メルキオ-ルの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫 ひ 1-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894567436

感想・レビュー・書評

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  • とある家系の悲劇の物語なのだろうか?「メルキオール」「バルタザール」とは、何かのメタファーなのだろうか?
    生き物として人間を冷徹に捉えると、闇にあたる部分にも目を向け観察するべきなのだろう。著者は、闇を見続け、観察し、咀嚼し、小説という形にして昇華しているのだと思った。もちろん、私の勝手な解釈になるが。
    不思議な趣を持った作品で、これまでの平山さんの作品とも一味違った印象を持った。
    万人におすすめする作品ではないかもしれないが、大好きな作品の一つになった。

  • どこかファンタジーさを感じさせる、ある種おとぎ話のような雰囲気。平山さんらしいホラーさやグロさ、理不尽さは思ったほどでもなかったけど、でもその思ったほどでもない感じがちょうど良き世界観だったかも。
    悪趣味な蒐集癖のボスに頼まれて、子供を殺した母親の話を聞きにきたトゥエルブ。そしてその家に居候しているうちに巻き込まれる子供たちの秘密。最終的にはハッピーエンド的な感じで。

  •  東方の三博士、メルキオール、バルタザール、カスパールとは、幼子イエスのもとに現れて乳香、没薬、黄金を贈り物として捧げた。ヘロデ王はイエスを殺そうとしていたが、三博士はイエスの場所を知らせなかった。
     平山作品には意外と聖書の影響がある。お告げのシーンも多い。天啓と言っても良い。
     メルキオールは朔太郎で、黄金、王権の象徴、青年の姿の賢者。朔太郎に当てられた黄金のモチーフは分からない。筋肉だろうか。
     バルタザールは礫で、乳香、神性の象徴、壮年の姿の賢者。礫は良い匂いがする描写が多かったので引用は間違いない。
     カスパールは作品には明示されていないが、美和ではないかと思う。没薬、将来の受難である死の象徴、老人の姿の賢者。没薬とはお香みたいなもので煙が出る。煙草を印象的に吸っていたのと、エンディングの姿でそうじゃないかと思った。美和は鬼交家ではないので考察がバッチリ当てはまっているかは分からない。もしかしたら遠縁かもしれないし。
     朔太郎の父祖で分かるのは、朔太郎の叔父が天才で、父が白痴後の面倒を見る箱舟役。実の母は明記されていない。母は箱舟を産む前に死んでしまったか居なくなったのか。そして禁忌とされている、二人目の妻に孕ませた。その結果天才が二人出来てしまった。
     朔太郎は礫が澪を殺して脳を食べたと言っている。礫は朔太郎が美和と繋がっていたのを知って父が自殺したと言っている。朔太郎の言っていることは本当だったし、礫の言っていることも本当かもしれない。疑問点は多い。
     12の正体はなんだろう。神からの啓示を女の死体の中に見つける。なぜ殺すのかと言う問いの疑問符に自分がなること。疑問を生じさせる存在として、混沌を司る存在として12は殺しをしてきたということだ。なので、女に書かれた天啓は何の意味も無く、疑問を抱くことに正解がある。
     もう少しちゃんと読み解けば分かることもあるだろうけど、そこまでしなくても良いかなと思う。そこそこ面白い作品だった。

  • 平山氏は、とても正しく狂っている。
    ぶっちゃけ『独白するユニバーサル横メルカトル』や『いま、殺りにいきます』で氏の作風は分かっていたつもりだったけれど冒頭七行で本を投げかけた。投げないでよかった。
    悲劇の爪痕を探し、ピーナッツバターを貪る主人公。落雷。メルキオールと名乗ったとある人物の語る真実。邪悪なるもの、無垢なるもの、母なるもの。全てを巻き込んで、物語は血生臭いカタストロフィへ加速度的に転がり落ちていく。
    この読後感は他の何にも代えられない。『独白するユニバーサル横メルカトル』をさらに先鋭化させたような、狂気と静謐の物語だった。

  • 平山夢明の傑作ホラー長編小説。
    人の不幸に纏わる証拠品を収集展示している博物館がある。主人公の“俺”は、そこの館長の依頼を受けて、展示するべき品々を高額で買い取ってくる交渉役として働いていた。
    今回”俺”が受けた依頼は、我が子の頭部を切断して六年服役していた女から、未だ発見されていないその子供の頭蓋骨を手に入れてこいというものだった。
    懲役を終えた女は、施設に預けていた他二人の息子を引き取って過疎の村に移り住んでいた。”俺”はその村へ飛び、交通事故に見せかけて強引に接点を持ち、女の家へと転がり込む。
    その家族の異様さに目を見張りつつ、”俺”は己が仕事を果たしに掛かる。やがて女の家族に隠された秘密に辿り着いたとき、”メルキオールの惨劇”が幕開くのであった――。

    とてつもなく面白い作品だった。
    常識を無視してイカレた設定のオンパレード。ストーリーは先の展開をまったく読ませず、ページをめくる手が止まらぬまま衝撃の結末へ。読了後は最高の読書タイムを過ごせたという充実感と共に、思わず「うはぁ……」と嘆息を漏らしていまう程の疲労感が押し寄せた。絶対ネタバレ禁止の作品で、レビューなど一切目を通すことなく手にとって。

    適当で冷淡で皮肉屋な“俺”の語り口が本当にユーモラスで心地良い。簡潔なのに「どっからこんな比喩表現を思い付くの!?」と感心しちゃう独特な表現のオンパレード、科学的な整合性なんて微塵もわからないのに思わず圧倒されてしまう高尚なる蘊蓄も盛りだくさん。
    鬼畜系の描写はこれまで呼んできた中で一番リアルに感じられたし、思わず背筋にゾクッときた。此の作者自身がある種の天才なんじゃないの?ってか確実に拷問経験あるんだろ、と疑いたくなっちゃったり。

    文句なく面白い作品で完成度は抜群に高いと思う。
    ただ個人的な好みから言えば、メルキオール達の天才ぶりを、その家系を遡ってもう少し詳細に書いて貰えるとよかったかな~と思わなくもない。そうするとホラー小説から歴史的陰謀小説に衣替えしちゃうのかもしれないが。
    天才達のバックボーンをもうちょい描き込んでもらえたほうが、より彼等の異常性が際立ち彼等の行動の必然性、説得力が増したのではないか。

    この作品はこれできちんと完結しているけれど、この”俺”を主人公とした作品を他にももっと見てみたい。
    シリーズ化してほしい。エログロホラーでスリリングなストーリー、中二病好きが絶対にハマる要素が詰まってる。つまり私は大好きです。

    ダイナーはしっとり上質な情緒を楽しむロマンティックな恋愛小説、このメルキオールはぶっとんだ設定に酔い痴れる一気読み確実のホラー小説というところ。
    平山作品って駄目な人は駄目だろうけど、ハマる人はハマって抜け出せなくなっちゃうよ。

  • これはB級ホラー映画だ。そう思って読むと楽しめます。
    文体も設定もきっと読者をおちょくろうとしているのだと思う。

  • こんな物語が読めるとは!面白い!よくこんなキャラ、ストーリーが創れるなぁ、お気に入りです。

  • 最初からSF物?として読んでおけば、面白いんだが。 不幸のコレクションの処は実に生々しく、依頼主は金銭的にも現実みがなく、ハードボイルドっぽい主人公が三枚目に見えたと思うととんでもなく残酷だったり、ジャンルを捉えにくいまま、終了。

  • 想像してたよりぶっ飛んだ?SF?的な設定てんこ盛りの話だった。
    キャラはみんな濃くて、会話が面白いから先が気になって一気に読めた。

    ただ、平山夢明だし…グロとスプラッタはあるので万人には絶対勧められない。
    あと私は犬好きで動物が痛い目にあってるのがなにより苦手なので前半の犬ぶん回したりしてるシーンはどうしても読めなくて飛ばしてしまった…。

    ありえないだろーみたいな部分が山盛りなんだけど、なんだかこんなこともありかなーとか思えたり愛着がどうしてもわいてしまうキャラ描写はすごいなぁと。
    最後はハッピーなほんわかした感じとは程遠いはずなのになぜか爽やかな気分になるというかなんだかちょっと泣けてくるというか…ダイナーの時もそんな感じをうけたけど、途中がグロくてぐちゃぐちゃでも締め方がそんな感じなので読後感はそんなに悪くはない。

    ピーナッツバター食べたいなあ。

  • 人の不幸をコレクションする男からの依頼で、ある女に近付く主人公。
    当たり屋まがいの危険極まりない方法ながら、なんとか取り入ることには成功。
    だが、この家族には奇妙な謎がてんこ盛りだったのだ…。

    1ページ目で笑った。2ページ目で混乱した。3ページ目で胸が悪くなった。
    優しい雰囲気のものを幾つか読むと、物騒な雰囲気のものが読みたくなります。
    そんな気分の時はと、積ん読から選んだこの一冊。物騒さがうってつけです。

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著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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