東日本大震災 大局を読む!

  • 李白社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894519343

感想・レビュー・書評

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  • 時折、大局を読むの年ごとに読むが、今回は緊急出版と言うことで、かなりあわてて書いていたのがよくわかる内容だった。

    1章が大震災による経済的損害と復興について
    2章が政治の対応のまずさと外交について
    3章が国家に頼る日本人の精神性を変革について
    4章が日本人が変われるのかの著者の対談

    新しい事実も知ったが、基本は出来事の資料を元に提言をまとめている感じだった。1年後に、いろいろな反省を含めて、指針を発表してくれるようにと願う。

  • 新刊書が出たら必ずと言っていいほどチェックする著者である、日下氏と長谷川氏が共著の形で東日本大震災後の大局について解説しています。

    現時点(7月後半)ではだいぶ納まってきたとは思いますが、風評被害は酷いものでした。多くの東北産の食べ物が出荷停止になり、残念なニュースが多かったと思います。

    日本のメディアは、風評被害のレポートをするだけでなく、チェルノブイリの近くでできた食物を食べて、実際に被害にあった人たちの報道をしてほしいものです。

    震災直後は、製造業の生産が部品調達ができないために落ち込んだこともあったようですが、かなり回復してきていると思いますので、年末までにはもっと回復してほしいですね。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本ではジェネラリストというと、広く薄く知っているだけだから役に立たない人の意味であるが、アメリカでは優先順位をつけられる重要な人の意味になる(p3)

    ・東北三県(岩手、宮城、福島)の日本GDPに占める割合は4%で、兵庫県に匹敵するが、阪神大震災と異なって、過疎地帯に起きた被害であり、日本経済全体を揺るがすほどの影響はない(p19)

    ・米国やフランス、新興国が日本に復興してほしいと願っているのは、自国の製造業のため、ジャパンパッシングはあり得ない(p21)

    ・自動車には一台あたり約三万点の部品が必要だが、東北ではそのうち500点程度が作られていた、エンジン制御やブレーキ関連部品が多かった(p27)

    ・日本の技術力の高さはどこかの研究所による研究開発で得られたのではなく、町工場等の生産現場で技術水準を上げてきたもので、それを担っているのは技術者というよりも工場で働いている人たちなので、海外の企業は追いつけない(p29)

    ・ソ連にとって冷戦の勝利は目前であったが、日本が省エネ技術の開発と省エネ生活(省エネルック、省エネ住宅等)による生活革新をしてしまい、石油輸入が増えなくなり、日本のGNPは成長を続けた、このような経済成長は世界中のどの学者も予測できなかった(p55)

    ・鉄道会社は、JR東日本以外の首都圏の私鉄は自家発電を持っていないので計画停電によるダメージを受けたが、JR東日本は信濃川に3か所の自前の水力発電所を持っていたので支障は少なかった(p59)

    ・予算案は衆議院議決が優先されて衆議院通過後の30日以内に自然成立するが、予算関連法案は衆議院で3分の2の賛成が必要となるので、管政権は行き詰る可能性が高かったが、東日本大震災により大連立の可能性がでてきた(p65)

    ・被災者生活支援特別本部には事務次官などで構成される各府省連絡会議が置かれたが、これは廃止したはずの事務次官会議を復活させたもの(p75)

    ・管首相はもともと市民運動の出身だから、最初から政治主導をやる気がない、もともと市民運動とは政治主導をつぶすためのもの(p80)

    ・蒸気カタパルトは原子力空母でないとつけられない、それにより大型の航続距離の長い破壊力の強い艦載機でも空母から飛ばせる、通常のエンジンの空母は飛行甲板はカーブデッキで、カーブを上がってその惰性で飛ぶ(p101)

    ・防潮堤はハードである、それが役に立たない場合には、ソフトに頼るしかない、宮古市の姉吉地区は「ここより下に家を建てるな」という石碑が海抜60メートルに建っていて、住民はその石碑よりも高い場所に住居を設けていたので全員助かった(p115)

    ・福島第一原発の三号機はプルサーマル(ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料を利用)であった、地震が来て見事に停止した(p123)

    ・米国では原発産業だけでなく、原子力工学科を持つ大学もなくなっているが、アナポリスにある海軍兵学校には原子力工学科があり、原子炉の専門家を養成している、原子力空母、原子力潜水艦が原子炉を動力として動いているから(p125)

    ・国内の電気代が高いというのをなぜ新聞が書かないかは、電力会社は湯水のように宣伝予算をテレビや新聞に使っているから(p171)

    ・お金はいくらでも国際金融市場の安い金利で賄える、震災後に金詰まりのためにつぶれるのは倒産寸前の中小企業のみ、東電は世界最高の民間電力会社であり、絶対につぶれない(p177)

    2011/7/24作成

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著者プロフィール

国際エコノミスト。1927年京都生まれ。1953年大阪大学工学部卒業。新聞記者、雑誌編集者、証券アナリストを経て、1963年に独立。1983年に出版した『世界が日本を見倣う日』(東洋経済新報社)で、第3回石橋湛山賞を受賞した。

「2020年 『中国は民主化する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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