- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894343405
作品紹介・あらすじ
脳出血に倒れ、左片麻痺の身体で驚異の回生を遂げた社会学者・鶴見和子と、半身の自由と声とを失いながら、脳梗塞からの生還を果たした免疫学者・多田富雄。病前、一度も相まみえることのなかった二人の巨人が、今、病を共にしつつ、新たな思想の地平へと踏み出す奇跡的な知的交歓の記録。
感想・レビュー・書評
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免疫学者の多田富雄さんと、社会学者の鶴見和子さんの往復書簡による対談集。多田さんは脳梗塞で倒れた後、言葉を発することができなくなったにもかかわらず、慣れないPCで鶴見さんへ手紙を綴った。
生命の進化の過程は、下層から上層へのステップアップの繰り返しであるが、そこには必ず今までにはない創造が起きる。それを超越と呼ぶ。
人間の社会も、個人から始まって家族、会社、国と集団が大きくなっていく際に創造的変化が起きている。自然科学と社会学の類似性を示す一例である。
人間の免疫は、非自己を必要以上に攻撃しない寛容という仕組みをもっている。人間社会でも、異質なものであっても受け入れる姿勢が大切であると言える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
下北半島などを舞台とした作品です。
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お互いを「自己の見解を述べられる数少ない学者」と認めた二人が交わす往復書簡。
両者ともに脳の病に倒れ、重度の障害者となる。
病に倒れ沢山の細胞を失ったことで、
より「自己」(多田氏)と「われ」(鶴見氏)
というものについて免疫学者と社会学者という立場で、
自然科学と社会科学という方法を用いて
議論を進めていく。
同じ病に倒れたからこその
お互いの心遣いに感動するし、
両者が時間をかけて考えだした見解にうなってしまう。
身体の不自由を前と同じ思考能力をもった
自分がすべて知ったうえで受け入れなくてはいけない。
その苦悩を乗り越えた上で交わされる
知識交流。 -
居住まいを正します。
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鶴見俊輔の世俗を超越した感覚が好きです。この人漫画の「寄生獣」をそれこそ徹夜で読んだということで、私も読みました。
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二人は、医療改悪の結果、リハビリ期間を短縮され鶴見さんはその結果亡くなってしまった。小泉に殺されると言いながら。小泉っていたよね。今でも後継者がわんさといるけど、こいつら人間かと思う。
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そうなんだ。多田さんも鶴見さんもあたったんだ。
多田のものを読むといつも良質な知識人という感じがする。そのなかでも歌舞伎ものは、ボルテージが高いよ。免疫とは無縁だけど。 -
「歌占」のお話は身近に感じられました。一茶「露の世は 露の世ながら さりながら」生けるものは生かされて、「生命の導くままに生きるのだ」
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免疫学者多田富雄先生と国際社会学者鶴見和子さんの往復書簡
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・専門分野を究めると共に、分野横断的な視点を持つことを大切にし、
更に障害を負うという体験を通して
“人”として新たなものの見方が加わっている
・柔軟だった思考が、
そもそも思考を支えていた身体の突発的変容によって
自己(われ)との相関をより深めたものになっていく
・読んで面白いのはもちろんなんだけど、
共感を伴う理解ができないので残念である
良書。