南方熊楠と「事の学」

著者 :
  • 鳥影社・ロゴス企画部
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784886299314

作品紹介・あらすじ

南方熊楠の思想に迫る。真言僧・土宜法龍宛ての書簡に秘められた熊楠の思想の今日的可能性を展望する。無限に広がる熊楠の宇宙と、その核心を照らす意欲的な試み。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、筆者が京都大学大学院人間・環境学研究科に提出した博士号論文に加筆したもので、南方熊楠が、真言僧・土宜法龍宛てに送った書簡を中心に「事の学」について筆者が考察したものになっています。

    南方熊楠について興味があって買った一冊目です。

    ★★★

    「事の学」とは、「物事心」の関係から世界を理解しようという南方熊楠の研究アプローチのことです。南方熊楠は、物、事、心を次のように考えているようです。

     物: 物質そのもの
     事: 精神が物質を捉えようとする過程で生まれてくる現象
     心: 自分自身の精神

    そして、表紙の絵(べん図)にあるように物と心の重なったところに事が生じるというのです。

    つまり、自然科学は専ら、物を単独で取り扱い、そこに各人の心が入ることを否定してきた(河合隼雄の言葉でいえば「自然科学は『私』と他を切り離すことによって成立した学である」)のですが、それだけでは世界は理解できないだろうというのが南方熊楠の主張になります。

    私は、『ソフトウェアテスト技法ドリル』で、テスト対象は構造と振る舞い(モノとコト)でできていると書きましたが、振る舞いというのは、心がソフトウェアそのものに重なった時に生まれるわけですから「物事心」の考え方に非常に納得がいきました。

    ★★★

    その他にも、「因果」と「縁起」の関係についての記述も面白かったです。

    「因果」のことを南方熊楠は「筋道」と呼び、実際にマインドマップのように線で結ぶのですが、因-果が生起している最中に、別の因果系列が割り込んでくる場合、それを「縁」と呼びその2つの因果関係が影響しあう時は「起」となると書いています。

    逆に言うと「縁」を「起」に変えていくことが大切なんですね。それが発想の広がりから新しいものを生み出すことなんだと思います。

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著者プロフィール

橋爪博幸:桐生大学短期大学部講師。1970年群馬県生まれ。人間・環境学博士(京都
大学)。専門は環境思想。論文に「森林生態系の保全を訴える南方熊楠の思想」 (『桐生大学紀要』2015年)など。NPO法人「浅間・吾妻エコツーリズム協会」、 同じく「足尾に緑を育てる会」に所属。自然体験活動指導者(NEALリーダー)。

「2017年 『BIOCITY ビオシティ70号 南方熊楠と熊野の自然』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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