帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕

  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894343320

感想・レビュー・書評

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  • 2016/11/28:読了
     アメリカにとって世界は不可欠だが、世界にとってアメリカは不可欠でなく、むしろ不必要になっている。
     アメリカは普遍主義を保ち続けるのは、もう無理なのだから、無理に帝国にならず、普通の国になって生き残るしかないという本。
     トランプの政治は、そういうものになるのだろうな。

  • これからはドイツ+フランス+ロシアで欧州ユーラシア経済圏の時代である。
    ロシアは出生率は低い。しかし民主化と軍事力で貢献する。
    ドイツは出生率低い。しかし日本と同じで生産で貢献する。
    フランスは出世率が2.1.そこで人口が3国で均衡する。フランスは非差別的な民族で、アフリカなどにも影響力が大きい。

    アメリカはユーラシアから遠く、孤立する。アラブ諸国、ロシアが民主化すれば軍事的に世界から必要とされない。経済でも生産で日独のように世界に貢献できない。本来的に差別的なアメリカは、帝国として存続しえない。

    識字率、出生率、内婚率から見た世界観。2003年に出版された本であるが、かなりの部分であったっているような気がする。

    で、日本はどうなるか。

  • 米国の衰退理由を、あっさりと、ざっくりと、説いている。難しい言葉ではなく、当たり前の出来事を積み重ねれば、自ずと答えが出てくるようで。

  • こういう本はすごいな〜と思う。世界の歴史の中からアメリカを捉える視点は新鮮でした。

  • アメリカ帝国の強大さではなく、その脆弱さを分析・研究し、その崩壊を過去の人類の歴史、人口学者としての立場で世界に訴えかけた作品であり、作者が予想したことがまさしく展開されようとしていることには唖然とする。

    そんな中、旧態依然とアメリカシステムに飲み込まれている日本の政治システムには辟易してしまう。

    一市民として気をつけなければならないことをニーチェが言っていた。

    世界をあるがままに見るすべを身につけ、イデオロギーの、その時々の影響、メディアによって養われる「恒常的な偽りの警報」これはニーチェの言葉)の支配を脱することである。

    ウィキリークスがんばれ!

  • 世界情勢を論ずる上で書かせない著作である。原著が出版されたのは2002年であるが、現在でも本書の世界情勢分析は有効である。アメリカは「崩壊する帝国」であると著者は結論を述べる。世界が民主化と安定の方向に向かいアメリカを必要としなくなっている時、アメリカでは民主主義が退化し世界を必要としている。それゆえ、アメリカは軍事的示威行動に走り、世界の不安定要素になっている。中国・インドの経済的勃興はまだ視野に入っていないが、結論は変わらないだろう。このような分析を日本に適用すれば、小泉・安部による、日本の資産をアメリカに売り渡す売国路線は亡国の道である事が良く分かる。
    「崩壊する帝国」アメリカは、経済統計と軍事力を見れば明らかである。生産力不足と過剰な国内消費は資本流入により埋め合わされている。アメリカは世界を必要とし、帝国の中心であることを示すために軍事的示威行動への誘惑に駆られる。一方、軍事力については、地上戦での無能さと兵の戦死者数に対する国内からの非難が、伝統的にアメリカ軍の弱点であった。実際に、報道を通じて見えてくるのはアメリカ兵の質の低下である。出身が下層か新移民であり、教育レベルが低い。軍の中では甘やかされた環境に置かれ、客観的に見て弱兵である。アメリカがこれまで関わった消耗戦は、殆ど現地の部隊にまかされていた。アメリカの軍事力は、1国を制するには大きすぎるが、世界を統制するには小さすぎる。以上から、帝国としての示威行動はフセイン・イラクのような弱敵に向かう事になる。
    世界の民主化への傾向は、幼児死亡率、人口増加率の低下、初等教育普及で測られる。現在の世界の動乱の多くは、民主化の移行期の危機である。ドイルの法則「自由民主主義国家の間では戦争は不可能である。」により、民主化された世界は安定に向かう。一方、民主化が古い国では高等教育による差別化が進行し寡頭制に向かう。特に、人種間の出生率の差を測る事により、アメリカでは階層化が進行し普遍主義が後退している事を結論する。そのような国にはドイルの法則は適用出来ず、アメリカが世界の不安定要素になっている。
    アメリカの軍事的示威行動を押えさえすれば、将来の世界は、アメリカ・ヨーロッパ・日本・ロシア・ブラジル等の強国による連合統治体制に移行すると預言して本書は終わる。

    星について
    アメリカと世界の関係について、随所に示唆に富む分析がされていて、啓発される所が大きい。よって星5個。

  • 世界史を進展させる真の要因は識字化と受胎調節の普及である。イスラム原理主義の真の意味は人口学的移行期の危機に他ならない。識字率がある水準に達するとその国では近代化が始まる。しかし、それは平穏で幸せな前近代社会との決別であり親の世代との断絶でもあるため、すさまじい暴力と狂信が猖獗をきわめることになる。フランス革命、共産主義革命、イングランド革命がそれに当たる。

著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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