醜の歴史

  • 東洋書林
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887217690

感想・レビュー・書評

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  • 世間一般に「醜い」と思われているものに惹かれてしまうのはなぜだろう。そもそも、それを「醜い」と判断するのは誰なのだろう。不特定多数の意見が常に正しいわけではない。美醜の境界はとてもとても曖昧で、本書に書かれている通り、まさに「相対的」なものだ。個人によっても時代によっても変わる。醜いものが常に醜いわけではないのと同様に、美しいものが常に美しいわけではない。そういう観点からすると、美術とはなんと個人的な世界であることか。眩暈がする。

  • 表紙とタイトルからまるで教科書のような堅苦しい印象を受けますが、第五章まで読み進めてみるとその初感もだいぶ変わってくると思います。
    美しく精密に表現された多様な醜いものたち(悪魔であったり、老女であったり、奇形だったり)の妖しげな魅力もさることながら、
    この本のページの大部分を占める「臭い老女」「不快な悪臭」、「醜い乳房」だのの古今様々な物語や歌集からの"醜"にまつわる抜粋文章が非常に刺激的で、興味深いです。
    中でも、長年様々なケツの拭き方を研究し、ついに最高の尻の拭き方を発見したと宣言するところから始まる「尻ふきの発明」は必見です。
    野グソ中に草むらで見つけた猫でケツを拭いてみたり、帽子や襟巻きで拭いてみたりと色々試行錯誤を繰り返していきますが、
    何でもその結論によると、産毛生えたての鷲の雛鳥にまさる尻ふきはないのだそうです。これは大変勉強になりました。
    その他にも、「ドーナツの上に排便」という題の、大人二人が尻を突き合わせて皿の上のドーナツに糞をしているまさにその様子を彫刻した作品などが載せられています。
    すぐ隣の右ページには、何かを訴えかけるような表情でアクロバティックな態勢でお互いの顔に屁をふっ掛け合う痴愚神が描かれています。
    そのどこか遠くを見るような眼差しと見つめ合えば、口に含んだ爽健美茶が初夏の夜霧となるのも時間の問題というものです。

  • 電車の中で読めない重さと、刺激的な絵画の数々。
    「醜」という強烈な表現は、厳しい現実の奥をさらけ出す力を持っています。ヨーロッパの各時代の歴史、宗教、美術を知らないと
    ただ重いだけの本になってしまいます(汗

著者プロフィール

1932年イタリア・アレッサンドリアに生れる。小説家・記号論者。
トリノ大学で中世美学を専攻、1956年に本書の基となる『聖トマスにおける美学問題』を刊行。1962年に発表した前衛芸術論『開かれた作品』で一躍欧米の注目を集める。1980年、中世の修道院を舞台にした小説第一作『薔薇の名前』により世界的大ベストセラー作家となる。以降も多数の小説や評論を発表。2016年2月没。

「2022年 『中世の美学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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