- Amazon.co.jp ・本 (91ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894192508
感想・レビュー・書評
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購入にあたり再読。今はなき大好きだったパロル舎の絶版本。長崎出版より再版されました。イメージするのは、誰そ彼時、逢魔が時。現実から道一本隔てたすぐそばにある異界。悪びれない男の情欲、気づけば窮地。『花火』『尽頭子』が今回は心に響きました。金井田さんの版画が内田百閒ワールドに強く誘い、読者をなかなか現実世界に戻してくれません。30分もあれば読めるので、折に触れ再読し、身と心に染み込ませたい、そんな1冊です。
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昼と夜の交わる黄昏刻は人ならざる者が混じる逢魔ヶ刻。此岸と彼岸を隔てる土手を越え、夢の迷路の案内人がやってくる。
夢は白昼の光に曝されると色褪せて空中分解してしまうので、夢が始まる時間というのは曖昧な夕闇に沈む時間帯がもっとも適しているのかもしれない。始終、心がざわざわした。身の内に潜む魔がうねり、不意に顔を覗かせたのを見てしまったような。その顔は影で黒く塗り潰されているのでよくわからない。けれども、知らないようで知っている。ひどく懐かしい。目覚めるとうすぼんやりした不可解さと物悲しさが冷たく漂っていた。 -
挿絵が入るとまた印象が変わります。
最後の『冥途』が怪しくも
悲しい感じで好きです。 -
金井田さんの版画が主役の、百閒のちょっと怖い話集。版画のほうははっきり怖い。それでいて「件」のとぼけたオチと表紙の百閒先生が絶妙にマッチしていて、うまいなあと思った。
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『ノラや』『安房列車』の内田百閒の、うっすら気味が悪い話を集めた短編集。夢の中のような幻想的で不条理な話ばかりで、いわば百閒版の『夢十夜』。
古めかしい仮名遣いも味があって、不安だったり不穏だったりする話ばかりなのだけれど、たまにラストがばかばかしかったりして百閒先生っぽい。
表題作の『冥途』は大きな土手の影にある茶屋の店先で死んだ父をみかける話で、とても短い話とはいえ、何度も読んだ。なぜだか悲しいような気がしてくる主人公と、となりの席で飄々と蜂の話をしている男。主人公はそれが父であることにはっと気がつくが、生と死に属する2人の世界は触れ合わないまま終わる。切ない。 -
版画で名作を彩る文学絵草紙シリーズのひとつ。夏目漱石の門下生・内田百間の、夢の狭間のような幻想掌編。『件(くだん)』は不穏でありながらも何だか滑稽で可笑しい。月の美しい描写が妙で、金井田英津子さんの木版画による挿絵が不思議な奥行きを持たせ、世界に引きこまれた。
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どこかぞっとする幻想的な作品に、物怖ろしいような版画の雰囲気が合っていて、素晴らしい。
突然置いていかれるみたいに幕切れて、少し落ち着かない。これ以上は見てはいけない、そんな気持ちになる。
「件」と「柳藻」が特に好き。 -
パロル舎から発行されてる金井田英津子さんの版画の挿絵が入ったシリーズの中の1冊。他にも萩原朔太郎の『猫町』や夏目漱石の『夢十夜』など、文豪の幻想的な短編を選んで絵本風に仕上げた、たいへんお気に入りのシリーズです。不条理な夢の世界特有の独特の陰鬱さと 不安感、浮遊感、それなのに「すべてわかっている」あの感じがして、非現実的な空気に浸れます。
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★★★★☆
6つの短編。
金井田英津子さんの版画と構成で独特の作品に。
「尽頭子」と「件」が特に面白かった。
悪夢の中をさまようようなお話です。
(まっきー) -
不気味な表紙にひかれ、図書館で借りて読んだ
悪夢をみて夜中にうなされて起きると、汗びっしょり…みたいな短編集
でも怖いだけじゃない
『冥途』はとても良かった
金井田 英津子さんの版画も素晴らしく、話の雰囲気にマッチしている