自由貿易は、民主主義を滅ぼす

制作 : 石崎晴己 
  • 藤原書店
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894347748

感想・レビュー・書評

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  • トッドの本は何となく気になっていたので、前に買っていたのであるが、
    読むにあたって知的リソースを多々必要としそうなので、
    なかなか手に取る機会に恵まれなかった。

     
    トッドは家族構成や人口学の専門家であり、経済学者ではないとおっしゃる。
    トッドは25歳にして、20年後の旧ソ連の崩壊を、
    家族構成のシステムの変化により、崩壊がおこると予言し、的中させた。

    さらに、
    先進国がみなみな進める自由貿易がもたらすグローバライゼーションの影響により、
    アメリカ帝国のドルの価値が蒸発し、帝国の崩壊を述べている。

    現在のヨーロッパ、アメリカ、日本における先進国の持ちうる諸問題、
    とりたて、経済的な自由貿易は、中国やインドなどの新興国に、
    生産基盤を置き、先進国は金融市場によって、お金を回し始める事で、

    先進国の賃金の低下や、それに伴う生産性の低下、さらには金の再分配の減少が
    トリガーとなって、結果的に自由貿易が民主主義を滅ぼすとおっしゃっていた。


    言いたいことは良くわかったが、
    どうにも、周りから先生先生といわれて、25年も過ごすと、
    自分の言い分がすべからく正しいと、思ってしまうのか、

    合っていることや、起きそうなことの言及にとどまり、
    その後の社会や世界の展望がいまいち見えてこなかった。

    おっしゃるとおり、ソ連は崩壊した。
    しかしながら、プーチンというゴリゴリの体育会がロシアをけん引し。

    ソ連時代に比べて、ずいぶんと生活の質が向上しているのではないか?
    と思ってしまうのである。

    ”崩壊”とは何を意味するのであろうか?

    ”崩壊”とは、大きな変化と考えるならば、
    崩壊後の社会は、どの方向を向いてゆくならば、

    人々が希望をもって、生きて行けるくらいは
    たとえ間違っていても、希望を述べるのはそう悪くはないのではないかと
    思ってしまう。

  • 経済危機が起きた理由=世界的な需要不足を補うためにアメリカが消費を伸ばした。そのメカニズムが崩壊した。
    その処方箋が公的資金による需要創造、というのは間違っている。

    自由貿易こそ金融危機の原因である。
    自由貿易→賃金の圧縮と企業移転→需要不足→無理な需要拡大→金融危機

    自由貿易は万人が万人に対して競争を仕掛ける仕組み。賃金圧縮と格差拡大が起きる。

    ある状況では保護主義のほうが経済の発展を促す。
    19世紀末も経済成長があったから保護主義から自由貿易への移行が可能になった。

    自由貿易の提唱者は教条主義的。いかなるときでも自由貿易が唯一の方法と信じて疑わない。保護主義者は現実主義者。

    アメリカは産業が衰退しているので保護主義では物価が上昇する。

    保護主義のほうが中産階級を育むので民主主義が発達する。自由貿易は格差拡大で政治的には民主主義が衰退する。

  • 経済系はやっぱり苦手。読むペースが遅くなる。
    しかし、本書は、経済、国際政治、外交、歴史、文化、家族問題、民族問題と、幅広い切り口で書きまとめられている良書と思う。
    スゴイ人だ。

  • 第1部の途中までしか読んでないけど、
    大体言いたいことはわかった気がする。
    たぶん細かく見ていけば色々気づける点はあるんやけど、
    読み進めようと思いませんでした。
    ひとまず主張としては、一時保護貿易をして経済を好転させよう。
    そんな感じのものでした。
    それは納得できるし理解できる。

  • E. トッド、自由貿易によってヨーロッパの民主主義は死にうると。まともな保守といった印象。
    ---
    以下、内容に関する詳細なレビュー

    経済学における理論破綻の典型例であるとされる「合理的に判断できる人間」への懐疑と、それとちょうど裏表にある「真っ当な人間観」を軸に著者は持論を進める。

    ただ、「合理的に判断できない人間」に対するアプローチは行動経済学などによってまさに研究されつつある経済学で最もホットな分野であるし、さらにはその結果を踏まえた制度設計を行うエコノミストがすでに相当数いることも忘れてはならない点ではある。

    しかしそれでもなお著者が主張する保護主義貿易の役割は再評価されなければならないだろう。発展途上における保護主義貿易も、先進国におけるそれも。
    「謙虚さ」の表明として。

    また、民主主義との妥協を拒絶する自由主義である「ウルトラリベラリズム」の指摘も興味深い。例えば、実際に我々はまだまだ身体の安全を国家に求める段階である(海外での非常時には大使館へ駆け込む人が大半である)。そういったリアリズムを謙虚に受け止めるという意味で、やはり著者はまともな保守主義者であるといえるだろう。

    保守主義は歴史に対して常に謙虚なのである。

著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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