- Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
- / ISBN・EAN: 9784890139514
作品紹介・あらすじ
ひとつのばしょでずっとくらすのって、どんなかんじでしょう。じぶんのベッドがあって、じぶんのじてんしゃがある。それってとってもすてきなこと。根っこのないくらしを、ときに心ぼそく感じながらも、家族とあたたかいきずなで結ばれたアンナの心象風景を詩的に、想像力豊かに、美しく描きあげた、心ゆさぶる絵本。ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞受賞。
感想・レビュー・書評
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カナダには200を超える民族が生活しており、移民が人口に占める割合がとても高いことや、季節労働者の事情も全く知らなかった私が読んだ、この絵本は、季節労働者の家族の娘、「アンナ」が自身の人生をわたりどりになぞらせながら、期待と不安を織り交ぜた心象風景を描いています。
空き家に残る人の気配や、人々の話し声を気にはするが、どこか冷静に客観視している佇まいや、時に自然や動物に立ち替わる想像力で、家族の姿を温かく捉えていたりと、どこかユーモラスで、かつ、周りをしっかり見ているアンナの姿勢には、何か惹かれるものがあった。
木の感情に自らを入り込ませ、その気持ちを推し量ろうとしたのも、外にいて自然の存在を身近に感じられるからこそ、できるのだろうな。
また、絵本全体にある、パッチワークのようなデザインには、折り紙を思わせる和のテイストもあり、その素朴で優しい感じは色合いも同様で、それがよりアンナの人間性も表しているように感じられたのは、絵を担当している、「イザベル・アルスノー」の力が大きいのだろうと思われ、彼女の他の作品にも興味が湧き、特に、季節労働者には季節労働者の良さや幸せだってあるのだろうと思わせられた、最後の軽やかな絵は、とても印象に残った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
メキシコからカナダへ 季節労働者の家族の女の子アンナが語りかける絵本です。「季節は枝の間を通り抜ける風のように過ぎてゆきます」という浜崎絵梨さんの訳を読んだだけでも得した気分でしたよ。カナダには200を超える民族が生活しており、移民が占める人口割合が高いことを初めて知りました。
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マクシーン トロティエ (著), イザベル アルスノー (イラスト), Maxine Trottier (原著), Isabelle Arsenault (原著), 浜崎 絵梨 (翻訳)
カナダとメキシコを往復するメノナイト派の家族 -
大好きなイザベル・アルスノーのイラスト。本作はピンクや赤をベースに、切り絵、色鉛筆、水彩などさまざまな技法を組み合わせ、いつになくカラフル。
季節労働者の家族の生活が、小さなアンナの目を通して描かれます。
からっぽの巣穴を見つけて住みつく「のうさぎ」みたいなアンナ。忙しそうに働くお父さんやお母さん、お兄さんやお姉さんみたいに「ハタラキバチ」にはなれないけれど、自分も「ハチ」になったつもりでトマトをひろうアンナ。夜、お兄さんたちは「こいぬ」のように眠り、アンナもお姉さんたちと「こねこ」のように身を寄せ合って眠る。
街ではみんな知らない言葉を話しています。聞きとれる言葉は「さとうみたいに さらさらと」耳に入ってくるのに、わからない言葉は「トウガラシのように ピリッと きつく」聞こえたり、「くろみつみたいに ねっとりして」聞こえる。まるで「コオロギ」が1000匹いっせいに鳴いているみたい。
木のように大地に根をおろして暮らすってどんな感じだろう? アンナは想像してみる。それって、きっと素敵なこと…。でも、夏が過ぎて秋になって渡り鳥が飛び立つ頃には、アンナたちもまた旅立つ。蝶々のように、鳥のように、風に舞う羽根のように…。
動物たち、食べ物、自然のエレメントを使った比喩表現が豊か。
巻末に寄せられた編集部のあとがき「『アンナとわたりどり』と多文化社会について」が秀逸。 -
「人生至る所に、青山あり」、色々な所で生活できるのは、いい経験になると思うよ…
ニューヨークタイムズ最優秀絵本賞 -
私は今のとこに住む前は引越貧乏であちこち転々としていたので、遊牧民とかこの絵本のアンナの家族、季節労働者とかの生活はわりと憧れる。
アンナは自分を渡り鳥やウサギに例えながら、根付く生活の方に憧れているようだ。その想像力豊かな感性が美しく描かれた絵本。