白い城

  • 藤原書店
3.82
  • (8)
  • (17)
  • (11)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 265
感想 : 26
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894347182

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「私の名は赤」と双璧を成す歴史小説、とはまさしく。ボリュームは少ないものの、素晴らしい読書体験だった。トルコという国が「異教徒」として見つめる西洋の叡智への複雑な好奇心。長年、敵でありながらも交易を通して意識せざるを得ない西洋とトルコは、互いに張り合うよく似た兄弟のようだ、と極東に住む私には思える。その2つの対比だけでなく、知を持つものが陥る愚者への蔑み、知の生み出す暴力としての兵器、権力を持つものと大衆の罪、何より自己と他者という2つの対比を思わせる。そして、そういうものの深淵を覗き込みつつ、こんなのは全部うそですよ、と言わんばかりに、人が想像をしたり物語をすることが必要なのだ、と読者を翻弄してみせる。素晴らしかった。

  • 大学教授(歴史家)がゲッセの文書館で本書の元となる手稿を発見する。ここにはイタリア出身の男がトルコ人の奴隷となり、師と出会ったことが書かれている。
    「師」と「わたし」はそっくりの外見をしている。二人の自我は次第に入り混じり、境界は曖昧になり、ついに入れ替わることになる。
    二人の境界が混じり始めると少しだれた。が、ラストに向けてまたグッと読ませる。

著者プロフィール

オルハン・パムク(Orhan Pamuk, 1952-)1952年イスタンブール生。3年間のニューヨーク滞在を除いてイスタンブールに住む。処女作『ジェヴデット氏と息子たち』(1982)でトルコで最も権威のあるオルハン・ケマル小説賞を受賞。以後,『静かな家』(1983)『白い城』(1985,邦訳藤原書店)『黒い本』(1990,本書)『新しい人生』(1994,邦訳藤原書店)等の話題作を発表し,国内外で高い評価を獲得する。1998年刊の『わたしの名は紅(あか)』(邦訳藤原書店)は,国際IMPACダブリン文学賞,フランスの最優秀海外文学賞,イタリアのグリンザーネ・カヴール市外国語文学賞等を受賞,世界32か国で版権が取得され,すでに23か国で出版された。2002年刊の『雪』(邦訳藤原書店)は「9.11」事件後のイスラームをめぐる状況を予見した作品として世界的ベストセラーとなっている。また,自身の記憶と歴史とを織り合わせて描いた2003年刊『イスタンブール』(邦訳藤原書店)は都市論としても文学作品としても高い評価を得ている。2006年度ノーベル文学賞受賞。ノーベル文学賞としては何十年ぶりかという

「2016年 『黒い本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

オルハン・パムクの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ウンベルト エー...
コーマック・マッ...
五木 寛之
村上 春樹
村上 春樹
オルハン パムク
三島由紀夫
伊坂 幸太郎
村上 春樹
イアン マキュー...
ウンベルト エー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×