ロリア侯爵夫人の失踪 (フィクションのエル・ドラード)

  • 水声社
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  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891769574

作品紹介・あらすじ

外交官の娘としてマドリードに来たブランカ・アリアスは、若くしてロリア侯爵と結婚する。若さ、富、美貌、すべてを備えた侯爵夫人に唯一欠けていたのは、夫との"愛の達成"だった。未亡人となりながらも快楽を追求し続け、さまざまな男性を経験するブランカにおとずれるものとは…!?軽妙なタッチで人間の際限ない性欲を捉え、その秘められた破壊的魔力を艶やかながらもどこか歪に描き出す、ドノソ的官能小説!!

感想・レビュー・書評

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  • 中編。佳作。艶笑。
    バタイユの小説ほどに沈着な思索はない、
    バルガス・リョサ「継母礼讃」ほどに美学的ではない、
    ドノソのポルノはただただ品がなく下卑ていてグロテスクな笑いがある。
    新婦とのアイコンタクトでチョイ悪オヤジのアルマンサが若夫婦の公然ペッティグを窃視するとか、笑いすぎて失禁したブランカに見せつけるようにアルチバルドが尿を啜って髭を濡らすとか、笑わずにはいられない。
    ただのポルノかと思いきや、精悍な犬のルナに生活が荒らされるところから(言及されずとも)ブランカは未亡人生活から精神的にも踏み外していた。
    まったく煙のように消えてしまい、説明もない、鮮やかな幕切れで、サスペンドされる。

  • チリの奇才、ホセ・ドノソが超大作(別荘)を脱稿した後に、作家自身が単純に書く喜びを思い出すために書いた(と本書の解説にある)軽妙な小説。

    ニカラグアのスペイン大使の美貌の娘が、スペイン貴族の青年侯爵に嫁ぐが、青年の不慮の死により新婚生活はあっという間に終わりを告げる。
    異邦の地で、妖しい親族とその友人たちに囲まれ、心も体も満たされぬ若き侯爵夫人は、次第に幾人かの男と関係していくが、満たされることはない。

    おそらくドノソ自身がパロディとして楽しんでいるのであろう。全編を覆う性愛描写は、蕾であるとか、三流エロ小説のような苦笑せざるを得ない描写。それがこれでもかと出てくる。
    若き侯爵夫人の男関係の迷走感と、それら三流エロ描写が、ここでは思わぬ「おかしみ」を演出しており、単純に笑えてしまうところが不思議だ。

    気を張らずに、変な小説を軽く読みたい方にお勧め。

  • エロチックな中篇。暴力的な犬の存在が強い印象を残す。

  • セ・ドノソの第6長編。分量的には中編と言った方がいいか。
    どちらかというと気軽な読み物といった性格の強い小品で、先頃、邦訳が出た『別荘』や、代表作と言われる『夜のみだらな鳥』とはまったく趣が異なっている。
    『訳者あとがき』にもある通り、性衝動がテーマのひとつなので、作中には色っぽいシーンも頻出するが、そこには空虚感もつきまとうのが特徴だろうか。

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著者プロフィール

1924 年、チリのサンティアゴのブルジョア家庭に生まれる。1945 年から46 年までパタゴニアを放浪した後、1949 年からプリンストン大学で英米文学を研究。帰国後、教鞭を取る傍ら創作に従事し、1958 年、長編小説『戴冠』で成功を収める。1964 年にチリを出国した後、約17 年にわたって、メキシコ、アメリカ合衆国、ポルトガル、スペインの各地を転々としながら小説を書き続けた。1981 年、ピノチェト軍事政権下のチリに帰国、1990 年に国民文学賞を受けた。1996 年、サンティアゴにて没。
代表作に本書『別荘』(1978 年)のほか、『夜のみだらな鳥』(1970 年、邦訳は水声社より近刊予定)、『絶望』(1986 年)などがある。邦訳書:『境界なき土地』(1966 年、邦訳2013 年、水声社)、『隣の庭』(1981 年、邦訳1996 年、現代企画室)

「2014年 『別荘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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