表札など: 石垣りん詩集

著者 :
  • 童話屋
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887470095

感想・レビュー・書評

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  • 作者の人生が静かに伝わってきました

  • 「落語」の中の
    ・・・
    無形文化財などと
    きいた風なことをぬかす土地柄で
    貧乏のネウチ
    溜息のネウチ
    野心を持たない人間のネウチが
    どうして高値を呼ばないのか。
    ・・・
    のところが心に響いた。
    金金金の世の中で道を誤らないようにしたいと。

  • 優れた詩篇を1日3食。
    真面目に摂り続ければ、人は予想を超えて豊かになります。

    1年近く、近代女流詩人の作品をメインに食べました。
    厚く濃縮した言葉の歯ざわりと後味と
    時代が醸し出す、それこそ鮮明な「女」の肖像と。

    求められたもの、求めたもの
    何もかも今の私とは違っているというのに
    身体の何処かで相槌を打ってしまう。
    そんな、リアルで哀しい「性」の味。
    たとえばこれは「みだれ髪」の皮膚感覚。

    では石垣りんはどうか。
    それは全く素朴な「ごはん」の幸福感なのです。

    口に含んだ温かさ 咀嚼の悦び 甘い唾液
    それは、「食べる=生きる」という行為をただひたすら肯定する贅沢。
    彼女の目線で語られる生活の瑞々しさによって
    改めて、私自身の毎日の暮らしの在り難さまでも
    ただ真っ直ぐに身体に染み渡るのです。
    なんて、旨いのでしょう。

    ああ、この人はただ一途に「人間」なのだと
    なんとも清々しい尊敬の念を抱きました。
    背筋をぴんと張って雑巾がけでもしたくなるような読後感です。

    都会の暮らしに疲れている方へお薦めしたい
    じんわり効いてくる田舎の思い出のような作品。
    「くらす」という事の温度が、掌に優しく、元気の出る詩篇です。

    どうぞご賞味あれ。

    • Kawanoyさん
      大学の頃 書いたような レビュー。
      大学の頃 書いたような レビュー。
      2011/06/07
  •  1920年生まれ、石垣りん「表札など」、2000.3発行。37編の詩集。「表札」、「くらし」、「島」、「貧しい町」、インパクトがありました。私のお気に入りは、「小さい庭」(朝顔を育てる老婆の詩)です。

  • 私の目にはじめてあふれる獣の涙。

    この一文で、石垣りんさんの心情が迫ってくるように感じられた。
    生きることの素晴らしさだけでなく、むしろ辛さ、息苦しさ、人間の醜さといった目を背けたくなるようなものに真っ正面から向き合って、紡ぎ出された言葉の数々。
    それがとても魅力的だと思う。

  • 結構な環境の中、生きてこられた方のようで…ほんたうに頭が下がりますね!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    詩集というものとは全然無縁なまま、生きてきた僕ちんですが、不思議とイイものだと感じましたよ! 著者とは生まれた時代も違えば、世代も違うんですけれども、なんというかこう…”音楽”のような詩だと思いましたよ! 読んでいると情景が浮かんでくるという…なかなかハマる感覚ですね、これは!

    すでに没してしまった著者…書いた詩集は多岐にわたるっぽいので、これから地道に遡って読んでいきましょうか…。

    さようなら…。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 詩は抽象的で分からない部分も多い。けれど確かに感じるのは、生きることの苦労。決して綺麗事ではない作者の生の生活。仕事をして、お金を稼いで、食べるということ。様々なものを犠牲にしながら。それでも生きていかねばならないという強い意思。

  • 資料番号:015064637
    ご利用の細則:貸出可能です
    備考:複本資料(資料番号:019110584)は,新川和江コレクションに所蔵中です
    http://lib-yuki.city.yuki.lg.jp/info/shinkawa.html

  • 20120921

  • 88年前の1920年2月21日に、詩人の石垣りんは東京で生まれました。

    中学生の時に彼女に出会ってから、それまでの詩の高踏的なイメージが一新してしまいましたが、思いがけず10数年ぶりに再開したのはブックオフで、美しいキラキラ光るこの詩集が、100円で私を待っていました。

    それまで萩原朔太郎・佐藤春夫・北原白秋・高村光太郎・堀口大学・室生犀星・立原道造・宮沢賢治・中原中也・バレリー・ハイネ・リルケ・ランボー・ゲーテ・ボードレール・ヴェルレーヌなどを小学4年生以来、小説に勝るとも劣らず詩も大好きで読んできました。

    もちろん暗誦したり好きな詩をノートに書き写したり、みんながすることと同じです、って言ったら、周りは友達も含めて、あんまりしたことない、というのでびっくりしました。国語の先生の誘いに乗って実行し続けてきたのは私だけだったのか。

    ええっと、そういう芸術派ばかりが詩じゃないんだよ、と教えてくれたのが中学の時の体育の先生でした。ある日、休んだ国語の先生の代わりに教壇に立ったのがこの人。えへん実は国語も教えられるんだ私は、といって何と国語の教員免許も持っているんだとのことで、今日は教科書は置いといて、みんな歌の歌詞は知っていてよく歌っているようだが、何か詩を暗誦できる人はいるかな、と呼びかけたのに応えたのはどういうことか私だけでした。

    指名されて、私は、あのあまりにも有名な中原中也の『羊の歌』の中の「汚れちまった悲しみに」を、

    汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
    汚れちまった悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    普段おふざけの限りをし尽くしている私が、神妙に浪々と暗誦したものですから、教室は静まり返って異様な雰囲気になりましたが、次の瞬間、先生が、

    海にいるのは あれは人魚ではないのです・・・

    と「北の海」を暗誦し出して、手で一緒に暗誦するように促したので、

    曇った北海の空の下 波はところどころ歯をむいて・・・・

    とデュエットのように並んで暗誦しました。

    終わった後、ひと呼吸置いて大拍手。私は顔を真っ赤にして卒倒しそうでした。

    それはさておき、石垣りんでした。その先生から教えてもらった中に生活派とでもいうのか彼女がいました。

    えっ、ちょっと待って下さい、今たまたま、そういえば石垣りんってお幾つなんだろうと調べたら、4年前の2004年の12月26日に84歳で亡くなったんですって、全然知りませんでした。とてもショックです。

    ・・・有名な「表札」から、

    自分の住むところには
    自分で表札を出すにかぎる。

    自分の寝泊りする場所に
    他人がかけてくれる表札は
    いつもろくなことはない。

    病院へ入院したら
    病院の名札には石垣りん様と
    様が付いた。

    旅館に泊っても
    部屋の外には名前は出ないが
    やがて焼場のかまにはいると
    とじた扉の上に
    石垣りん殿と札が下がるだろう
    そのとき私がこばめるか?

    様も
    殿も
    付いてはいけない、

    自分の住む所には
    自分の手で表札をかけるに限る。

    精神の在り場所も
    ハタから表札をかけられてはならない
    石垣りん
    それでよい。


    登録日:2008年03月22日
        ・・・
    ・・・ある部分を改稿していたら全部消えてしまいました
        ・・・

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著者プロフィール

石垣りん一九二〇年東京生まれ。詩人。高等小学校時代から詩作を始め、少女雑誌に投稿する。小学校卒業後、十四歳で日本興業銀行に就職。二十五歳の時に敗戦を迎え、戦後は職場の組合活動にも参加しながら詩作に集中。三八年同人誌「断層」を創刊し福田正夫に師事。五九年第一詩集『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』刊行。六九年第二詩集『表札など』でH氏賞、七一年『石垣りん詩集』で田村俊子賞、七九年『略歴』で地球賞を受賞。二〇〇四年没。

「2023年 『朝のあかり 石垣りんエッセイ集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石垣りんの作品

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