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  • 文遊社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892570773

作品紹介・あらすじ

ニューヨークの小さな食料品店を営む、ユダヤ系移民の店主とその美しい娘、店員となった孤児のイタリア系青年の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 今月の一冊は、アメリカ文学らしい閉塞感を味わう『店員』(バーナード・マラマッド / 文遊社) | 三宅香帆の今月の一冊 the best book of this month | 365BOOKDAYS
    https://www.365bookdays.jp/posts/4859

    (株)文遊社|書籍詳細 店員
    http://www.bunyu-sha.jp/books/detail_assistant.html

  • へたり込む程、凄かった。
    米文学の必読書として例えば「怒りの葡萄」や「八月の光」等と同等に扱われねばならぬ様な本だ。昔は新潮文庫にもあったみたいだが、これは新潮文庫の100冊に入っていないといけないな、「伊豆の踊子」とか糞みたいなもは読まなくても良いんで、こういうの、読んで下さい。

    「罪と罰」的だが、圧倒的に身近でリアル、その分、苦しい、そして同時に信仰版「ロミオとジュリエット」でもある。

    劣悪な環境は劣悪な人間を作るが、しかし善を見出す機会は常にあるし、それが又、悪へと転ばぬ保証はない。人は常にぐらぐらな場所に強風に煽られつつ立っている。主人公が読む『ボヴァリー夫人』や『アンナ・カレーニナ』の様に。
    主人公が簡単に成長なんてしないのが凄い。

    呉越同舟。そして聖フランシスと律法のせめぎ合い。
    人はどうしても敵同士にならねばならぬのだろうか。狭い店内と近所だけの舞台に世界も歴史もある。

    ラストはいろんな意味で衝撃。だって、、

  • ニューヨークは貧しい地区にある 小さな食料品屋を経営するユダヤ系移民の家族と そこにやって来た孤児のイタリア系青年の物語。大筋がアメリカのヒューマンドラマを見ているようで、文体も簡潔。派手さはなく、微妙に好みからはずれる感じはあったものの、読み終えるとじわじわ来る。「人間なんて生まれたときの運命がいつまでもつづくみたいですね」が、どうなのかなというところに興味を引かれた。

    でもやはり、ここまで定石な人間ドラマの展開だと、映像作品があればそちらを見ておしまいでいいかな、という気もする。

  • 『暗くて最高!』ユダヤ系アメリカ作家、アメリカを代表するこの偉大なる作家バーナード・マラマッドの長編小説『店員』を簡潔に表すと、この一言だろう。
     幼いときから貧乏で苦労ばかりしてきた青年フランク・アルパインは、とある町の酒場で出会った悪者に一緒に組んで強盗をしようと誘われる。フランクはその誘いに乗ってしまう。体に染み込んだ暴力と虚偽の癖のせいだ。しかし当初計画していたお店に強盗に入ることができず、しかたなしに向かいの貧乏そうな食料品店に押し入る。そのお店を営んでいるのがユダヤ系の三人家族の一家だった。父親はモリス。生きることの本当の信念を持っているが貧乏な生活を強いられている。母親はアイダ。夫モリスの頑な性格に故に損していることを嘆いている。そしてその娘、ヘレン。彼女は夜間の学校に通いながらも、いつかはニューヨーク大学の昼の部で学びたいと願っており、強い向上心を持った美しい若い女性だ。文学に強く引かれており『罪と罰』『ロミオとジュリエット』『ボヴァリー夫人』などが彼女が読んだ小説として登場する。お金持ちになるには教養が必要だと考えている。
     そしてフランクがその貧乏なユダヤ人家族の食料品店に押入ったあと、モリスに怪我をさせてしまった良心の呵責からそのお店で働き初める。いつしか娘に恋をする。
    妻アイダはフランクがヘレンに特別な感情をいだいていることを早くも見抜き、ユダヤ人でない彼が娘とつきあうことを察知して、夫モリスの怪我が治って再び働き始めることができるようになったらすぐフランクがここらか立ち去って行くように薦める。しかしモリスはフランクが働き始めてから貧乏なこのお店の売り上げが少しづつ上向きになっていることを理由に店員として雇い続けることに決める。
    しかしフランクは元来の手癖を捨てることができなかった。彼はお店のお金をレジから少しづつ抜き出していたのだ。彼はいつか強盗のことと、盗みをしていること、でもそのお金は少しづつ返すつもりであることをモリスに告白しようと何度も試みるが、いつも直前で踏みとどまってしまう。しかも彼のおかげで売り上げがのびていたのも、ただ競合店がお店を閉めているだけであって、一意的な偶然にすぎなかった。
     ふとした時にモリスはフランクがレジからお金を盗んでいるのに気がつく、、物語はここからさらに暗い暗い方へと進んで行く…


    「『ぼくは悪いことをするときでさえ、良い人間なんだ』(フランクの台詞、P236、四行目)」

    「あたしはパパが正直だって言ったけど、この世に存在できないのだったら、あんな正直はなんの役に立つのかしら?(ヘレンの台詞、P388、十五行目)」

    律を重んじるモリスを精神的支柱にし、善意の芽が芽生えつつあるフランクの物語。これは周囲の環境に置ける自らの倫理的思考に強く訴えかける作品だ。堪え難い人生の中で人はどう生きるべきか?登場人物の巧みな心理描写越しにマラマッドの倫理観、正義感が垣間見える。
    今まで歩んできた人生を振り返って、「人のために生きるって何だろう?」「自分のために生きるって何だろう?」と今一度問い直したい人にお勧めする一冊です。

  • いい作品を読んだ。他の作品も読んでみようと思う。

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著者プロフィール

1914-1986。ユダヤ系ロシア移民の子としてニューヨークのブルックリンに生まれる。学校で教えながら小説を書き、1952年、長編『ナチュラル』でデビュー。その後『アシスタント』(57)『もうひとつの生活』(61)『フィクサー(修理屋)』(66)『フィデルマンの絵』(69)、『テナント』(71)、『ドゥービン氏の冬』(79)『コーンの孤島』(82)の8作の小説を書いた。また短編集に『魔法の樽』(58)『白痴が先』(63)『レンブラントの帽子』(74)の3冊があり読者は多い。

「2021年 『テナント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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