こんな日だってあるさ

  • 童話館出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887500846

感想・レビュー・書評

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  • ある日の小学校の教室で、2年生の男の子“ロナルド・モーガン”が机のうえから鉛筆を落として床を這いまわるところから絵本ははじまる。そしてロナルド・モーガンはページをめくるごとに、次から次へと「うまくいかないこと」に巻き込まれていく。

    でも国語の教科書をうまく読めなかったり、水飲み場で蛇口に指をあてて水を飛ばす遊びに夢中になって後ろで並んでいた女の子のスカートを水びたしにしたりといった「うまくいかないこと」を読み進めていくうちに、これは単に「子どもにとっての、たまたまうまくいかなかった1日」の話じゃないと気付いた。
    これは、知的発達障害の少年の物語だ。

    彼自身には悪意はない。それはスザンナ・ナティの表現豊かで明るいイラストによる彼の表情からでもわかる。
    けど、数々の失敗のためにまわりとトラブルまでには至らないものの、なんか自分の立場がクラスの中で微妙な感じになっているのを彼が何となく感じていくみたいな展開になっていく。
    彼はどうやって、この「負のスパイラル」を解決するのだろうか?

    ここからは、私が彼を発達障害だと考えた理由に踏み込んで書く(だからネタバレを警戒する人は、ここから先は読まないほうがいいです)。
    彼自身で問題を解決するのは能力的に無理。
    そこで、身近な大人の1人として、先生が重要な役割をする。
    先生は彼に手紙を渡す。「この手紙をもってかえりなさい。そして、自分でよんでごらんなさい。自分でよめなかったら、おかあさんにたすけてもらうと、いいわ。」

    先生の手紙は、教科書の文章がうまく読み取れない彼でも読めるように、やさしい単語で書かれていた。そして彼は下校途中でそれを読み、「自分で読めた!」と喜んで家に帰る。
    うまくいかなかったことばかりの1日だったロナルドが、1日の最後に、一発逆転で「うまくいったこと」ができた。

    先生はロナルドのことをいつもよく見ていて、彼にとって一番の方法で彼を手助けしてあげたんだろうけど、なにも大掛かりなことはしていない。
    ただちょっと想像力を効かせて、彼が相手に気を使わなきゃという気持ちを起こさせないようにさり気なく、かつ、彼自身の力で「うまくいかないこと」を打破できるように仕向けただけ。
    でも相手の気持ちをくみ取ってそのように“うまく”するのは、実際にはなかなか難しいのは自分も身に染みている。その点は発達障害であろうとなかろうと関係ない。

    だから自分も、相手が発達障害かどうかではなく、相手の気持ちに対してほんの少し想像力を働かせて、いわゆる“ウインウイン”で気持ちよく過ごせたらいいな、と思う。
    最近はネットでも現実でも、自分の感情をストレートに相手にぶつけて自分だけ得心したらいいかのような風潮が蔓延していていい加減うんざりしているので、この絵本ですごくいい気持になれたし、自分もこんなふうにできたらいいなとも考えた。
    だって、最後にロナルドは、自分だけうまくいって良かったというだけではなく、先生にも良い気持ちになってほしいと自分で考えて“あること”を計画するという、本当にいいシーンで終わるから。

  • 原題「TODAY WAS A TERRIBLE DAY」である。“今日は最悪の一日”とか“今日は散々な一日”と解釈して間違いないでしょうね。

     ことごとく、やることなすこと裏目にで、失敗の連続。ある時は叱責を受け、ある時は嘲笑された経験はないでしょうか。

     ロナルド・モーガン君が学校でえんぴつを落したことが、ついてない一日の始まりだった。宿題を提出するように言われ、ロナルドは宿題にお母さんがサインするのを忘れている事に気づき、お母さんが悪く思われないようにと自分でサインをするが...まずかった。授業中にお腹がすいてお弁当を食べちゃうのだけれど(この時点ですでにまずいのですが...笑)これまた、先生に見つかってしまうし、お友だちの弁当と間違っていたし、お友だちは泣き出すし...、まだまだ続くあれやこれ。お友だちに笑われ、からかわれ、泣かれ、先生には叱られと散々である。

     ロナルドには申し訳ないが傍目から見るとやはり笑ってしまう程についてない。でも、当事者は深刻だよなぁ。ロナルド=自分だったら数日間はきっと腐ってしまいそうである。

     散々だった一日の終わり、帰りがけに先生に呼び止められる。

     「ロナルド・モーガン。この手紙をもってかえりなさい。,,,,」って

     さて皆さんは先生からの手紙の内容をどのように想像するでしょうか。この先はそれぞれの目でお読み下さるほうが良いと思います。

     失敗は子どもだけでない、大人だって失敗もするし,散々な日だってある。場合によっては叱責し、あるいは叱責される時だってある。散々な一日を明日へ引きずらないように、フォローの大切さをこの絵本を通して教えられる。最近、誰かに注意したり、叱ったりされた方、またそのような立場にいる方、お父さん、お母さんにも、そして「最悪の一日」の経験がある方にも手にとって覗いてみてほしいです。

     最後のページのロナルドの得意満面の笑顔を見てると腐らず明日も頑張ろうって気持ちに少しなってくる...。

  • イライラして寝るのはやだなーって思ってたときに、この本をチョイスして読み聞かせ。

    さっきまでのプンプン( *`ω´)がスーッと消えた。

    ラストの担任の先生の優しさにも心が温かくなった。

  • そうだ。こんな日だってある。子どもは大人に言われるまでもなく凹んでいる。そんな時に大人がさらに追い詰めなくてもいい。先生の手紙、ナイスだ。大人のこんな粋な計らいでついていない日もとてもいいことがあった一日に変えてしまえるのだ。

  • 何やってもうまくいかない時、そんな時に先生の手紙を貰えたら嬉しい。

  • 字をよまれなかったけど、よめてよかった。

  • 今日はてんで付いてなかった。鉛筆を落とした事がそもそもの始まり。タイラー先生がヘビみたいだと言った。それから僕のあだ名はくねくねちゃん。昨日の宿題を提出する時、母さんがサインを忘れている事に気が付いて、僕は大急ぎ母さんの名前を書いたんだけど、つづりを間違えてバレちゃった。ビリーが教科書を読んでいるとき、お腹が空いてクローゼットへ行ってこっそりサラミサンドを食べたら、それはジミーのだった。先生には怒られ、ジミーは大泣き。その後もやることなすこと裏目に出て、友達に笑われたりからかわれたり、そしてその度タイラー先生に叱られて。身から出た錆って気もするけれど・・・でもタイラー先生はただの怖い先生ではなかった。温かい気持ちになれる素敵な結末が待ってます。

  • 何をしてもうまくいかない日ってある。

    そんなつもりじゃなかったのに、
    いつもならうまくいっていたのに、
    こんなはずじゃなかったのに。

    最低だった一日から
    次の日に変わる前に、
    大切な人がどんな言葉をくれたなら、
    明日はきっと大丈夫って
    思えるようになるのかな。

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