翔太と猫のインサイトの夏休み: 哲学的諸問題へのいざない

著者 :
  • ナカニシヤ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784888482899

感想・レビュー・書評

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  • 哲学紹介というと、どうしても誰それがこういうことを言った、のように「思想の紹介」になってしまいがちである。
    「結果がこれこれである」ということと、「結果がこれこれになってしまう」ということは全く別である。池田某と同じで、永井さんも哲学をしてみせてくれる。本を閉じて、歴史のこと、愛のこと、宇宙のこと、考えてしまう。
    哲学は思想ではない。生きた考えであり、動きである。大事なことを一度つかんでしまえば、決して惑わされない。それが、ことばであり、存在なのである。
    偶然にしろ、必然にしろ、そのように言えてしまうのだ。「ない」ということばが「ある」。「偶然」と言ってしまう「必然」がある。おおよそ、ひとは何かをしてしまう。この意味という網の目から逃げ出すことができない。とりあえず、そういうことに「なってしまって」いるのだ。理由が問えない。「信じ込まなきゃいけない」というのはそういうこと。
    世界は「在る」より他ない。そして、あちらではなくてこちらに「わたし」がいてしまう。宇宙の果てを調べれば生命がわかると言うけれど、どんなにあがいても、「わたし」が「わたし」であることは物質からわかるはずがない。科学は物質による神話であることがわかる。では、どうして、この存在を「信じて」その中で「生きて」しまうのか。
    疑問がつきなくて、とてもじゃないが夏休みでは足りない。4日だろうと40日だろうと、ひとはずっと考え続けている。ひとつの精神の中で気付きを得るために。インサイトの魂は不滅の中で、いつだってよみがえり話しかけてくる。

  • 読んでいるうちに考え込んでしまう本。
    何度もきっと読み返してしまう本。
    昔こんな事思ってたなーという事を思い出させてくれる本。
    ん?これはちょっと...という疑問さえ作者の思うつぼなところが悔しい。
    僕が言っても説得力がないが
    どんな角度から光を当ててみても、
    隙なく完成度がすごく高いなーと
    思わせられる一冊。
    永井均さんの本は、初めての人にも分かりやすい気がする。

  • 初めて読んだ哲学書。
    哲学とは、多くの学者の言葉を反芻するんでなく、世の中の問に答えを出すのでなく、自分の中にある謎や疑問を考え続ける姿勢なのだ。
    と教えてくれる。
    この本に書かれてる疑問は、誰もが通過するだろう、自分の存在について、他人について、世界についての事ばかり。
    考えることが楽しくなる。

  • 980-

著者プロフィール

1951年生まれ. 専攻, 哲学・倫理学. 慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位所得. 現在, 日本大学文理学部教授.
著作に, 『〈私〉の存在の比類なさ』(勁草書房, のち講談社学術文庫),『転校生とブラックジャック──独在性をめぐるセミナー』(岩波書店, のち岩波現代文庫), 『倫理とは何か──猫のインサイトの挑戦』(産業図書, のちちくま学芸文庫), 『私・今・そして神──開闢の哲学』(講談社現代新書), 『西田幾多郎──〈絶対無〉とは何か』(NHK出版), 『なぜ意識は実在しないのか』(岩波書店), 『ウィトゲンシュタインの誤診──『青色本』を掘り崩す』(ナカニシヤ出版), 『哲学の密かな闘い』『哲学の賑やかな呟き』(ぷねうま舎), 『存在と時間──哲学探究1』(文藝春秋), 『世界の独在論的存在構造──哲学探究2』(春秋社)ほかがある.

「2022年 『独自成類的人間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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