グルジア現代史 (ユーラシア・ブックレット)

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著者 : 前田弘毅
  • 東洋書店 (2009年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885958298

グルジア現代史 (ユーラシア・ブックレット)の感想・レビュー・書評

  • 北京オリンピックの開会数日前に始まった南オセチア紛争。
    本書はその題名からも分かる様にこの戦争の当事者であるグルジアをテーマにした書籍で、主にソ連崩壊後からの同国、同地域の歴史について簡潔ながらも要所を押さえた解説がなされています。

    本書で紹介されている同国の歴史は紀元前4世紀の統一国家の誕生に始まり、タマル女王治世時代の同国の絶頂期。
    そしてその後の国力低下、ロシア帝国・ソ連の裏切りによる吸収、ソ連崩壊後の独立の回復など。

    続けて、上記のソ連崩壊後の経緯が解説されているのですが、同時に現在における対立の遠因ともなった1956年のフルシチョフによるスターリン批判へのグルジア人の強烈な反発(スターリンはグルジア出身)や1978年に起きたグルジア語の公用語としての地位剥奪法案への激しい抗議デモと、それらグルジア人の激しい反発に過熱する民族主義の危険を感じたアブハジアの危機感についても解説されていました。

    またこれら以外にも、シュワルナゼと彼の実利外交の失敗やその後のバラ革命により実権を握ったサアカシュヴィリと南オセチア紛争での敗北を決定打とする彼の権威失墜。
    シュワルナゼ登板以前に起きたグルジア内戦の隙をついた南オセチア、アブハジア、アチェラ(後にグルジアに統合)の離脱の動きがグルジア人の心理へ与えた強烈な打撃と同国政治経済への深刻な影響などが解説されています。

    ソ連という重石が無くなったことによって吹き出た強い民族主義に翻弄されるグルジアを含めたコーカサス各国。
    著者によれば、将来グルジアが君主制国家になる可能性すらも排除出来ないとの事で、本書を通して同国を取り巻く厳しい環境とその不透明な先行きについての基礎的な理解を得ることが出来る内容となっています。

    尚、本書はユーラシアブックレットの1冊として出版されており、ブックレット(小冊子)の名の通り全63ページの薄い本の中に上記の内容が簡潔にまとめられています。
    よってのんびりと読んでも数時間もあれば読了できる為、(薄さに見合わぬ内容の充実さや確かさも合わせて考慮すると)忙しい中での読書にもちょうど良い一冊となっています。

    余り日本では知られていないグルジアについての理解を深めたい方などにおすすめです。

  • 難しかったけど、勉強になりました。

  • グルジアは1991年にソ連から独立。独立以降は新石油パイプラインの稼働などユーラシアの交通とエネルギー輸送で生き残ってきた。だから貿易相手国もトルコの比重が大きくなった。
    シュワルナゼはゴルバチョフの時代に外務大臣として活躍していた。1992年に国家代表に就任した。彼はロシアとの協調に舵を切り、1993年にCIS入りを表明し反対派をつぶした。
    地方の寒村出身で学歴も家柄もないシュワルナゼは共産主義者として腕一本でのし上がってきた。バランス感覚を持った現実主義者だった。エリツィンとも太いパイプがあった。
    新政権のサアカシュヴィリでは、アメリカへの傾斜を明確にし、イラクへも大量に派兵した。
    2008年には南オセチア紛争でロシアが北京オリンピック開催時に侵攻してきた。フランスのサルコジの仲介でとりあえず解決はした。

  • グルジアという国は日本人にとって馴染みの薄い国ではあるとおもう。それは当然であり、正直に云えば小国である。
    しかしながら歴史的に宗教や民族、大国間の利害の中で翻弄されてきた歴史を持つ。1991年にソ連からの独立を回復し、20年間の激動の歴史を刻んできた。
    シュワルナゼを倒して大統領に就任したサアカシュヴィリは、過激なまでの民族主義を全面に押し出している。ロシアにも一歩も譲らない。波乱万丈の歴史を辿ってきたグルジアにとって民族たることは重要なことなのである。
    しかし民主主義国家として未熟なグルジアは、健全に政党政治が機能していない。野党も統率が取れていないし、与党の政権運営もままならない。これは日本にも少し通ずるものがあると思う。
    サアカシュヴィリ政権も、価値観外交の一環で日本との結びつきが密になりつつある。政権交代でこの先どうなるか不明ではあるが、中央アジアとの関係も決して小さいものではない。

  •  グルジア現代史について簡単にまとめたブックレット。明石書店の『コーカサスを知る60章』に続く、書籍としては数少ないグルジアについて知る事が出来る本。この本の内容や参考文献については、一部の研究者から「少し偏りがないわけでもない」、あるいは「グルジア語の資料を読んでいない」と指摘されているが、前者についてはグルジア現代史を取り上げる上で、グルジア側の世論動向や考えを尊重した書き方をある程度するのは、グルジア側の見方を提示する、あるいはグルジア研究者の見方を提示するという意味である程度仕方がないし、それなりに意味がある事だと思う。特にグルジアとロシアの戦争が生じた昨今の状況では、少なくともロシアについては歴史や概要を知っている人が多いだろうが、グルジアについては必ずしもそうではないので、本書の意義はその意味でもあるだろう。次にグルジア語の資料云々については、現地資料第一主義もどうかと思うというのが第1点。西側を中心とする学術レヴェルに全ての面でグルジアやコーカサス諸国が同等だとは思わないし、例えば文化人類学や社会学、歴史学等のソ連が強い学問ではグルジアの学術レヴェルは欧米と同様、あるいはグルジアを対象とするものではその比ではない発展レヴェルであろうが、国際政治や安全保障という議論では独立後、主権国家となってわずか20年程度のグルジアがこれに対して十分な学術的基盤と蓄積があるとも言えない。その意味で、何でも現地資料と主張し、この本を批判する人たちには若干疑問符がつく。ただ、勿論、彼らの主張をそのまま受け入れるか受け入れないかは別にしても、一つ目で取り上げたように、グルジアの見方を提示するという視点からすれば現地資料をきちんと読み、これらを取り上げ、その上で何らかの学問的基盤の上で精査する作業は当然必要なものであって、その意味でこの著者はグルジア語の出来る数少ない研究者であるので、そういった作業を全く行っていないとは思えない。文献としてそれを提示するかしないかは、本書のように枚数制限があり、一般向けの本では編集者の判断によると思う。

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グルジア現代史 (ユーラシア・ブックレット)はこんな本です

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