入門・世界システム分析

  • 藤原書店
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894345386

作品紹介・あらすじ

自然科学/人文科学、保守/リベラル/急進主義など、我々が前提する認識枠組みをその成立から問い直し、新たな知を開拓してきた「世界システム論」。その誕生から、分析ツール、そして可能性を、初めて総体として描く。明快な「用語解説」と、関連基本文献を網羅した「ブックガイド」を収録した待望の書。

感想・レビュー・書評

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  • 入門書としては適切なボリュームだと思う。ブックガイドは、古いものとなってしまったが、参考になる。

  • ウォーラーステイン、名前は知りつつも今までしっかりと本を読んだことがありませんでしたが、本書の題名に「入門」とついていたので購入してみました。結果はとても満足しています。本書は著者がある大学で行った5回シリーズの講演がベースになっていますが、その講演会の聴衆は世界システム分析にほとんど触れたことがない人ばかり、ということで、まさに著者が初心者にもわかりやすいようかみ砕いて概念を説明していることが本書の隅々から感じられました。

    ウォーラーステインの思想を私なりに解釈すると、近代システムのなかで分断した知の構造(具体的には自然科学と人文学という「二つの文化」、さらに社会科学の細分化)を統合化して(統一学科性)、世界システムを歴史的な観点から総合的に分析する、というものです。本書の興味深い点は、ウォーラーステインが呼ぶところの「史的システム論」のわかりやすい解説をするだけでなく、どんな反論がどの分野のアカデミクスから飛んできているか、についても解説していて、ある意味正直というかフェアな印象を持ちました。つまりそのような反論を通して「史的システム論」の特徴がさらに際立つだろうということです。

    私はアカデミクスの人間ではないからかもしれませんが、ウォーラーステインの思想にはかなり共感できました。アカデミクスの主流派の人々からすると、ウォーラーステインの考え方はなにか表面をさらっているだけの浅い議論のように見えるのではないでしょうか。しかし21世紀の現在、社会経済システムが激変しつつあると誰しも感じる状態の中で、たこつぼ的に重箱の隅をつつくアカデミクスの人々は正直役に立たない気がしていまして、こういう激変の時期だからこそ、「浅く広く」議論することが重要ではないかと思いました。本書は翻訳の質も非常に高くとても読みやすかったです。ウォーラーステインの別の本も是非読んでみたいと思います。

  • とてもわかりやすく、しかも世界システム以外の理論からの批判も書いてあるので、その批判理論も一緒に学べる。取り立てて新しいことが書いてあるのではないので、いままでの知識の整理に役立つ。
    但し、メディアについてはあまり書いていないので、メディアと社会システムの関係を勉強する人には向かない。

  • 「システム分析」という割にはシステム感がない
    中核、周辺というが事実にラベルを貼っただけに思える
    1冊だけじゃ言えないなもっといろいろ学んでみよう

    あと数学用語、経済用語がたくさん出てくるけど定義が曖昧な気がする

  • 301||Wa

  • 世界システム論のウォーラステイン自身が書いた、「世界システム論」の入門書。とはいうものの、正直、内容が難しかった。講談社メチエ「知の教科書 ウウォーラーステイン」の方がはるかにわかりやすいと思う。

    内容は、世界システム分析の史的起源、世界=経済としての近代世界システム、国家システムの勃興、ジオカルチュアの創造、危機にある近代世界システムという流れで、説明している。

    世界システム論は、キーワードや、概念自体が難しい面があると思うので、1つ1つはっきりさせていくしかないのかなと思った。

  • 16世紀から現代までの世界のしくみを解剖した本である。最初は世界システム論がどうやって出来てきたかという学説史であある。要するに歴史が伝説から史料を重視するようになると、現代の問題は政治的偏向があるから、経済学(市場)、政治学(国家)、社会学(市民社会)に任せることになった。2章は資本主義の話、ウォーラーステインによると、労働者は個人として市場に参加するのではなく、家計世帯として参加し、アイデンティティの問題や、なくならない階級闘争なども家計世帯が単位になると指摘している。市民概念はフランス革命時は包摂の原理だったが、その後、多くの者を排除した(女性・未成年・同性愛者・異民族など)。第3章は国家システムの話であり、フランス革命以後、保守主義(家系を重視)、自由主義(専門家を重視)、急進主義(社会運動を重視)のイデオロギーが成立したことを述べ、これらの闘争の場が国家であることを指摘する。第4章は「ジオカルチャー」のこと、1848年に成立した世界システムと反システム運動を述べている。マイノリティの運動や、議会主義と革命主義、ナショナリズム運動などの達成と限界を書いている。第5章は、近代世界システムの危機であるが、経済の拡大のなかで、社会改良の要求が緩和されていたが、これがなくなり、結局、議会や社会運動では世界を変えられるという希望の底がぬけた情況で、911テロが起こったとする。世界は新自由主義を体現するダヴォス精神と、さまざまな社会運動の集まりであるポルト・アングレ精神(「世界社会フォーラム」の開催地)に分岐する。つまり、自由と平等の二方向に引き裂かれるという話である。

  • ウォーラーステイン本人による世界システムの入門書。
    『近代世界システム』をわかりやすく整理するとともに、
    システム論以前、およびその後の動きを概説している。

    3,11以降に書かれたという事がウォーラーステインの現在性を
    感じさせる。
    あくまでも入門(またはウォーラーステイン本人の思想の紹介)なので、
    次につなげるための一冊ともいえる。

  • 資料ID: W0159588
    請求記号: 301||W 36
    配置場所: 本館2F手動式書架(千葉)

  • 2010.3.13

    世界システムの入門編。

    【世界システム分析誕生の背景】
    また、科学と人文学の分離と、学問の細分化が進む流れがあった。

    そして、フランス革命以降、以下の二つの考えが市民権を得た。
    ①政治体制の変化は正常である
    ②主権は市民(国民)にある。
    この2つを概念を説明するために、社会科学の要請され、結果的に
    経済学・政治学・社会学が誕生した。それぞれ、市場・国家・市民社会を対象にするものである。

    その後、W.W.Ⅱ以後、アメリカがヘゲモニーを握ると、地域研究が盛んに行われるようになる。その中で起こった、4つの論争(①従属理論②アジア的生産様式③移行論争④アナール史学派)を経て、世界システム分析が誕生した。(特にブローデルからの影響―①構造的時間と循環過程②独占=資本主義と自由市場の区別―は印象に残った)


    【世界システム分析の大まかな特徴】
    ・個別化されすぎた学問を反省し、統一科学的な学問が必要である。世界システムとは、それ自体が世界であるようなシステムであり、カタチとしては、①ミニシステム②世界=経済③世界=帝国が考えられる。近代以降は資本主義的世界=経済と呼べる。世界=経済とは、基礎的財についての単一の分業によって一体性を持つ空間のことである。そして、

    過去に、世界=帝国は3回試みられたが失敗し(カール5世、ナポレロン、ヒトラー)、世界=経済の中で、覇権国が2回入れ替わってきた(オランダ→イギリス→アメリカ)。何故なら、システムの根本的な原理である、無限の資本蓄積のためには、ヘゲモニーが存在し、それが入れ替わることが好都合であるかである。

    1848年の世界革命では、フランス革命後登場した、保守・リベラル・急進が戦略を変更し、結果的に自由主義のプログラム(ナショナリズム、労働運動)を推し進めた。

    そして、現在、1968年の世界革命を経て、システム自体が危機に陥っている。新しいシステムを構築するにあたって、我々が決断しなければならないことの一つは、多数者の自由と少数者の自由の線引きをどこで引くかである。

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著者プロフィール

1930年ニューヨーク生まれ。世界システム論の提唱によって社会科学一般に大きな影響を与えた社会学者。著者に『近代世界システム』全四巻(名古屋大学出版会)などがある。

「2019年 『資本主義に未来はあるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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