増補改訂版 家族で語る食卓の放射能汚染

著者 :
  • 同時代社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784886836960

作品紹介・あらすじ

食品汚染が心配。どう対処したらいいの? お母さんたちの疑問に答え、放射性物質、放射線、放射能、などの必要知識を解説! チェルノブイリ事故の防護対策を活かし、福島第一原発事故の現状を増補・解説!

感想・レビュー・書評

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  • 左翼がかった記述で、気に障る箇所が随所に見られ、読み進む気がしなくなった。
    途中下車!

  • 放射能と外部被曝、内部被曝について素人が勉強するのに、とても良い本だと思います。
    著者は学生の頃から放射線防護を研究してきた方で、本書は福島の事故よりずっと前のチェルノブイリ事故の時に書かれた本を、放射線の単位を改め福島の数値を少しだけ追加して増補改訂した本なので、福島以降に書かれた本より、疑念を持たずに読めると思います。
    「放射線は浴びないに越したことはない」というスタンスに立ちながら、内部被曝をどの程度気にすれば良いのかという疑問にも明確に答えてくれています。
    自然放射性物質も人工放射性物質も放射線という意味では違いはなく、被曝量で比較すれば良いとしながら、自然放射性物質はこれまでの生命の歩みのなかで、蓄積しないように適応しているが、人工放射性物質は慣れていないので、蓄積されやすいなど、安全か危険かではなく、どの位、リスクがあり、どう対応すれば良いのかを教えてくれる本です。

  •  放射能汚染について、放射能が出る仕組みやわかりやすい計算式が書かれている。ヨーロッパの研究を紹介し、ストロンチウム90がもみ殻を除去することで50%減少し、薄皮と胚芽を除いて白米にすると60%減少するという。また日本の研究では、白米をとぐとストロンチウムが50%減少することを示しているが、これは、玄米食信奉者と正反対の意見である。
     また、放射能障害で確定的影響と確率的影響を分けて説明し、確率的影響を癌当たりくじにたとえているがこれもわかりやすい。但し、この当たりくじにあたったらたまらないが。

  • タイトルほど食品の問題にウエイトを置いた内容ではないが、放射線のメカニズム、生物に与える影響、食品からの内部被曝とその影響の考えかた、被曝量の計算のしかたなどを根気良く解説。正しい知識を身につけて欲しいという著者の姿勢を感じる。

  • 初版は1988年。1986年のチェルノブイリ原発事故後に「放射能の
    影響を軽視したり、過度に恐れたりすることは避けなければならな
    い」という思いから書かれたものです。福島第一原発の事故を受け
    て、昨年四月に増補改訂版が緊急出版されています。

    事故後、放射能関係の本は随分と読みましたが、放射能や放射線に
    関する基本的な知識から、食品の汚染対策まで、非常にわかりやす
    く、かつ、冷静なスタンスで解説している点で本書は出色でした。

    本書を読んで初めて知ったこと、腑に落ちたことは多いです。特に、
    普段の生活で私達がこれほどまでに放射性物質に晒されていること
    は全然知りませんでした。必須栄養素であるカリウムに含まれるカ
    リウム40という天然の放射性物質の存在。建材などに含まれる放射
    性物質の存在。これら天然の放射性物質の存在によって、日本人は、
    毎年、1.4ミリシーベルトの被曝を余儀なくされているそうです。

    食品汚染については、例えば、チェルノブイリの事故で汚染された
    イタリア製パスタを食べると、被曝量は一体どれくらいになるかを
    計算するなど、非常に具体的です。ちなみに、この計算によると、
    汚染されたパスタを毎日食べ続けるよりも、一回飛行機で海外に行
    くほうがよっぽど被曝量が大きいのだそうです。

    だからと言って、何も気にしなくていいというわけではありません。
    放射線は浴びないにこしたことはないのです。何故なら、著者によ
    れば、放射線はいつ当るかわからない「癌あたりくじ」のようなも
    のだからです。一度、放射線を浴びると、その線量に関わらず、あ
    たりくじを引いたことになってしまう。しかも、それは、二度と捨
    てることのできない、タチの悪い当たりくじなのです。

    自分の子ども達やこれから子どもを生むことになる若い世代が、こ
    の当たりくじをできるだけ引かないようにするには、何をすればい
    いのか。私達はそれを真剣に考えなければいけません。

    著者は、冒頭で、「科学者は、自分の研究生活を、現代を生きる一
    人の人間としての生きざまとの関連においてもっと実践的にとらえ
    る必要があると思う」と述べています。そして、あとがきでは、本
    書を書いたことによって、「安斎育郎の生きざまが問われているに
    相違ないと、内心ドキドキしている」と告白しています。

    生きざまが問われるのは何も科学者だけではありません。放射能と
    いう見えない不安とどう向き合っていくかは、私達一人ひとりの生
    きざまを問う問題なのです。大切なのは、科学的、実践的な態度で
    処することですが、それがいかなるものかを本書は教えてくれます。

    放射能社会を生きる上で必読の一冊です。是非、読んでみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    国が「国策」として原発を推進しようとしているのに、国立大学の
    教官がこれを批判するのですから、弾圧の雨が降りかかってくるこ
    とは覚悟しなければなりません。結局、東大助手を十七年つとめる
    結果となりました。

    医療上の診断目的に投与される放射能は、一人一回の検査で一億ベ
    クレルをこえることも珍しくありません。薬づけ、検査づけ医療な
    どと言われる日本の保険医療制度の実態のもとで、放射線被爆をで
    きるだけ減らすにはどうすればいいのか、この問題はたいへん重要
    です。

    1970年代後半までは、入れ歯やさし歯などに使う陶製の人工歯に
    も、天然の放射性元素であるウランが添加されていました。

    放射線は目にも見えず、においもしないので、無関心でいると無限
    に無関心でいられますし、反対にこわがるとやたらに無気味で無限
    にこわいような気分になります。

    一ベクレルというのは、放射性原子が一秒間に一個の割合で別の種
    類の原子に変わりつつある場合の放射能の強さです。「一秒一発一
    ベクレル」ですから、たいへん覚えやすいでしょう。

    (シーベルトは)私たちが放射線を浴びたときどれくらいの被害を
    受けるかを表す単位で、この単位で表せば、アルファ線だろうがベ
    ータ線だろうがガンマ線だろうが、たとえば「一シーベルと浴びた」
    と言えば放射線の種類にかかわりなく同程度の被害を受けると考え
    ていいのです。

    自然界にあるカリウム原子のうちおよそ0.0118%(だいたい一万分
    の一)は放射性のカリウム40原子なのです。(…)
    私たちが食事からカリウムを摂取すると、必ずカリウム40もついて
    きます。

    私たちの体内では、今この瞬間にも、毎秒4000個程度のカリウム
    40原子が放射線を出して別の原子に変わりつつあるのです。(…)
    これによっておよそ0.2ミリシーベルトの被爆を余儀なくされます。

    これらの自然放射線によって、人間は一年間にほぼ二ミリシーベル
    トの実効線量当量を受けていることになります。世界平均で年間二
    ・四ミリシーベルト程度と言われていますが、日本では、地質に含
    まれている天然の放射性物質の種類や濃度が違うため、平均一・四
    ミリシーベルト程度です。

    進化の過程は、自然放射線とのたたかいの道程でもありました。

    人間が放射線を浴びると、(1)確定的影響と、(2)確率的影響
    がおこるということです。

    確定的影響というのは、あるレベルの限界線量(しきい値)をこえ
    るとおこるが、それ以下の被爆では障害がおこらないようなタイプ
    の影響です。(…)たとえば、放射線による脱毛は典型的な確定的
    影響です。

    確率的影響は、限界線量がないと考えられるようなタイプの影響で、
    癌や遺伝的影響がその典型であると考えられています。これ以外で
    はおこらないという線が引けないような障害で、低い線量領域でも
    小さい確率なりに障害がおこり得ると考えられるタイプのものです。
    私は、ちょっと不謹慎かもしれませんが、この型の障害を「癌あた
    りくじ型影響」とたとえています。

    じつは放射線の癌あたりくじの場合は、当選発表日が決っていない
    のです。いわば、「生涯有効」のくじです。放射線を浴びて癌あた
    りくじを買わされると、それを捨てるわけにもいかず、一生持って
    いなければなりません。

    厚生省のような行政当局は、輸入業者による輸入許可申請に対して
    その可否を判定しなければならない立場にあるため、何らかの理由
    をつけて基準を決めざるを得ません。
    しかし、私たちひとりひとりにとっては、あえて基準を決める必要
    はありません。どこに線を引いても、放射線被曝はゼロにこしたこ
    とはないという基本認識に照らせば必ず異論が出てくるでしょう。
    私たちのこの問題に対する基本的な考え方は、それぞれの時点で汚
    染のより少ないものを選ぶという原理に尽きると思います。そして、
    そのことが、汚染地の生産者たちを苦しめかねないという問題があ
    るので、その意味でも、原発事故による環境放射能汚染は罪深いと
    言わなければならないでしょう。

    実際に私たちが放射線を浴びるのは、基準以下で輸入が認められた
    ものなのです。したがって、本当は、輸入が許可された食品の汚染
    状況をこそ私たちは知る必要があるのです。入学試験で不合格の受
    験生の点数を発表されているような感じです。

    食品汚染にどう対処するか?
    (1)食品汚染の実態を知ること。
    (2)たとえ、放射能汚染が国の輸入基準以下のものであっても、
    それなりに放射能が含まれている食品は、あえてその消費を奨励し
    ないこと。
    (3)汚染の実態はできるだけ公表し、最終的には消費者の選択の
    自由を保証すること。
    (4)汚染食品、体内摂取にともなうリスクを評価する際には、い
    たずらに「放射能に対する恐怖感」といった感情に溺れず、科学的
    な評価結果をふまえること。
    (5)食品の放射能汚染に対する関心を持続し、供給者との間に好
    ましい緊張関係を保つこと。

    よく、公表すると混乱するからという理由で公表をしぶる向きもあ
    りますが、それは、どちらかというと市民を愚民視する姿勢ともい
    うべきもので、あまりいただけません。人工放射能である放射性セ
    シウムがどれくらい、自然放射能であるカリウム40がどれくらいと
    いったことをおおらかに公表すれば、人びとはそれを理解し、対処
    の仕方を学んでいきます。

    放射能にえもいわれぬ恐怖感、不快感を抱く人が、その汚染レベル
    の高い低いにかかわらず拒否するという消費行動をとることも自由
    でしょう。同時に、「自然放射線の何十分の一も低い放射能を恐れ
    るのは理性的ではない」と批判する自由も保障されるべきでしょう。
    このような緊張関係こそが、社会が一つの立場に押し流されて崖っ
    ぷちに突き進んでいく危険を回避する大切な力だと思います。

    この国の科学の担い手たちが社会的な試練を受けることは、科学を
    市民たちの手に取り戻すためにも、とても大切なことだと思います。

    折にふれて生活のさまざまな問題を話し合い、少々不得意な領域で
    もみんなでワイワイとアタックすること――これは重要です。主婦
    が放射能のことまで学ばなければならない世の中はやっかいな世の
    中ですが、いまはそういう時代なのだと覚悟を決めて生きる必要が
    あるように思います。

    政府や事故当事者は、ひきつづき、国民に対して「隠すな、ウソつ
    くな、意図的に過小評価するな」の三原則を厳しく守り、市民の皆
    さんにも、この国の電力生産やエネルギー利用のあり方について考
    え、行動し続けてもらいたいと願っています。

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    ●[2]編集後記

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    新年ももう10日が過ぎ、お正月気分も随分と遠いことのように思え
    ます。こうやってあっと言う前に月日はたっていくことを思うと、
    いよいよ人生無駄に過ごしている暇はないな、とちょっと焦ります。

    東北の地震から明日で10ヶ月。
    昨年の今頃は何を考えていたのか思い出そうとしても、記憶が曖昧
    です。毎年そんなものかもしれませんが、やはり3.11の前と後では
    自分の内面も大きく変わってしまったような気がします。

    試みに一年前のこのメールを読み返してみると、一年前の今頃は、
    ちょうど息子の原形が妻のお腹の中に宿った時期でした。昨夜は満
    月でしたが、息子が宿ったのも昨年の一月の満月の夜。そうかあれ
    からちょうど一年なんだなと、感慨もひとしおでした。

    新しい命が宿って、地震が来て、身重の妻と幼児を抱えて放射能の
    恐怖に怯える日々が続いて、10月の満月の日に息子が生まれて…。

    満月の日に宿り、満月の日に生まれてきた息子は、今では満月のよ
    うな丸々とした顔に満面の笑みを浮かべてくれるまでになりました。
    その満ち足りた笑顔を見ていると、何も恐れることはない、という
    不思議に安らかな気持ちになります。

  • 震災による福島原発事故を機に 手に取った本です。 入門書としてざっと放射線のリスクについて考えるのに適している。 具体的な対策をするところまではいかない。

  • きくまこさんがおすすめしていたので、興味が出てきて購入。
    平易な表現で書かれており、煽っている文章も少ないのでいい本だと感じました。図が古臭いのは昔の本を震災後すぐに改定したためでしょう。
    ささっと読みたい人は、1章の安斎先生の経歴、4章の食品への対応を読めばよいと思います。時間があれば3章の人体影響も。2章の放射能の説明は飛ばしても問題ないと思います。

  • 小学生の子どもがいるので食の安全はとても気になります。放射能汚染が広がりを見せているので尚更です。

    図書館でも予約待ちになっていました。ベクレルからシーベルトへの勘算方法もついているので参考になります。

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著者プロフィール

1940年生まれ。東京大学理科1類に入学。1962年、工学部原子力工学科第1期生、続いて、大学院修士・博士課程を修了して1969年工学博士。同年、東京大学医学部放射線健康管理学教室(文部教官助手)となり、1986年、立命館大学経済学部教授、88年、国際関係学部教授。1992年、立命館大学国際平和ミュージアムの設立とともに館長代理(館長は、故・加藤周一氏)、1995年より館長、2008年より名誉館長。2006年4月より、立命館大学特命教授・名誉教授。2011年3月に退職し、4月、Anzai Science & Peace Office(略称:ASAP)を創設、科学教育および平和創造に関する多様な活動に取り組む新たな体制をスタート。専門は、放射線防護学、平和学。
著書に、『放射線技師のための数学』『放射線技師のための物理学』(放射線取扱技術研修会)、『日本の原子力発電』(新日本出版社)、『原発と環境』(ダイヤモンド社)、『からだのなかの放射能』(合同出版)、『地球非核宣言』(水曜社)、『中性子爆弾と核放射線』(連合出版)、『クイズ反核・平和』『科学と非科学の間』『放射能そこが知りたい』『原発そこが知りたい』(かもがわ出版)、『「がん当たりくじ」の話─国境なき放射能汚染』(有斐閣)、『語り伝えるヒロシマ・ナガサキ』全5巻(新日本出版社、第7回学校図書館出版賞)、『語り伝える沖縄』全5巻(同、第9回学校図書館出版賞)、『語り伝える空襲』全5巻(同、第11回学校図書館出版賞)、『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞社)、『霊はあるか』(講談社)、『だます心 だまされる心』(岩波書店)、『だましの心理学』(PHP研究所)、『放射線と放射能』(ナツメ社)、『日本から発信する平和学』(法律文化社、池尾靖志氏と共編著)など多数。

「2011年 『家族で語る食卓の放射能汚染』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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