和文英訳の修業 4訂新版

著者 :
  • 文建書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892490057

作品紹介・あらすじ

昭和27初版の重版

感想・レビュー・書評

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  •  「和文英訳について大学受験に必要な最小限度の知識と技術を伝授するということを唯一の目標としないで、もっと広い見地に立ち、読者に英語的なものの考え方をみにつけてもらいなんとか達意の英文が書けるようになっていただくため」(p.v)の本で、初版が昭和27年に出た、昭和の超有名参考書。まず初めに500の暗唱例文、そして大量の練習問題、でここまでが「予備編」。もうこれだけでいっぱいいっぱいになるが、そこから主語や動詞、修飾語についてどうするか、「翻案」(いわゆる「和文和訳」)をどうするか、といった「基礎編」の講義が始まり、最後に実際やってみましょう、という「応用編」で41の問題に取り組む。
     本当にこれに取り組むには、並外れた勤勉さと時間が必要。通読するだけでも半月以上かかった。英語好きにはとても面白いが、今の高校生にはあまりに難しすぎて、とても高校生向きとは言えないと思う。当然「古くて役に立たない」という表面的な批判はあるだろうが、そういう人はもっと英語を勉強すべきだ。何がどう「古い」のか見極め、それに代わる「古くない」表現を自分で考えられるくらいの英語力をすでに持っている人が読めば、そんなに「古さ」は問題にならないと思う。和文の意味をどう英語に直しやすいように汲み取るのか、表現方法がいかに多様で、そこから何を考えどれを選ぶか、もっと「締まった」英文を書くにはどう考えればよいのかというエッセンスの部分を学ぶべき本だと思う。
     付箋を貼った個所だけでも35くらいになって、全部をここに書くこともできないが、もうおれも中1から20年近く英語を勉強してもまだまだ知らない英語があるのを発見するのも面白いし、思いもつかない表現に出会えるので知的興奮を味わえた。例えば「12月にはいってしばらくすると」の訳"When December is a few days old"(p.113)はおれには無理だった。「次第に次第に眠くなってきました」(p.168)の"I began to feel more and more sleepy."はいいとして、第二案として"Slumber gradually stole upon me."なんて、難しい。p.163にある「夜だからきれいに見えるんです」の"Night lends enchantment."のlendなんて簡単な単語を「加える」という意味で使う、というのも英文和訳ならかろうじて意味は分かっても逆は厳しい。ちなみにジーニアスには「海は今もなお地球上の生物界の多様性を支えています」という例文"The sea still lends support to..."とある。lend a handという表現は当然言えたとしてもこういうところで思いつくのは難しいと思った。「疲れ切った」の表現(p.318)、"I was already dead beat then," "I was dog-tired," はいいとして、"I was utterly spent." というのは初めて見た。あとespy (p.318), jut (p.325), imbibe (p.371)など、恥ずかしいけど初めての英単語を見るのも面白かった。
     それから大量に和文が出てくるが、内容に共感したものもいくつかあった。「試験問題をつくるのにはうってつけの材料だね、ここから。」(p.32)というのは教師なら思うこと。「口を開くたびになにかしら厭味を彼に言わせるのは彼の内にひそむなんなのだろう。」(p.38)と思う人はいる。あと「社会のためにはこんな連中は生れてこぬほうがよかったのだ」(p.22)なんて文を暗唱させるのが面白い。「わたしたちの周囲には気味わるいほどの率で気違いがいるが、それは誰にも分からない。本人にも。」(p.65)なんてちょっと強烈だ。その訳が "An alarming percentage of..."で、alarmingっていう形容詞も何か笑える。どっかに「目の前で良いことを言うやつはろくなことを考えていない」的な文があって共感したのに、どこにあったか見つけられなかった。
     最後に、全然英語とは関係ない点で、時代を感じさせる日本語や著者の態度が面白かった。「バタ臭い」(p.345)「福助頭」(p.355)とかいまいちその意味がよく分からなかった。あと、著者は本当に厳しい物言いをする。それなりにマルもらえる英文じゃないかな、と思っても「…として鼻をうごめかしそっくりかえるのはちょっと早い」(p.210)とか、それくらいならともかく、「…などと書いてスマシているようでは脳外科とか神経科の医師の診察を必要とするのではあるまいか」(p.345)とか「…と書いたら脳髄を疑われるから」(p.355)とか、本当傷つく。当時の読者は笑うところなんだろうけど。
     すごく共感した部分は、「よい英文が書けるかどうかは各人の読書量と読書の際の理解の深さ鋭さの程度、それに注意力、記憶力および文章に対する『勘』や『耳』によって決定されるのであるが、私たちはまだ英語の本は数えるほどしか読んでいないし、しかも理解が精いっぱいで表現などそう数多く覚えているわけではないから、りっぱな英文を書こうなどとは望むだけむりである。」(p.305)と続く部分で、本当に語学の厳しさというものを実感する。もっと英語のインプットを入れないと、と発奮させられる内容だった。英作文は本当に難しい。(2018/04/22)

    • mamofgrandpa5さん
      spentの使い方が使い切るなど、興味深いです。今英検1級勉強中なので是非読んで見たいと思います。
      ところで英語の先生は早口ですね。学習者と...
      spentの使い方が使い切るなど、興味深いです。今英検1級勉強中なので是非読んで見たいと思います。
      ところで英語の先生は早口ですね。学習者として心がけたいと思います。
      2018/04/22
  • 大学受験の時に英語の先生から勧められて取り組んだ参考書です。ただし高校生の自分には使いこなせてなかった、残念。例文は、教科書英語と会話英語の中間くらいの柔らかさで、少々古臭いながらも実用的。仕事で必要になった時のやり直し英語教材としても役立つかなと思い、久しぶりに再読してみました。20年以上たっているのにまだ4訂なのは驚きです。名著は色褪せないってことでしょうか。

  • 高校時代の私の能力では到底使いこなせなかった本でした。大学受験では、和文英訳は避けては通れなかったのですが、多数の例文を暗誦することが私にはどうしてもできず、結局諦めてしまった本です。駿台からでていた『英文700選』にも当然のことながら挫折してしまいました。結局、福武書店からでていた無名の小さな本(残念ながら題名を失念してしまいました)に救われてなんとか英作文を乗り切ったのでした。

  • 英作文の名著ということで買ってみました
    まず(基礎編における)構成が気に入っています。おおざっぱに主語、動詞、修飾語の3チャプターに分けられており、著者が作文する際の考え方(=頭の使い方)が書かれています。英文を書く際に頭をつかう順に焦点を当てて説明されているのです
    ただ、どうも同著者の作品である『和文英訳十二講』の方が解説が詳しいようで、たしかに少々足りないと感じるかもしれません(初心者ゆえ…?)。とりあえず最後まで読んでみて、上書籍にも手を伸ばしてみようと思います
    個人的にまずはお手本となる先生の"頭の中"をじっくり見て真似たいという思いがあり、(もちろん重要だとは思うのですが)予備編はすっ飛ばしてしまっています…

  • 中学・高校の6年間、毎週10文の暗証をひたすらやらされたネタ本。今でもたまに夢に見るくらい恐ろしい思い出だけど、たぶんこれをやったおかげで大学受験を無事に突破できたのだと思うとありがたい。

  • 10年12月候補

  • 基本例文集目当てで買いました。丸暗記はしていないのですが、3ヶ月近くかけて500文を丁寧に分解していったことが僕の英文法理解の基礎になっています。

  • 私が学んだのは昭和47年9月25日三訂重版だった。
    とにかく暗記した。日本語と英語の構文の違いを覚えた。

  • やっと手に入れた一冊。
    基本例文集をまずは覚えようかな、と思っています。
    結構古い本(昭和27年初版、昭和56年4訂新版)なのですが、平成21年1月30日印刷第86刷。
    いい本はいつまでも残ることの証左だと思います。
    こんな息の長い本を書きたい…

  • 受験英語の参考書として使いましたが、一般の人が英語を勉強する際にも役立つ本です。例文500を理屈抜きで丸暗記すると、あとが楽になります。自然と出て来るようになればしめたもの。

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著者プロフィール

1914年(大正3年) - 2008年(平成20年)
一橋大学名誉教授

「2021年 『新装版 和文英訳の修業』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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