秘められた生 (フィクションの楽しみ)

  • 水声社
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本棚登録 : 55
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891769963

作品紹介・あらすじ

「目を閉じること」で愛がはじまる。"かつての愛"から、ことばと沈黙、秘事、異郷を求めてセクシュアリティの蠱惑から自己、外部へと人間の官能と"再生"に迫る"出立"する愛の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 私には難しい個所が沢山あったので、理解できた(と思われる)範囲のことしか言えないが、それでもとてもとても面白かった!題名と、始めの方読んだ感触から、世阿弥の風姿花伝を思い浮かべていたら、途中本当に世阿弥が出てきた。言葉以前の沈黙の中に、真の愛の姿、芸術の姿を探っていく。誕生と死がイコールなら、時間は未来へ流れても、生は過去へと向かうんだなぁ。次は何が書いてあるんだろう、とドキドキして夢中で読んだ。今年のマイベスト。

  • かつての秘密の恋人との日々から、どんどん古今東西の古典や文学、詩、音楽、哲学、宗教、ラテン語と広く教養豊かな話になっていく。流れるように美しい詩のような文章。そしてそこから飛躍的に考察が続き、わずか数行でもゆっくりと時間をかけて咀嚼するように読んだ。出生児のトラウマや胎児の記憶から死者への愛。別離。ありとあらゆる愛の全てを網羅し取り上げ徹底的に吟味する。午前11時の光を求めて始まった作者渾身の自らの物語は、不可視の手により触れ、捕らえ、何もかも通り抜け昇華されていく。読んでも読んでも読み尽くせない本であった。

  • 人生に別れを告げようとする者だけが許された視点。沈黙すること。読むこと。愛すること。思索すること。愛すること。/深い思索が、深過ぎて、振り落とされないようにというより、最初から振り落とされてた。そのままずるずると...引きずられるように...なるほどわからん。なのにページを捲る手が止まらず、夢中で読んだ。手放したくない、不思議な吸引力。
    気になるところに付箋をぺたぺた貼っていたら、付箋だらけになった。全然わかっていないくせにちょっとわかったような気にさせられる、恐ろしい書。訳者には頭が下がる思い。

  • 難解さ故に幾度も放擲しかけた。ところがその瞬間まるで見計らったように心に刺さる研がれた文章が目に刺さってくる。執拗に重ねくる内容の反復。角度と表層を変え、手を替え品を替え、押し寄せる波のように私を離そうとしない。観念した。反復のバリエーションのもたらすズレは豊かな色彩のグラデーションとなり、織りなす変奏曲は全体を構成しつつも移りゆく差異の残響を耳に止める。残響のなかの嘆きを。次第にカタチ作られるイメージの重層、エネルギーの横溢にいつしか夢中に読み耽っていた。深く美しく狂おしい読書の快楽に呆然としている。

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著者プロフィール

1948年、ノルマンディー地方ユール県に生まれる。父方は代々オルガン奏者の家系で、母方は文法学者の家系。レヴィナスのもとで哲学を学び、ガリマール社に勤務したのち、作家業に専心。古代と現代を縦横無尽に往来し、時空を超えたエクリチュールへ読者を誘う作品を精力的に発表しつづけている。

「2022年 『楽園のおもかげ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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