- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784885531989
感想・レビュー・書評
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著者が携わったプロジェクト事例が細かく書いてあって良い。
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■学んだこと
第一章
▼変わるメディア環境
生活者のメディア環境はすさまじい速度で変化し続けている。
① メディアやコンテンツが多様化、それに伴って接触方法も多様化している。
② 情報が溢れかえり、生活者に届かない情報が増加している。
▼変わる生活者行動
「AISAS」の法則
A⇒注目I⇒興味S⇒検索A⇒購入S⇒共有
CGMが普及し、生活者同士で情報を提供できるようになった。それらの口コミが生活者の購買決定への強い影響力を持っている。
▼変わる広告コミュニケーション
①メディアの役割を考える。
商品の存在を知らせる役割はテレビが有効なメディアだが、商品を詳細に理解してもらうにはインターネットが有効なメディアとなる。生活者の使い分けによって、それに合わせたコミュニケーションを構築しなければ広告が機能しない可能性がある。
② メディアニュートラル
クライアントの課題解決のために、どのようなメディアが必要になるかをニュートラルな視点で考える事。3つの価値に集約できる。
・能動の価値
・信憑性の価値
・話題創出の価値
③ クロスメディアは目的でなく結果
複数のメディアを使うことはメディアミックスである。課題解決のため、複数のメディアが必要となるのがクロスメディアである。大切なことは広告コミュニケーションをソリューションにすることであり、そのための最適なメディアを組み合わせてコミュニケーションを設計する。
④ 露出から関係性構築へ
生活者が広告に対してより能動的に接触し、関与してもらう関係性を構築する仕組み作りが重要である。
第二章
▼事例紹介
・コンテキスト・デザイン⇒キャンペーン全体の「見え方の設計」をする手法であり、PRと親和性などを意識して設計する。商品の背景や想いなどを理解し、強いストーリー性を生み出す。
・WEBディレクション⇒優れたサイトを見ながら、なぜ優れているのかを考える。
・注目されているメディアをただ使う事で満足するのではなく、それに加えて誰も見たことがない新しい表現にこだわる。
・バイラル・コミュニケーションとバズ・コミュニケーションの違い。
バイラル⇒具体的なコンテンツ(動画、ゲーム、写真)が人伝いに次々と広がっていく事。
バズ⇒話題の対象がコンテンツに限らず曖昧でも、世の中全体を騒がせるような話題、噂。
・尖った企画を考えだすために、日常で見つけた面白いアイデアと広告を結びつける癖をつけておく。
・PRの弱点として、コントロールできない対象にキャンペーンの成功を委ねる事と、話題が持続しないことが挙げられる。
第三章
▼コミュニケーション・デザイナーの役割
クライアントの課題整理から、実施、結果の分析に至るまでの全行呈を担当する。コミュニケーション全体を俯瞰してコントロールしていく。
▼プランニング・プロセス
①思いこまない。自分の肌感覚を疑う。社会の動向を分析する「ソーシャル・インサイト」とクライアントの動向を分析する「クライアント・インサイト」を徹底させる。
② 誰を、どうしたくて、そのために何をすべきかを最初に考える。
③ 「AISASモデル」から考える。仕組みではなく気持ちをデザインする。
④ ターゲットの選定の見直しを行う。
⑤ ターゲットを把握する(ターゲットインサイト)。定性調査と定量調査を活用する。
⑥ キーになるアイデアを考える。キー・アイデアが決まった時点で大まかなメディアプランや表現の方向性を見定める。
⑦ キー・アイデアを中心に、コミュニケーションの完成度を高めていく。
⑧ キャンペーン開始後に、生活者の反応を見ながら調整する。
▼3つの意識と5つの原則
・自分で動かないキャンペーンで、人は動かない。
コミュニケーション・デザイン3つの意識
① ニュートラル⇒固定概念や思い込みを捨て、問題解決の方法をニュートラルに考えられているか。
② シンプル⇒生活者が広告に接触した瞬間のコミュニケーションは、シンプルでわかりやすいものか。
③ フェイスフル⇒課題解決に対して、誠実に臨んでいるか。
コミュニケーション・デザイン5原則
① 思いこまずインサイト。
② 課題解決のためにありとあらゆる手法、選択肢を考える。
③ メディアと表現を分離しない。
④ 仕組みではなく、気持ちをデザインする。
⑤ 結果に固執する。
【明日から実践できること】
① メディアの特性を理解していく。メディアニュートラルな考え方を実践するためには、キャンペーンやコンテンツに合ったメディアを選択することができなければならない。
テレビや雑誌を見ながら、どのような人が見そうか、どのような特集を組んでいるかをチェックする。
② 思い込まない。自分が思っていることが正しいとばかり考えてはいけない。人の話を聞き、多様な視点があるということを理解していく。
③ 全体を俯瞰するような視点で業務に当たる。業界やキャンペーンを調査していく中で、こんな企画があったら面白いかもしれない、というような仮説を想定した上で、調査を行う。そのようにして、調査だけの視点だけでなく、もっと高い位置からの視点を持てるように意識していく。 -
マーケティング・コミュニケーションの優れたケーススタディ。残念ながら事例として知っていたものは無いが、紹介されたものの多くに、なるほど、と唸らされた。著者は大学研究職を経て2004年に電通に入社したという事だが、本書が発売されたのが2008年であるということは、入社4年でこれ程の実績を上げているという事に驚きである。
事例の中でも特に、名古屋の結婚式場のマリエールのものが秀逸だ。 -
永谷園の事例とってもおもしろかった。バズコミュニケーションを起こすためのさまざまな仕掛け、一つ一つに思惑があってそれらが絡み合っているさまはまるで伏線がちりばめられたミステリー小説のクライマックスのよう。圧巻です。
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コピーを書く以前に必要なことが
足りていない気がして、
根本から修正しているなかで、
「コミュニケーションの設計の方法」は
とても勉強になった。
知識としてあっても活かせていなかったと
あらためて痛感。
実践しながら、スキルを磨かねば。 -
広告業界では有名な電通・岸さんの本。
もう5年も前の本ですから、広告やメディアのあり方なんて現在はもっと変化しているはず。
しかし「コミュニケーションデザイン」という考え方は、どんな時代や人にも通用しそうなので、私なりに読み砕いてみたいと思います。
まず、聞き慣れない「コミュニケーションデザイン」って何?というところから。
この本の著者である岸さんはコミュニケーションデザイナーという肩書きでお仕事をしている人。
具体的にどんなお仕事かというと、
“プロモーションやブランディングなどの広告キャンペーンから商品開発、事業企画に至るまで、企業と生活者の間に存在する、ありとあらゆるコミュニケーションを設計していく仕事”
だそう。
まだまだ「?」ですよね。
ではさらに具体的な例。
“例えばクライアントから「傘が欲しい」と言われれば、一生懸命「最高の傘」を用意するでしょう。しかしそれゆえに、本当は「濡れたくない」という、本質的な課題にあえて触れないようにしたりします。
〜中略〜
本質に立ち戻れば「雨の降らない時間を教えてあげてはどうだろう?」「地下道をつくってあげれば、絶対に濡れないよね?」と傘よりも適切な方法を思いつくこともあるわけです”
つまり、クライアントの潜在的なニーズを掘り起こすことがコミュニケーションデザインの目的であるということが想像できます。
クライアント自身も気づいていない課題に徹底的に向き合うこと、気づかせるお手伝いをすること。
それがコミュニケーションデザイナーのお仕事であるようです。
では、コミュニケーションをデザインするってどんなこと??
潜在的な課題が明確になれば、それを解決するための手段へ、ステージが移ります。
その手段は極力シンプルに考えること。
(1)誰を
↓
↓ (3)そのために何をすればいいのか?
↓
(2)どうしたいのか
この過程が具体的な事例として、かなり詳細に掲載されているので、ぜひ目を通していただきたいのですが、
簡単に言えば、動機を探って組み立てて行く作業を繰り返し行っているということでしょうか。
これでもかというくらい、生活者の動機にインサイトする。相手の気持ちになって考える。
それを「気持ちをデザインする」と表現していましたが、納得です。
つまりそれが「コミュニケーションデザイン」だということ。
だとすれば、私たちの日常においても「大切な人にどんなプレゼントを贈ろうか?」と思ったとき、このプロセスはとても参考になりますよね。
コミュニケーションデザイン、普段から意識したほうがよさそうです! -
さすが
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私たちが目にするのはほとんどが完成形だから、このような思考のプロセスをふんでいるなんて面白いと思ったし、世の中に影響与えるだけのことはあるなと感じた。
飛ばし気味に読んだので、またじっくり読んで勉強したいー -
広告社視点で、広告を通じた企業と消費者とのコミュニケーションの構築について、考え方や事例についてかなり噛み砕いて紹介している本です。
私は広告社勤務ではないですが、1企業のマーケティング担当者としてマーケティングコミュニケーションを考える上での参考図書として読んでみたのですが、かなり参考になりました。
本書では「コミュニケーションデザイン」というキーワードを用いて、単体のメディアのつなぎ合わせではなく、ターゲットを見据えた上で各メディアの特徴を考えながら統合的にどんなコミュニケーションを図っていくかを考えることの重要性を解いてます。
広告社が考えるコミュニケーションは主に短期ないし中期でのコミュニケーションですが、広告主(=事業会社)は長期的なコミュニケーションを考えた上で常時オウンドメディアを運用していく必要がありつつも、実態としてはメディア毎に縦割りになってしまっていることも多々あると思うので、そうした状況を見直すきっかけにできる一冊ではないかと思います。
(広告主として発注する際にも、広告主側のプロジェクトマネジメントの1要素としてこうした視点は持っておくべきだとも思います)
余談ですが、この筆者は本当に「コミュニケーションデザイン」という仕事が好きなんだなというのが伝わってきて、個人的には好印象でした。