新・原子炉お節介学入門

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著者 : 柴田俊一
  • 一宮事務所 (2005年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885553059

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新・原子炉お節介学入門の感想・レビュー・書評

  • 私は原子力発電には反対だけど、この本を読むと、まだまだ自分は感情論なんだなあと思う。
    賛成反対問わず、知識を持たなければならない。その入門に、うってつけ。これ、すごくいい本だ。


    驚くべきは、日本政府や、各メーカーの姿勢。
    p112
    IAEAで行われた原子炉事故時の線量そくていに関するパネル討論会に、著者が出席するのだが。
    「因みにこのパネル討論の招待は科学技術庁に来たが「わが国では原子炉の臨界事故は起こらないという建前でやっていますから、この会議には政府代表は出せません」とのことで、IAEAから筆者に直接招待という形で出席のチャンスが回ってきたものである。」

    まったく呆れて、言葉もないとはこのこと。
    これを読んだあとに、関電が
    「夏の電力不足とは関係なく、原発は動かすことを前提としている」
    と言ったのは、動かさなければあれが資産ではなく、ただのお荷物になってしまうので、関電の資産が減るからだっていう話を聞いて、また驚いたものだが。
    友人に話したら、もっと色々話してくれて。
    東電が原油代を算出しているが、その基準は「今年の暑さは平年並だっていう予想なのに、猛暑だった一昨年の温度を元にしている」だの。
    「原油代は円高の現状ではなく、リーマンショック前の代金だから、1ドル120円以上の金額で算出している」とか。
    (実際は140円とかそんな話をしていたように思うが、他にも色々ひどい話を聞いたので、数値を失念)



    たまに文脈の結論が出ていないまま次にいってしまっているような箇処もあるけれど、それを差し引いても、プラスが余りある。
    簡単に制御棒といっても、その制御棒は何をどうやって制御するのか。
    臨界って何か。
    きちんと説明出来る、「専門家ではない」一般人って、そんなにいないと思う。
    そういうことをわかりやすく、説明してある。
    何しろ、京大で研究用の原子炉を設計から初めて、製造、運用までする経緯を、中学生でもわかるんじゃないかっていう書き方で書いてあるのだから。(でも専門のところは、きっちり書いてある)

    p113
    「操作パネルがどれも同じような見た目で、緊急時に区別がしにくい。これを実際の配置とあわせてボタンを配置してくれないか」
    と教授が言ったら
    「前例がない」
    「美しくない」
    「こういうものだ」
    事故や取り違いが起きないように、わかりやすい設計にするって言ってるのに、どうしてメーカーはそれを通さないの?


    p98
    『マーフィーの法則』を教訓として引用している。
    「物事は一番悪い方向に行くことを考えよ」
    「起こってほしくないことほどよく起こる」
    「安全確保はゲームに例えて言えば、勝てない、引き分けもない、棄権もできない。つまりその仕事に就いた人は、絶えず努力をする必要があり、しかもそれでもなお永久に「絶対」という段階には到達できない。」



    本の中で、「壊れないものはない」と何度もくり返している。
    世の中では原発は、ものすごい丈夫な資材で作られているから、絶対に壊れないと思われているが、そんなことはないと。
    通常の4~5倍も金をかけて、それでも寿命が数十年延びる程度の資材を使うなら、通常程度のものでいいから、壊れたときなどの部品交換手順に慣れておく方が、安全であると。

    自分が使っているものは壊れない、まさか、なんて思っているということは、身近なパソコンに置き換えたって納得。
    冷蔵庫だって洗濯機だって、壊れたときに驚いたり、怒るもんね。どうして壊れるの。って。
    でも、人間が作ったものなんだから、壊れて不思議ないんだよね。


    日本は今、火力発電で乗り切ろうとしているけれど、火力のもとの原油も輸入しているのだから、国産でエネルギー資源... 続きを読む

  • 決して品のよい文面ではなく、正に「お節介」であるが、日本の原子力を作ってきたといってもよい著者の見識は、分野は違うが、設計者の端くれとして、共感するものがある。
    著者が心配していた風潮が、いま、ピークになっている。
    日本人は、過去の歴史とそれに付帯するエネルギー問題をしっかりと理解すべきである。

  • 原子炉の事故は「起こらない」のではない。「起こらない」と「起こる」の間の「起こさない」ための最大の努力をすることが重要であるというメッセージが込められている本。

    そのような努力として、設計思想、人材育成の両面が大切であるとともに、広報活動や地元への対応においても、原子炉を扱う側としての上記の姿勢を正面から伝えていく必要があるということが述べられている。

    設計思想の面では、筆者が長年にわたって関わった京大実験炉では、設計時に制御系に対する徹底的なfool proof、interlockを盛り込むこと、「原子炉仕様」としてほかより数倍以上高価なものを使ってそれで安心するのではなく、壊れたらすぐ分かりすぐ交換できることといった原則を徹底的に追及されていることが分かった。こうして1つ1つの細部にわたるまで設計思想を徹底して作られたものは、実際に稼動させる場合にも安全管理が一段高いレベルで行われるように感じた。

    一方、人材の育成に関して、日本では原子炉を実際に運転して訓練をする機会が極端に不足していることが指摘されている。研究炉の数も米国は日本の十倍以上あるという事実から、人材の育成について日本の原子力分野は「先端」であるのかといった点には、大きな課題があるように感じた。現状を率直に見つめて必要な対策を取っていくべきではないかと感じる。

    最後に、本書では原子炉建設やその後の運転期間中に、近隣の住民・自治体や外部からの見学者にたいしてどのように対応したかという点も、包み隠さず記述されている。法規制の強化だけでよしとする態度や責任の押し付け合いを繰り返すのでは安全文化が定着することは決してなく、実際に起こりうるトラブルを直視し、それに対して現場を預かるものが責任感を持って対処することで、「起こさない」ための最大限の努力をすることを伝えていくしかないという著者の決意が感じられた。

  • 京大の研究用原子炉を作り、運転し、メンテナンスした著者による、理屈ではなく実地経験に根ざした原子炉・原子力論。
    原子炉といえども、人間の手間と知恵でお守りをしていく必要がある「ふつうの機械」であることが伝わってくる。

  •  KUR設計,起こらないと起こるの間の起こさないが大切とのこと。
     即座に指導する体制ができていないのに,形だけの報告が要求されている指摘している。

    平和,民主、公開という原則の民主の難しさは,公開されている情報が理解できないといけないという点にある。

    誰かが,「お節介」でも説明しないと、腹には落ちてこない。

    ps.
    公開の原則は、平和利用に限ることからうまくいっていないのだろうか。核兵器開発に再利用できるような技術は、公開できないが、基礎技術は核兵器向け,平和利用向けというどちら向けということはないのだろうから。

  • 大学研究炉の話がほとんどだったが、設計・建設段階から実地の経験談がたっぷり盛り込まれていて、よく知らなかった原子炉が身近に感じられるようになって良かったし、原子力関係の改善点もいろいろ知ることができて良かった。

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新・原子炉お節介学入門の作品紹介

次代に何を残せるか。戦わないで得られる、将来の「国産エネルギー」のための体験的基礎講座。

新・原子炉お節介学入門はこんな本です

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