身に沁みます。

  • 覚者といっても聖人君子ではなく、それぞれの分野で自分なりの道を誠実に歩いてきた人々という印象をもった。
    感謝、謙虚さ、明るさ、信念、自律性などが共通して感じられた。
    人間関係を大切にしなければと思った。
    11-49

  • じっくり読みたい本。
    良い言葉が至る所に溢れてる。

  • 感動!
    特に、鈴木鎮一氏と平澤興氏の話が染みた。
    優れた教育者に指導された人々は幸せ者だなぁ…。

  • 何度読んでも味わい深い対談集です。
    この先、読むたびに新しい気持ちになるでしょう。
    それだけ、人生のエッセンスが満ち溢れていると思います。
    中もさることながら、みなさんの写真のお顔がすばらしい。力みなぎる輪郭、しっかりとと捕らえた目線。

  • 平澤興:生きることは燃えることなり。教育は火をつけること。京大総長。20歳のときに神経衰弱になったら、ベートーベンの勇気を出せ、25歳今年こそ本物になる年だという声が聞こえた。
    松下幸之助:呼び水を上手にする。当たり前の発想をするな。その人の味を出させ、自分で考えさせる。
    森信三:封書は40歳までに開け。それぞれ神様からいただいている天分を十二分に活かせよ。
    鈴木慎一:すべてのものにすばらしい可能性がある。読書だけでなく天の理を読め。(右半身が小児麻痺の子もヴァイオリンで治った

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