夜はともだち (POE BACKS Babyコミックス)
- ふゅーじょんぷろだくと (2014年11月22日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (195ページ)
- / ISBN・EAN: 9784893939715
感想・レビュー・書評
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井戸ぎほうさん2冊目のコミックスは、ノーマル似非S×ゲイで真性ドMな2人のお話。読み応えあって良かった!
元彼が大学構内まで押し掛けてきて痴情のもつれを晒していた飛田を、気まぐれで助けた真澄。飛田の性癖を知った真澄が「プレイメイト」としてサド役をかってでる。興味本意と欲求解消、需要と供給で成り立っていた関係に真澄が「それ以上」を求め始め、噛み合わない歯車は止まってしまう…。
SMって最初、Sっ気のある人が自分の欲求を満たしたくてMっ気のある人を好き勝手に虐めるプレイだと思ってました。でもいろいろな本を読んでいくうちに、Sの役割はMが望むことをしてあげる事で、鞭や縄も身体を傷付けないやり方が存在すると知ってからは『Mに尽くすのがS』という見方になった。この作品でも、業が深いのはMの方だよな~と思える。
人間誰しも多少の嗜虐性を持っていると思うので、プレイでならノリで人を虐めるのも楽しいかもしれない。でもその人を好きになってしまった時、自分の好意を伝える手段が『いたぶること』しかないというのは、根がノーマルな人間にしたらキツい現実よね(`;ω;´) 優しくしたい、可愛がりたいという自分の欲求がそのままでは受け入れて貰えず、いつしか自制の上に成り立っていたプレイのタガが外れてしまう。
飛田の欲求を満たしてあげられない自分に限界を感じて離れる真澄に「ずっと待ってる」と伝える飛田。でも寂しくて我慢出来なくて、たった1つだけ残してくれた約束さえ守れないと自分を責めながら、真澄に会いに来ちゃうんだよね…。
ここで泣けたーっ!!
真澄に対して初めて飛田が涙を見せた場面。いつも自分の欲望を満たしてくれていた相手に「自分が返せるものが何もない」という無力感。普通とは違うと自覚してるマイノリティが、周囲に対して保っている自尊心を崩してでも手に入れたいと見せたエゴ。
いろんな感情がぐちゃぐちゃと入り乱れ泣きながら謝る飛田を「自分のことしか考えられなくて、ひとりになんてしてごめん」と包み込む真澄は、ものすごく包容力のある男だな~と思ったら、そんな真澄の目にも涙が滲んでいて。ラストは美しく印象的で、穏やかな感動が胸に込み上げました…。
描きおろしも萌えた!「してもらうばかりだった」飛田が真澄を喜ばせたくて積極的になるの、めちゃめちゃ可愛い(〃´ω`〃)
ドロッドロのSM好きには物足りないと思うけど「SMってなんぞや?」と疑問をお持ちの方には、何かヒントが見付かるかもしれない作品。読後感がこんなに爽やかだとは予想だにしなかったけど、とても素敵なお話でしたヽ(●´ε`●)ノ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
5本?いや3本の指くらいには入る大好きなBL作品。キャラの設定とか、暗い感じとか、話の流れとかすごい好みで、終わり方がウッってなる感じ。こう、ウッってなる感じだよ!!!な!!?!?
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ラストの「約束守れなくてごめん」で不覚にも目から汗が…
本意じゃないけど相手の性癖に合わせたげる攻の優しさ、やばいと分かっていながらそれでも肉体的性感の檻から逃れられない受の微妙に行き違う心の揺れ動き、そこから変わっていく心情、そしてラストの描き方、と非常によくまとまっている。
心の檻から解放された先に待つ未来はきっと暖かいものであると思いたい。
刺すような黒目の描き方がとてもうつくしい。
冷めたようでそれでいて艶っぽく瞳の奥から漏れ出すねっとりとした情念さえ伝わってくるような。
面白い作家さんだと思いました。 -
これ読めるくらいだからだいぶ回復しとるだろうwww あと、明らかに自分の中でBLを読んでいる、と言う意識が喪失しているのに気付いた。人間関係の話、と言う視点で読んでいる。BL的萌えだけ・勢いだけ・設定だけの作品はもう読めん。と言う基準で必要な本と必要じゃない本が分けられると思う。
生まれ持った性癖が虐げられて痛めつけられて快楽を得る、と言う事はどう言う事だろう。これは殆どの人間にとって難題だと言えるだろう。好きになった人間がそう言う性癖を持っていた場合、どういう風に接することが出来るだろう。飛田が気になって見ていた真澄は、若さでそこへ入ってみることが出来たが、自分にないもの(虐げる役回り)を飛田の為にひねり出すのは苦痛でしかなかったに違いない。
普通に愛したいと思っても、飛田の肉体はそれでは喜びを得られない。遊びと称して、プレイと割り切って役目を担う事は出来ても、それはやはり「強いられたもの」であり、飛田のそれとは次元が違うのだ。
飛田は自分の性癖に原因やトラウマが無い為に、諦観して「乞う」事しかできない。乞う相手がいる限り、飛田は肉体の喜びは得る事は出来るが、「愛」を学ぶことはできない。性的に興奮できれば心なんかいいや、と達観していたかもしれない、飛田は。
きたいとか痛くして欲しいとか微塵も考えた事ない人間が読むと、やっぱどうしても普通の交わりで幸せと思えるようになればいいのに、と考えながら読んでしまう訳だが、その時点でもう、飛田くんの様な人間を根本的に理解する能力がない、って事なんだよね。でもそれは、飛田主体で考えた場合で、性癖を武器に相手に強いているだけではダメだ。自分の性癖に十二分に応えてくれて、尚且つ愛してくれる人間がもしかしたら現れるかもしれないが、目の前にいる人間(真澄)をないがしろにして得られるものじゃない。自分はこうだから、で済ませるだけでは相手に失礼だろ、って思ったんだよな。許容して貰う価値が自分にはあるとか、そう言う話ではない。心があげる悲鳴や痛さが如何に肉体を支配するか。精神の高揚を肉体の高揚といっしょくたにしちゃならんのかもな。肉体と心は密接に結びついているもんだけども、心の安定が如何に肉体の不具合を矯正できるか、と言うのを実感している身だから、そう言う方向から考えると、人間は心が求めているモノの方を最期には優先させなければ破滅に向かうよ、と思うんだよね。
飛田くんが「さみしくて」って言葉に出せて本当に良かったなぁ…って思うよ…寂しいや悲しいや心細い気持ちは肉体が発しているのではない、と気付けて良かったなぁ…飛田。
ぶっちゃけると、肉体が火照るんだ…疼いてしょうがないんだ…で真澄が折れてたら興ざめしてた。中毒者の気づきに似てると思ったのは、飛田の寂しいは特殊性癖を霧散させるくらいの「さみしい」だったんじゃないか、って思ったんだよ。心が満たされたら中毒は克服できるかもしれんって思ったんだよな。 -
SMな関係って、実はデリケートなんだとつくづく思わせる話でした。
真澄は飛田のためにS役を頑張ってるだけで、元々はごく普通の嗜好の持ち主。いつも飛田の身体を気づかって、でも快楽を与えてあげなくてはとSMを真面目に探求していてとてもいいSです。
そんな真澄のおかげで身体が満たされている飛田。飛田にしてみれば真澄と付き合っているつもりらしいですが、真澄にはアブノーマルH以外では無表情で気持ちも伝わってこない飛田との関係は、夜のSMフレンドとして利用されているとしか思えなくて、悲しくて寂しくなってしまうのです。
Sがホンモノだったらきっと事件が起きるでしょうね。S役って相手を気遣う愛や優しさがあってこそ務まるんだろうなと思いました。真澄は飛田のことが好きだからあえて相手をしてあげているので、だんだんその関係に疲れていきます。
普通につきあってデートしたい日だってあるのは、飛田が好きだから。
そこになかなか気付けない飛田は、きっとそういう普通のデートの経験がないからなのかも。いじめられるという受け身の生き方だったので、主体性もなかったですね。
そんな飛田の態度に、さすがに深く傷ついてしまった真澄。それでもまだ受け身な気持ちと態度のままでこれはもうダメかな、平行線のままかな…とずい分心配しましたが。
でも、真澄との破局でついに飛田も自分から能動的に生きることに目覚めました。
大事なことに気づけて本当によかったです!飛田の告白が切なくて切なくて、真澄の返事もやさしくてやさしくて…!
なんてかわいい二人だろうと思ってしまいました。
歪んでるように見えて、実はとてもピュアで読後感がすごくよかったです。 -
井戸ぎほうさん気になってたけど初めて手に取る。
ノーマル似非S×真性ドMって帯に強調されて書かれてたからどんなSMだろあんまり痛いのやだなあSM別に好きじゃないんだよなあと思ってたんだけど、これは実はSMにそんなに重きを置いてない作品みたいで、わたしにとってはいい期待外れだった。
話に急展開があるわけでも、オリジナリティー溢れるストーリーなわけでも、目立った場面があるわけでもないんだけど、淡々と静かに穏やかに進められていって結構好きな雰囲気。
どんなストーリーだった?って聞かれてもなんかふわっとした話だったとしか答えられないけど、読んでる間は楽しかったし、退屈しなかった。
SMっぽいシーンがいくつかあるけど、そっちのほうはあんま期待しちゃいけないと思う。SM通して飛田くんの惨めな感じ(?)とか真澄の葛藤みたいなものが描かれてるだけで、SMを本気で描く気はない?のかな?
ただ飛田くんのかわいそうな感じにきゅんきゅんきたのは確かです。
なんだろうなーこの二人の距離感がいいのかな。見てるこっちが不安になる、上手くくっつかない感じが。
最後の別れる直前ぐらいと、最後の最後が好き。最終的に普通の幸せを手に入れたっぽいところからも、これがSM重視ではないのかなーとうかがえるのかな。 -
ノーマル似非S・真澄と、真性ドM・飛田くんの関係はプレイメイト。プレイの終了とともに2人の関係も解消される。血を見るのも嫌だった真澄に変化が訪れたのは、飛田くんから古びた一冊の本を貰ってから…触れるのが怖くてしかたがない。怖くて、さみしかった。。
そりゃ、人痛めつけるのを本気で愛情だと思えるのは本物じゃないと無理だよね。でも、それがなくちゃ楽しめない飛田くんに大義名分を求めるご主人様達って…どっちを責めることも出来ないけど、どーなんだろうと思ってしまう。そういうアブノーマルだからこその葛藤が読み応えあった。
BがLしてるーって感じがなくて、人と人の繋がりってゆーか、好きとか嫌いとか浅い話じゃなく、もっと奥の方がジーンとする深い話だった。装丁もすごく素敵だし、特別な1冊になった。 -
良作!SMプレイからはじまる二者間関係。攻めのモノローグが冴え渡りすぎ。癖を遡及的に解釈しようとする唾棄すべき他者への諦念まじりの怒りはまるで、溜め込まれた言葉たちが決壊するように吐き出される。切ない狸寝入りと、思いの外さわやかな結末にもグッときた。
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SMもの。
目隠し、拘束、流血、絞首有り。若干ハード。
上記の性癖は受けの嗜好で、痛みが欲しい。
攻めはSMプレイに興味は無いが付き合ってあげる(本当は痛ぶらず普通にいちゃつきたい。しかしそれだと受けが喜ばないので、不本意に痛みを与えている)
受けの性格が大人しいので、少ないセリフから心情を汲み取らないといけない作品だと感じます。どこか影があってミステリアスな存在感があります。そこに攻めも惹かれていったのだろうな……。
SMプレイを土台にしてストーリー展開していくので、所々に痛々しさを感じます。BL初心者さんには、少しハードルが高めかもしれないです。
例えば、受けの目元にある塞がったばかりの傷を、再び物理的に開いて流血させたり……してます。見ていて普通に痛そうな描写です。
巻末のおまけページは、SMものだと忘れるくらい可愛いらしいお話です。受けなりに全力の愛情表現をしてくれてます。
大人しい子の突然のデレ。可愛いしかないです。