あたらしい戦略の教科書

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
3.55
  • (30)
  • (107)
  • (115)
  • (9)
  • (6)
本棚登録 : 853
感想 : 98
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887596443

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 戦略とは、現在地と目的地を結びつける方法のこと。人を動かすための、泥臭い部分も含めたリアルな実務のノウハウと指針。

  • 仕事の関連のお取引様の一つである、FreeBit社のあるセミナーに参加した
    時に、この本の著者がその会社の取締役ということで参加させてもらった人
    全員に配られていた本。著者のお名前は以前からしっていたので、
    これ幸いと読みました。
    すごくいい本だと思いました。有用なTipがいっぱいあり、これらを実践・もしくは覚えておくだけでも考え方は変わると思います。

    戦略立案は①現在地の確認②目的地の設定③最適ルートの探索の3つのステップで行われる。

    Ⅰ.現在地の確認において
    (1)情報の収集と分析により、未来をできる限り正確に予測し「未来の不確実性」を下げることで、戦略立案はより容易になる。
    (2)未来をより正確に予測するには-①なるべく近い未来を予測する。②未来を自らの手で作り出す。③現状を正しく分析する。-の3つの方法がある。
    (3)未来をできる限り正確に把握する力(=情報力)とは、「情報の収集力」と「情報の分析力」の掛け算で決まる。
    (4)競合との勝負を有利に進めるためには、競合との間に「情報力の格差」を生み出すことが重要である。
    (5)自社が独占的に事業展開できる「スイートスポット」が明らかになれば、その活用・維持・拡大を図ることが戦略の議論の中心となる。「スイートスポット」とは、顧客が求めること・自社にできること・競合にできることのうち、顧客が求めることと、自社ができることで、競合にはできないことを指す
    (6)最も優先の高い情報は顧客情報である。競合と争うべきは顧客の理解度であり、むやみに競合情報を集める必要はない。顧客情報>自社情報>業界のマクロ動向>競合情報
    (7)貴重な情報とは商品である。①ドライ情報の収集②インタビュー③GIVE5乗の実践-により貴重なウェット情報の入手可能性は高まる。特にインタビューを実施すべき、ドライ情報を多くもって、インタビューすべき人を認識し、インタビューのテクニックをもって実施すべし
    (8)情報収集とは常に不完全なものである。多くの戦略とは、全体の5%程度のウェットな事実を軸に立案・実行されている
    (9)情報収集の7つの基本を押さえる。①異常値に注目する②情報の食い違いに注目する③信頼性を疑う④人間を観察する⑤ハインリッヒの法則に注意する⑥タイミングを優先させる⑦定性的な情報を忘れない

    Ⅱ.適切な目標設定において
    (1)すぐれた目標は、チーム全体のモチベーションを高めることができる。目標達成のモチベーションがあってこそ、さらに良いアイデアが生まれる。
    (2)すぐれた目標の5つの条件を押さえておく。①リーダーが設定している②3年程度の期間で達成したい③背伸びをすればぎりぎり届く④測定できる⑤利他性のスパイス

    Ⅲ.ルートを選定するにおいて
    (1)「種となる戦略」はフィードバックやアイデアの集まるコミュニケーションの中心軸となり、組織内のウェット情報のフローを活性化する。
    (2)新しいアイデアは、トレードオフを解消させるような「ブレークスルー」のためにこそ求められる。
    (3)手っ取り早く実現できる戦略アイデアをテスト・ケースとして実行することで戦略チームの自信とモチベーションを高め、フィードバックを得ることができる。
    (4)戦略の計画表に書く作業で注意するべきポイントは-①細かく分割②完了日を決める。③測定できる-の3点である。特におおきな戦略プランはとにかく小さく分割する「困難を分割する」また、計画表には計画上の完了日・現時点で最も正確な予測としての完了日・実際の完了日を記載する。
    (5)「無難な製品」の市場から撤退しなければ、一流企業への道はない。これは、「善意の反抗」をはねのける力がないと推進できない戦略である。
    (6)すべてのリスクに対策を準備するのは不可能である。発生可能性が高く、インパクトの大きなリスクを特定し、対策を練っておく
    (7)戦略は、短く覚えやすいキャッチコピーにして共有することで、関係者に戦略を売り込み、戦略に沿った実行を引き出すことを狙う。

    Ⅳ.戦略の実行において
    (1)戦略の成功には、周囲の多くの人を説得することが欠かせない。そのためには相手の価値観や考え方に合わせた説得方法をとる必要がある。人間の特徴を理解する手法の一つにCSIがある。「自己主張」の強い・弱い。「感情が表に」出る・出ないの4つのタイプに分類する。自由奔放タイプ(自己主張強く・感情が表にでる)。専制君主タイプ(自己主張が強く・感情が表にでない)。縁の下の力持ちタイプ(自己主張が弱く・感情が表に出る)。求道者タイプ(自己主張が弱く・感情が表に出ない)
    (2)組織のトップは戦略にコミットメントすることを迷うものだが、戦略チームはトップを巻き込み、戦略は「お墨付き」であるという状態を確保する必要がある。その際のトップのタイプを臆病なトップ・勇敢なトップもしくはトップがだれかわからない場合それぞれのやり方がある。
    (3)変化を受け入れさせるには、危機を訴え、希望を効果的に見せることで、現状維持の方が危険であり、変化の先に希望があると認識させるとよい
    (4)他人を巻き込むために最も有効なのは「情熱の伝染」である。情熱は言葉では伝わりにくい。実際の行動や態度で表現するべきである。
    (5)戦略の実行につきものである「現場の痛み」「人間関係の摩擦」「ストレス」を減らすためには、お互いを理解しようとする「やさしい空気」を作り出すのが有効だ。
    (6)戦略に反対する人を「抵抗勢力」と認知し、遠ざけてはならない。反対する人には個別に説得にあたり、それぞれ孤立させなければならない。
    (7)戦略の実行においては、5つのノウハウがある。①アドバイスは最小限にする②非公式の朝のブリーフィングを行う③仕事の割り振りは自分から手を上げさせる④進行状況をマラソンに例える(あと何キロ)⑤プロジェクトの成果は政治的なツールとする。

    これらの考え方(戦略)って、育成・提案営業・プロジェクト進行・組織管理・いろいろ使えるとおもった。戦略を考える本をもっと読もう・・・・

  • 非常に密度が濃い。むしろ濃すぎる。
    “すべきこと”があらゆるページに列挙されており、その隙間に具体的な説明がある。
    ちょっと多すぎるような気もするが、ある意味、迷ったときのリファレンスとして活用すべき本なのかもしれない。書かれた“すべきことリスト”のいくつかを選んで実践するくらいがちょうど良い。
    基礎知識がない人には難しいかもしれないと思う反面、この本に出てきた言葉を別の本で深く掘り下げるという読み方ができる人なら、真っ先にこの本に手を出すべきであろう。

  • わかりやすい戦略論の本。
    情報と戦略策定との関係性を論じた部分は、
    リサーチャーとしてとても参考になった。

  • 『はじめての課長の教科書』の著者が書いた戦略論、ということで早速読んでみました。

    いわゆるロジカルな「戦略論」と比べてかなり実地的、少なくともそういった雰囲気を出しています。目的-戦略-現在地、の構造を語った上で、カーナビの例を引くところはしっくり来るところがあります。この人は、この自然に読ませる文体に優れたものを持っているんだろうな、と思います。

    ちなみに、ですけど、"デトロイト・コンサルティング、最優秀リサーチフェローのマイケル・レイナー氏(P.115)"と書いてますが、正しくは"デロイト・コンサルティング"です。そもそも、それよりもクリステンセンとの共著の『イノベーションへの解』か『戦略のパラドクス』の著者としての方が有名なような気が。まあ、細かいですが。

    でもおまけで星5つ。

  • 「現場からのボトムアップの戦略が必要だ」とあるように、上から目線の戦略ではなく、現場のビジネスマンのための戦略についての解説になっている。

    非常に理解しやすい説明となっている。

  • 優れて実践的、実務的な戦略の本。「ビジネスの複雑さがものすごい勢いで増している現代においては、現場的な専門知識の乏しい組織のトップが、戦略のすべてを管理することのリスクが極端に高まっています。現代における戦略とは、現場に近い各分野の専門家が、ボトム・アップ的な方法で、その立案以前の段階から積極的に関わっていくべきものになったのです。」 御意でありまする。
    <10年11月27日に再読>
    現在、会社の至る所に身を潜めている戦略家たらんとするビジネスマン必読の書。一つひとつのメッセージが、とても響きます。

  • この本のなにが「あたらしい」かというとこの本は戦略を”現場の実行責任者として”立案して遂行する人向けに書かれている。したがって分析をしてビジネスの絵を描くための戦略ではなく、実行して効果を出すための戦略の立て方および実行のしかたが書かれている。戦略とは「現在地と目的地を結ぶルート」と定義した上で、現在地をつかむ方法、目的地を決定する方法、ルートを選定する方法についての説明がある。そして最後に秀逸なのが、選定したルート(戦略)での実行を成功させるための方法論が書かれている。このパートがとてもよくえきていて、どうやって人を説得するか、どうやってトップを巻き込むか、組織内にどういう空気を作り出すべきか、といった現実的にはとても頭を悩ますであろうポイントについて書かれている。このパートがあるからこそ現場の実行責任者向けに書かれた本たりうるのだと思う。オススメ。[2008/8/16]

著者プロフィール

株式会社リクシス創業者・代表取締役副社長。
1972年東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。
TIAS School for Business and Society
経営学修士号(MBA)首席取得。
商社にて新規事業開発に従事後、オランダの精密機器メーカーに光学系エンジニアとして転職し、オランダに約9年在住する。
帰国後はフリービット株式会社(東証一部)の取締役(人事・長期戦略担当)を経て、2016年、ビジネスパーソンのための仕事と介護の両立支援サービスや人工知能を用いた高齢者支援サービスを提供する。
株式会社リクシスを共同創業。
認定NPO法人カタリバ理事、プロ野球選手会顧問なども兼任。
過去には事業構想大学院大学特任教授、新潟薬科大学客員教授なども歴任している。

「2021年 『リーダーシップ進化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

酒井穣の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×