グルブ消息不明 (はじめて出逢う世界のおはなし スペイン編)

  • 東宣出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885880858

作品紹介・あらすじ

2015年「フランツ・カフカ賞」受賞!

ミスリーディングとミスマッチをくりだしながら、都市とその住人たちの魅力と矛盾をあぶりだす抱腹絶倒の知的遊戯。読んだらぜひバルセローナへ!(宇野和美 推薦文より)

特別な任務を帯びてバルセローナにやってきた二人組の宇宙人のひとり「グルブ」が、国民的ポップスターのマルタ・サンチェスの姿をまとったまま行方不明となった。そこでもう一方の宇宙人「私」は、相棒グルブを捜すためにオリバーレス公伯爵やゲイリー・クーパーなどに姿を変え街に出ることにした。やがて老夫婦の経営するバルに通うようになり、人間とふれあい、酒を楽しみ、恋もする……。オリンピック開催直前のバルセローナの活気と混沌をユーモラスに描いたSF風小説。

感想・レビュー・書評

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  • 初☆スペイン文学。
    楽しかったー。
    舞台はオリンピック前のスペインの都市、バルセローナ。
    ある特別な任務を帯びてここに降り立った〈私〉と相棒のグルブ。
    この地の生命体と接触するため、実在の国民的ポップスター、マルタ・サンチェスの姿になったグルブは行方不明になってしまう。
    そこで〈私〉はグルブを探すため、実在する色々な人物(ゲイリー・クーパーとか)の姿を纏い、街に出ることにした...。

    バルセローナなんて、行ったことも興味を持ったこともない街が、〈地球に初めて来た宇宙人〉の視点で描かれていて、私も宇宙人気分で楽しめた。
    オリンピック前のごちゃごちゃした雰囲気と街の人たちの日常が(みんなバルばかりにいるw)宇宙人という非現実的な存在感と合わさって、魅力的。

    あといなくなった相棒グルブを、愚鈍だとか私がいないと何もできないだとか言いつつ寂しがってる〈私〉がかわいい。

    でもたまに何度読んでも理解できない箇所あり。
    スパニッシュ・ユーモア?

    2015年のフランツ・カフカ賞受賞作。

    この作品は他のブクログユーザーさんのレビューで知りました。

  • スペインの新聞に連載されたというSFコメディ小説。
    舞台はオリンピック開催を控えた1990年代初頭のバルセロナ。
    ある任務を帯びた二人組の宇宙人がやって来て、
    上司が宇宙船に残り、部下の「グルブ」が地球人に化けて街に出る。
    語り手である上司の「私」が綴った報告書という体裁の、
    地球時間で二週間ほどの物語。
    「私」は「地球星内同化可能形状推薦目録(略称CATIFA)」を参照し、
    グルブにマルタ・サンチェス【*】の外見を取らせたところ、
    グルブは宇宙船を出た六分後にナンパされ、相手の車に乗り込んだきり、
    消息を絶った……。

    【*】http://booklog.jp/item/1/B00002MHRJ

    そして、グルブからの連絡を待って煩悶する「私」。
    perfect stranger(!)故、
    地球人の目には奇矯に映る言動の数々が積み上げられていくのだが、
    初めて訪れた異郷の地で同伴者が行方不明になり、
    一人取り残されたら、我々だって意気消沈したり、
    ドタバタと意味不明な行動を取ったりしないだろうか?
    「私」や「グルブ」たちが
    年齢・性別を問わず、あらゆる地球人に擬態可能だとすれば、
    この長くない小説は「わたし」や「あなた」の事件として
    受け止めることもできそうだ。
    これは、見知らぬ街、しかも、
    オリンピック前で浮き足立ってザワザワする場所に放り出された部外者の、
    寄る辺のなさ(と、そこから派生する頓珍漢なエピソード)を描いた
    哀愁の物語なのだ(多分)。

    終盤は、
    仮面を被り、その外的人格に成り切って行動したために、
    本来の自分に対するよりも自己評価が高くなって――
    平たく言えば「いい気になって」しまう人の様子を皮肉っている風にも
    受け取れた。
    我々の社会でも、よくありますよね、
    ネット上で少し持ち上げられて調子に乗るとか何とか(ゴニョゴニョ)。

    グルブは「私」に謝罪すべきだと思うけど、そもそも、
    むちむちバデーのおねいさん(笑)を形状モデルに選択した「私」の
    上司としての判断ミスだった気がしないでもない。

  •  ときは1990年、ところはスペイン・バルセローナ。特殊任務を帯びた宇宙人2名を乗せたUFOが地上に降り立った。自由自在に姿を変えられる能力を発揮し、よせばいいのにマルタ・サンチェスという人気歌手(日本なら安室奈美恵相当?)の姿をまとって調査に出た2名のうちのひとり・グルブは、最初の通信を寄こしたあと、速攻ナンパされて消息不明になってしまう。残された〈私〉は相棒を探すため、間近にオリンピックを控えててんやわんやのバルセローナを、行き当たりばったりに探索することになる。
     よせばいいのにオリバーレス公伯爵(17世紀スペインの代表的な貴族、日本なら織田信長相当?)の姿を選び、バルセローナの中心地に乗り込んだ〈私〉。

    ○八・○○ ディアグナル通りとグラシア大通りの交差点に姿を現す。路線バス17番バルセロネータ-バイデブロン線に轢かれた。頭部を取り戻さなければならなくなる。衝突によって抜け落ち、転げていったのだ。
    ○八・○一 オペル・コルサに轢かれる。
    ○八・○二 荷物運搬のワゴン車に轢かれる。
    ○八・○三 タクシーに轢かれる。
    ○八・○四 頭部を取り戻し、衝突した場所のすぐ近くにあった噴水でそれを洗う。

     いきなりこれでは、先が思いやられる。全編こーいう報告書文体、ボケの一人語りなので、存分に突っ込みを入れつつ読むのが吉。

    一五・○○ 街中を系統立てて歩いて回ることにする。一箇所にとどまっているのはやめた。それによって私がグルブに会わない蓋然性は百京対一にまで減じる。それでもなお、結果は不確かなままだが。日光反射式の地図を便りに歩く。私はこれを、宇宙船から出る際に体内の回路に埋め込んでおいたのだ。カタルーニャガス会社が開けた溝に落ちる。
    一五・○二 カタルーニャ水力発電会社が開けた溝に落ちる。
    一五・○三 バルセローナ水道局の開けた溝に落ちる。
    一五・○四 国営電話会社の開けた溝に落ちる。
    一五・○五 コルセガ通り自治会の開けた溝に落ちる。
    一五・○六 理念場の地図を頼るのはやめにして、踏みつけている地面を見ながら歩くことにした。

     ほれ言わんこっちゃない。
     
     グルブがいなくなった「九日」から「二十四日」まで、一日一章ずつで十六章。毎日姿を変えながら、絶対なにかをやらかすこの宇宙人は、はたして首尾よく相棒を見つけられるのか? 何ひとつ地球のことを知らない〈私〉の目を通して、抱腹絶倒のバルセローナ案内が展開される。

     もとは新聞連載という本書、一章10ページくらいの気軽な読み物として、一日一章ずつゲラゲラ笑って読めばいい。でも、宇宙人ゆえの勘違いによるドタバタ喜劇、だけにはおさまらない。日常の光景に意外な角度から光が当てられ、はっとさせられる。バルセローナっ子への皮肉や、聖書へのあてこすり、貧富の格差や差別に対する鋭い視線が「笑い」の中にたくみに織り込まれている。

     たとえば地球到着から十日目、相棒を探して街を散歩する〈私〉は、とある広場で、多数の老人たちがひなたぼっこをしているのを目撃する。

     一一・○○ (前略)去年の夏に置き去りにされたままの老人たちがまだ座っているベンチがいくつかある。かなりミイラ化が進んでいる。二週間前に置き去りにされた老人たちの環境への適応状態は、まだ熟すにはいたっていない。私はそうした人たちのひとりの隣に座り、マドリードの新聞の文芸別冊を読む。誰かが老人たち同様にここにうち捨てていったものだ。

     とか、

     全人種の中でも黒人とよばれるそれ(黒いからそう呼ばれる)が最も才能豊かなようだ。白人よりも背が高く、力強く、身軽だ。しかも馬鹿さ加減にかけて白人と遜色ない。それなのに白人は黒人のことを高く評価していない。たぶん集団的無意識の中に、遠い時代の記憶が今も残っているのだ。昔は黒人が支配する人種で、白人は支配されていたというから。

     とか。たとえ宇宙人視点でもギリギリ、とは思うものの思わず笑ってしまう。

     市内を彷徨するうち、チューロ(揚げ菓子、チュロス)が大好きになり、なじみのバルをつくり、気になる女性ができて、次第にバルセローナの虜になっていく〈私〉。観光都市として有名だが、本書で描かれるのは、もっと生々しい姿だ。
     バルセローナに詳しくなければおもしろさ半減? いやいや、先を急ぐ本ではない。口絵の地図を見ながら、なんならわからない地名や人名はググってみながら、ゆっくり読めばいい。これが楽しめたら、同じ著者の『奇跡の都市』(やはりバルセローナを舞台にした、本格ノワール)もおすすめ。

  • 奇才が宇宙人モノをものすと、
    世界を粉々に素因数分解し尽くした上に、
    もれなく笑いがついてくるのだ。

    ブコウスキーの『パルプ』は、
    世界文学史に残る「おもしろくだらない」名作でしたが、
    それを彷彿とさせるくだらなさ。

    作者の肩の力を抜いた書き味が素晴らしい。

  • 《本書の説明》
    ◆2015年フランツ・カフカ賞受賞
    ◆舞台…1990年スペインのバルセローナ
    ◆登場人物…グルブと間抜けな「私」、その他の皆さん
    ◆内容…グルブからの連絡なし。グルブからの連絡なし。グルブからの連絡なし。グルブ消息不明!!
    《読む際の注意点》
    ◆笑いが止まらないため電車の中で読むのはおすすめしない(不審者扱いされる)
    ◆歩き読みすると工事中の溝に落下するおそれあり
    ◆いちいちツッコミを入れながら読むと、読み終えるのに倍時間がかかる
    《感想》
    傑作!めちゃめちゃおもしろかった。骨まで愛してます。チューロをお腹いっぱい食べたい!

  • 二人組の純知性体が宇宙船でバルセロナに降り立つ。人類の中に入っても目立たないようにと配慮してセクシー美女に扮したグルブは、さっそく現地の「個体」(身長170㎝、目は二個、大学教授)から彼の「交通手段」(車)に乗らないかと「提案」(ナンパ)され同意する。以後グルプからの知らせはない。上司である<私>は17世紀の大貴族の姿になると、グルブを探して街へ出る事にする…。頭がもげたり、警察の世話になったり、溝に落ちたり、溝に落ちたり、溝に落ちたり。万能の科学技術がありながらやる事全てまぬけだし、コピペの文章もとぼけているしで、外で読むと笑いをこらえるのが大変(1990)

  • グルブどこ行ったー!
    という感じで意味が分からない。けれど、面白かった。

  • 返却期限にひっかかり、何回か借りた。しかし、間をあけて読んでも主人公の宇宙人のお馬鹿さが相変わらずで、どこから読んでも面白い。

  • 混沌・混乱・勘違い・誤解

  • ミッションのため地球にやってきた宇宙人2人。でも、1人が早々に行方不明になってしまい、探す羽目に。
    初っ端からぶっ飛んだ展開に思わず笑ってしまった。人の生活を送ってみるものの、ズレ具合が半端なく、最初から最後までそのズレは治らない(笑)でも、人間っぽさも所々垣間見られる。ツッコミどころ満載の一冊。

  • うわぁ、何コレ、超面白い。
    ミッションを抱えた宇宙人が、たまたまバルセロナに着陸。二人いた調査員のうち一人が行方不明になり、残された「私」が相棒を探す話。
    人間に化ける宇宙人だが、なにぶん不慣れなもので、やることなすこと無茶苦茶…。いったい、どんなミッションを携えてきたの最後までわからず(笑)
    ナンセンス具合とか、笑いのツボを心得ているところなど見事で、あっという間に読めてしまう。
    オリンピック景気に湧く街の様子(また酔っぱらいの描写)がリアルに伝わる。

  • グルブと再会したあたりの
    展開を見失ってしまった。
    小学生の悪ノリみたいなバカバカしい感じ。
    めんどくさくて混沌としててバカバカしい感じ。
    時代背景を考えると
    ただバカバカしいだけじゃなくなっておもしろい。

  • めちゃめちゃおもしろい。
    こーゆうのこそ、エディトリアルデザインがんばりたいよなー

  • 舞台が日本の90年代後半とかで読んでみたい。無教養すぎて、イジってる元ネタがわからなすぎるから。まあ、そこ差し引いても雰囲気は好き。でも、そこ引いたらダメでしょ?

  • バルセローナ近郊に宇宙船が着陸。女性の外見をまとって調査に出たグルブが行方不明になる。オリバーレス公伯爵の外見をまとって探しに出掛け、交差点で轢かれる。

    バルセローナが舞台だからこそ成り立つ話かも。ニッポンだったらどうなるかな。

  • へんなおはなし。でもおもしろい!愉快な気持ちになります。どんな話か知らずに読み始めて、初めはよくわからなかったけど、徐々にわかってきました。
    ヘンテコなことが書いてあるけどそれをそのまま受け止めて、物語のヘンさに身を委ねれば、読んでいる時間が楽しい時間になります。

  • ある任務のため地球に来た異星人が繰り広げるドタバタSFです。相棒グルブの消息が不明となり探しに行きますがあらゆる事に困惑する主人公の描写が何とも面白い。

  • バルセロナオリンピックの頃に、バルセロナで暮らしていた人には面白いのかもしれない。著者が、巻頭の「覚え書き」で、この本が何カ国語にも翻訳されているのを驚いているが、それももっともなことである。

  • 面白そうと思って手に取り。はじめて出逢う世界のおはなし。スペイン編。

  • SF

  • スペインは摂氏を使うのか。オリンピックが市民生活に迷惑なのは、バルセロナの時から既に。『バートルビーと仲間たち』の時も思ったけど、現代スペイン(過去もだけど)の社会や文化の知識がないのが残念。任務やグルブ探しを忘れて、地球生活に入れ込んで行く語り手の語りにクスッだけど。

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著者プロフィール

1943年、バルセローナ生まれ。1975年に処女作『サボルタ事件の真相』を出版。1986年に発表した『奇蹟の都市』で数々の文学賞を受賞し、スペインのベストセラー作家の地位を確立。2016年、スペイン語圏文学の最高賞であるセルバンテス賞を受賞。カタルーニャ語とスペイン語のバイリンガルだが、作品はすべてスペイン語で発表している。
邦訳作品:『奇蹟の都市』(鼓直ほか訳、国書刊行会、1996年)、『グルブ消息不明』(柳原孝敦訳、東宣出版、2015年)。

「2018年 『カタルーニャでいま起きていること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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