うきわねこ

著者 :
  • ブロンズ新社
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感想 : 131
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893095237

作品紹介・あらすじ

誕生日のプレゼントでもらったうきわは空をとぶ不思議なうきわでした。まんげつの夜の忘れられない出来事。

感想・レビュー・書評

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  • おじいちゃんからの誕生日プレゼントはうきわ。

    えびおは、うきわをどのようにして使うのかわからなかった。
    まんげつのよるをたのしみにしていてくださいと書かれた手紙。

    はじめてのうきわに心がうきうきして、はしゃぐ様子がよくわかる。
    ともだちにもかさずにかくしておこうとする気持ちも子どもならではのかわいさと思える。
    まんげつをまちわびてまどから見ている様子もとても可愛い。
    目がらんらんとしてくるのもわかる。

    月明かりの下でうきわが浮かんでえびおは、ちゅうにういていく。
    空ではおじいちゃんが呼んでいて、いっしょに遊ぶ。
    海で魚つりをしたり、たきびをしたりとそれはとても楽しくて。
    このことは忘れないでいること。
    そして、ないしよにしておくことをおじいちゃんと約束する。

    だれもしらないひみつのさんぽ。


    わくわくする気持ちと知らないことを体験するというドキドキや嬉しさ、楽しさ、そしてなにより大好きなおじいちゃんとのないしょ話は、最高のお誕生日プレゼントになったと思う。

    ねこのえびおのしぐさや表情もとても愛らしい。
    階段に座って、手紙を読む表情。
    ともだちから逃げようと走っている姿。
    椅子の上に登って窓から月を見ている姿。
    おじいちゃんと会ったときはちょうど後ろに月が。
    おじいちゃんと仲良く釣りをして、竿を見上げている姿。
    おじいちゃんの話を聞いているときの目が、ちゃんと聞いてますよと言っている。
    焚き火を見つめる後ろ姿にも哀愁が。

    いつまで見ていたくなるえびおの姿だった。


  •  物語は、猫の「えびお」に送られた素晴らしき誕生日プレゼント、ただそれだけなのだが、これが両親ではなく、おじいちゃんからもらうのがポイントだと思い、そこには両親とはまた違った大切なものを教えてくれる、長きに渡る確かな経験や役割があるのだろうし、そうしたものを孫は直感的に捉える事が出来るからこそ、惹かれるものもあるのだろう。

     そして、そこで得られた体験は、確かにえびおの深いところにいつまでも留まり続けるであろうと思わせたのは、おじいちゃんがえびおの好きなものをよく知っていることにあり、それは、本編最初の見開きの棚に載っている、ペンギンのぬいぐるみや恐竜の本、更には彼の部屋にある、飛行機や汽車や地球地図の描かれた気球のおもちゃからも察せられて、それらを「牧野千穂」さんの、水の入った瓶を眺めているような、酩酊感のあるパステル画で描き出された中にも存在するリアルな描写は、どこか幻想的でもあるところに、夢のような印象を抱かせながらも、そんなことも起こりそうな希望を感じさせるのは、この絵本が、えびおの成長物語を描いているからであり、それは扉絵の彼が、本編でどのような姿で登場しているかを見れば、きっと実感出来る、子どもに夢と希望を与えてくれる絵本です。


     本書は、この物語を書かれている「蜂飼耳」さんに興味を持ったことがきっかけで、読むことにより、次は是非、詩集も読みたいと思うことが出来ました。

     kuma0504さん、改めてありがとうございます。

  • 小さなねこの、冒険の絵本ですね!
    ものすごくファンタスティックな物語です。
    ぶん、の蜂飼耳さんは詩人で児童小説、小説、エッセイと多才に活躍されています。
    えの、牧野千穂さんはデザイナーから画家になられた方で、パステル画で画きだされる独特の世界にはファンが多く、日本文学から海外文学、児童書まで、書籍の装画や挿絵を数多く手がけておられるそうです。
    絵本を読むようになると、様々な作家さんと出逢いがあるので楽しいですね。
    物語は空想力にあふれていて、ワクワクしながらページを追っていけます。とても、優しく、主人公の「えびお」の気持ちに寄り添いながら楽しめました。
    えが、また素晴らしく物語を浮かび上がらせていて、えだけでも物語が読み取れるようです。
    牧野さんのパステルのタッチは、柔らかくおちついた色彩で、美しく、一枚一枚が完成された作品です。いつまでもみつめていたい魅力を秘めています。
    蜂飼さんも牧野さんも他の作品が気になりました。

  • うきわを持った子猫の絵が気になり、
    どんな絵本か読んでみました。

    こねこの なまえは えびお

    おかかの おむすびを たべている

    おたんじょうびに おじいちゃんから
    とどいた とくべつな うきわ

    まんげつのよる うきわにのって
    うえへ うえへと のぼっていきます

    べつの うきわで やってきた 
    おじいちゃんに あえました

    ふたりで そらをとび 
    はじめてみる うみで
    さかなつりを やりました

    おおきな さかなを ひであぶり 
    あたまから しっぽまで たべました

    いちどしか とべない このうきわ

    だれも しらない ひみつの さんぽ

    ずうっと ずっと わすれないで 

    この絵本を読んであげたら、子どもは何と言うでしょう? 反応を知りたくなりました。
    うきわで猫が空を飛ぶという豊かな発想に驚き、なんとも可愛らしい子猫のえびおから目が離せなくなりました。
    月明かりに浮かぶミモザの花や夜の海、揺らめく焚き火に伸びる影・・など、
    ページをめくる度に絵に見入ってしまいました。
    夜空を翼のある恐竜やペンギンが飛んでいるなんて、きっと子どもは大喜びするでしょう!
     

  • ネコのえびおの冒険ファンタジー。

    初っ端の、

    にちようびの おひるです。
    おかかの おむすびを たべていると…

    と、ネコがダイニングでお行儀よくおにぎりを食べている!なんて可愛い始まり!

    じいちゃんからの誕生日プレゼントの浮き輪。
    満月の夜に一度だけ空を飛べて、じいちゃんとの一晩を楽しく過ごす。
    ネコの絵がまた可愛らしい。

    こんやのことは ないしょにしておこう。
    だれも しらない ひみつの さんぽだからね。

  • ようやく手にいれて読んだ本だが、絵本や児童書のカテゴリーにいれるのがもったいないほどだ。
    パステルで描かれた、深みのある美しい挿し絵。
    明るすぎず暗すぎず、幻想的である。
    猫を飼っているひとにしか分からないのだが、猫はまことに表情豊かな生き物で、
    この本の中でもそれが随所に描かれている。
    おむすびを食べる顔。おじいちゃんからの贈り物のうきわに、きょとんとする顔。
    満月をどんなに楽しみにしているか、その描き方も心躍る。
    そしてうきわをふくらませてふわりと浮かんだときから、生涯忘れられないだろう
    「えびお」の、おじいちゃんとの貴重な旅がはじまるのだ。
    両親には内緒の、わくわくして楽しくてかけがえのない、一度きりの旅。
    空をうかぶ時の驚きと喜びの顔。神秘的なまでの夜の空や海。
    語って聞かせるときのおじいちゃんの顔もとても良い。
    こんな愛され方をしている主人公の「えびお」が、たまらなく愛おしい。
    おじいちゃんから渡されたバトンは、大人になったときの「えびお」をずっと支えてくれるだろう。

    起承転結がはっきりしていて、文字の量もほどほど。
    難しい表現もないので、小さな子どもでも楽しんでくれそうだ。
    2011年の絵本屋さん大賞2位、だったかな。
    納得の、お話の内容も絵も、大変丁寧に描かれた作品。
    作者さんは「中原中也賞」を受賞した詩人さん。
    言葉をひとつひとつ味わいながら読みたい。

  • 浮輪に乗ってぷかりぷかり。と言っても浮かんでいるは海でもプールでもありません。一度しか使えない浮輪をはめて、ぷかりぷかりとどこへ行こう。

  • 2011年発表。


    えびおのお誕生日に、
    おじいちゃんから届いた
    「うきわ」。


    それは、ただの
    「うきわ」ではありませんでした。


    待ちに待った満月の夜に、
    えびおが「うきわ」をふくらませると、
    月にひきよせられるように昇っていきます。


    この夜、えびおが体験した、
    わすれられない出来事とは......?



    猫が主人公の話に弱いのもあるけど、
    表紙の絵一発で
    惹きつけられました。

    猫に「えびお」という変な名前を付けているところや(笑)、
    なぜか
    おかかおにぎりを
    両手で持って食べているところなど、
    どこか不思議な味わいが
    またいいんですよね♪


    不思議なうきわに乗って
    月夜を遊覧飛行するストーリーは、

    おじいちゃんとえびおの
    男同士の秘密の旅であり、

    ワクワクが一杯詰まった
    男のロマン溢れる冒険譚なのも
    かなりツボでした(^O^)


    好きなシーンは、
    でっかい月をバックに
    プカプカ浮かんでる
    おじいちゃんとえびおのイラストと、

    海を見ながら
    二人で焚き火をしているところを
    後ろから描いた
    詩情溢れるイラストかな。



    広い世界を知る旅は、
    少年を大人にしてくれる。

    今日の月と
    明日の月は同じじゃないこと。


    何かを得るためには
    何かを失わなくちゃならなくて、

    夜の時間は
    昼の時間より進み方が遅くて、
    夜の風は
    音がザワザワして
    胸がキュウってなる感覚。


    心に染み入る月明かりの美しさだって、
    暖かい場所から離れてみなくちゃ
    分からないことなんですよね。


    旅から帰ると
    誰もが普通の日常に戻り
    やがて記憶は曖昧になる。

    でも、それでいいんです。


    旅先で見た景色や経験は、
    決して消えさりはしない。

    体のどこかに眠っていて、
    必要な時に呼び覚まされるし、

    えびおにとっても
    この冒険は、
    揺らがない核となって
    いつも支えてくれるハズだから。



    とにかく
    カットごとに違う
    えびおの繊細な表情や
    尻尾の具合(笑)と、

    淡いパステル調の色合いで、
    丁寧かつ
    ダイナミックに描かれたイラストの美しさは、
    一見の価値あり!


    最近小さく纏まっちゃってるなぁって感じる大人にこそ
    必要な絵本ですよ☆

  • しぼんだ紅白の浮き輪を抱えるはちわれ白黒子猫ちゃん。この表紙だけでもいつまでも眺めていられそう(笑)。パステル画のふわっとした感じが、ファンタジー要素のあるストーリーにピッタリ合っている。

  • こねこのえびおに
    おじいちゃんから贈り物がとどきました。
    海もプールもないのに浮き輪が。
    満月の夜まで大切においておくように、
    とお手紙が添えてありました。

    さて、いよいよ満月の夜です。

    その夜に起こったことは・・・内緒です。
    だっておじいちゃんと約束しましたもの。

    絵がステキ。
    えびおの毛のポワポワ感がすごくいい。

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著者プロフィール

詩人。1974年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。詩集『いまにもうるおっていく陣地』(1999年・紫陽社)で、第五回中原中也賞を受賞。現在、詩作の他、「週刊朝日」「図書新聞」などにエッセイを連載。

「2003年 『ひとり暮らしののぞみさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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