立命の書『陰騭録』を読む (致知選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884741815

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  • ①立命の学
    宿命を努力で立命にする。『仕方ない』という諦めの気持ちから『最善を尽くし徳を積むことで活路を拓く』姿勢への転換。謙虚、積善、改渦。真人間になる。心学。人間の根本の培養。人間は真剣に取り組んで初めて本物が生成される。
    袁黄→雲谷禅師。本当の運命とは、我より立つる立命でなければ。
    誠の人間は、義務の要請でのみ世の舞台に出る、それ以外は家庭で、少数の友人と尊い書籍に学んで、人知れず生きるべき。
    think global, act local.
    広く学び、地域で行う。
    一燈照隅、万燈遍照。
    一燈としての役割を全うすること。
    積善の家必ず余慶あり。自分の家系を調べると、父に積善あり。叔父に積善あり。祖母に積善あり。曾祖母に積善あり。その中で育った自分が受けた余慶がいまの幸福を作っていることを悟る。報恩感謝はどうすべきか。真の家系孝行は家族と子孫と後輩育成で人間を育てることにあるのではないか。
    義理再生→実践的・精神的に生まれ変わる。善事三千条。慎むことを忘れてはならない。先祖の徳は父母から、国の最小単位が家庭。
    日々に自分の非を知り、日々に過ちを改める。乃ち至精、至邃、至真、至正の理なり。

    ②謙虚利中
    満は損を招き、謙は益を受く。貧乏で苦労して勉強しておる学生が後にだんだん出世してゆく。謙遜の徳の光。益者三友(正直、諒、多聞)、損者三友(便辟、善柔、便佞)。知恵とは徳から発する良心のかがやき、知恵が開ける。『命を造るものは天なり。命を立つる者は我なり』。
    命は自然の理法・原理・原則であるから、我々にはどうもできぬ。しかし人間は天によってそれを開発する使命を負わされておる。努めて善事を実行し、広く陰徳を積み、謙虚に謹んで天の幸いなる運命を承ける。
    →大自然の中で命を授かる。命を育てる使命は自分自身にある。

    ③積善
    一燈照隅・万燈遍照。人間の意思の中で最も尊いもの:意味への意思。こんなことしても意味がない、こういう生活・仕事に何の意義もない、という考えが人間と人生を否定することになる。
    人知れず行って陰徳。真実の心から発して仮の心で行わない。困難でありながら行う。貧者の一燈は百善に当たる。善を為して善を為すの相に往しない。

    ④改過
    二十歳で19までの非を覚って改めた。21歳で改め尽くさずを知る。50になっても、49年の非を知って改める。
    振り返れば、人生の先輩から授かったことがいかに多かったことか。いかに無礼を働いてきたか。恩を返し、非礼を改めたとしても、歳を経るにつれてなお深まり思い出す『恩』、『非礼』。
    謙虚になったとき、素心となったとき、更なる感謝と、更なる改過の心が湧いてくる。それを実践する日々。

    ⑤まとめ
    運命から立命に深化させるためには、
    受け身ではなく主体的に。
    飾りではなく心から。
    慢ではなく謙。
    悪を積まずに善を積む。
    恩に報いて非礼を改む。
    真人間にこそできる。
    私の尊敬する先輩が、『1日24時間、どうしたら地域がよくなるかのみを毎日考え続けて、初めていくらか地域に貢献することができた』と語っていた。それから10年、当時も地域に欠かせない人だったその先輩は、いまはもっと欠かせない傑物となり大きな立場になっている。
    10年経っても、自分が追い付くよりもむしろ先輩が遠ざかっている。
    いま思えば立命の為せる技なのか。謙虚、積善、改過の積み重ねの差があることを恥ずかしながら認識することができたように思う。

    運命を、我より立つる立命に。知行合一していきたいと考えさせられた。

著者プロフィール

明治31年大阪市に生まれる。
大正11年に東京帝国大学法学部政治学科を卒業
昭和2年に金鶏学院を設立。
陽明学者、東洋思想家。
終戦の詔の起草者の一人。
昭和58年死去

著書
『易學入門』『全訳 為政三部書』『東洋思想と人物』『暁鐘』『王陽明研究』『陽明学十講』『朝の論語』『東洋学発掘』『新編 経世瑣言』『新憂楽志』『老荘思想』『古典を読む』『人物・学問』『光明蔵』『政治と改革』『古典のことば』『この国を思う』『儒教と老荘』『旅とこころ』『王陽明と朱子』『人間維新Ⅲ』『憂楽秘帖』『明治の風韻』『天子論及び官吏論』(明徳出版社)

「2000年 『人間維新 III』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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