ニジンスキーの手 (ハルキ文庫 あ 11-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894568150

感想・レビュー・書評

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  • ★鏡花・荷風・谷崎・かの子・三島・中井英夫の系譜の赤江瀑                          哀悼★2012年

    思い浮かぶままに赤江瀑の小説を並べると『獣林寺妖変』『美神たちの黄泉』『ポセイドン変幻』『金環食の影飾り』『鬼恋童』『蝶の骨』『青帝の鉾』『野ざらし百鬼行』『春喪祭』『アポロン達の午餐』『殺し蜜狂い蜜』『絃歌恐れ野』『芙蓉の睡り』『禽獣の門』『海贄考』『鬼会』『風葬歌の調べ』『春泥歌』『花酔い』『荊冠の耀き』『アルマンの奴隷』『香草の船』『光堂』『月迷宮』『弄月記』『星踊る綺羅の鳴く川』『日ぐらし御霊門』『狐の剃刀』等、ほとんど題名そのものが内容を暗示するような耽美的伝奇的な、禍々しきおどろおどろしい語句と雰囲気に満ち溢れたものばかりです。

    4ヵ月前の6月8日に79歳で亡くなった赤江瀑といえば、初めて読んだ本書『ニジンスキーの手』が忘れられません。ただの舞踏好きだった私を『バレエの現代』『考える身体 』『バレエ入門 』によってバレーに開眼させてくれたのが三浦雅士でしたが、そのあともっと決定的に抜け出せないバレーの魔境へと誘ったのが芳賀直子『ICON 伝説のバレエ・ダンサー、ニジンスキー妖像 』( 講談社2007年)を読んでからでしたから、ニジンスキーの名を冠したこの小説に魅せられたのは運命のようなものかもしれません。

    戦災孤児の弓村高は、ロシア人舞踏教師に舞踏テクニックを叩き込まれ若くしてパリ公演の自作舞踏詩「クレタの牛」で天才舞踏家ニジンスキーの再来と評されるが、スパイ容疑と盗作疑惑でギド・ジャストレムスキー舞踏団を退団せざるを得なくなり、日本に戻った彼は新作バレエ「一頭の神」の筋書きを幼馴染の風間徹に依頼する。まるで20世紀初めの天才舞踏家ニジンスキーが「牧神の午後」によって彗星のように登場したように、彼も同質の芸術性を持ちその生き方もやはり同じような奇跡に満ちたものでした。

    独自の世界を描いて角川小説賞を得た夏の光輝く午後の大迫家の惨劇の妖美華麗な世界『オイディプスの刃』も、泉鏡花文学賞を受賞した『海峡』『八雲が殺した』も忘れられない小説ですが、1973年の直木賞候補の『罪喰い』は、選考委員の司馬遼太郎も柴田錬三郎も石坂洋次郎も水上勉も川口松太郎も村上元三も今日出海も松本清張も無視、ただひとり源氏鶏太だけが最有力候補と好評した残念な結果でしたが、もし受賞していれば妖美・幻想以外のまた違った赤江瀑も読むことができたかもしれないと思ったりします。

  • 赤江瀑を読むことで私は耽美という世界を知ったと言ってもいいですね。
    言葉の持つ美しさと、妖しさ。
    絢爛たる闇の世界。運命に翻弄される哀しくて美しい男と女。
    赤江瀑の作品は男女の恋愛だけでなく男同士の情念の世界も沢山描いてます。
    一時期嵌りに嵌ってました。
    この短編集には特に好きな「獣林寺妖変」と「禽獣の門」が収録されてます。
    獣林寺は傾倒するあまり京都に血天井を見に行ってしまったくらい・・・(汗)
    崇夫が牡丹刷毛に血を浸して天井に投げ上げる、そのシーンが今でも忘れられません。

  • ニジンスキーの手
    小説現代 1970年12月

    獣林寺妖変
    小説現代 1971年2月

    禽獣の門
    小説現代 1971年5月

    殺し蜜狂い蜜
    小説現代 1971年7月

    恋怨に候て
    小説現代 1975年8月

    解説 葛西聖司
    体験的瀑書咀嚼法

  • 五編ともに、鬼気迫るものがある。
    人間の理性をずたずたにする、何やらしれぬ恐ろしいものが、描かれている。

  • 時代もイロイロ

    ミステリーだったりエロスだったりこれもイロイロ

    読みやすいけど展開が読めないトコロに
    とても惹きこまれました。

  • 色々な舞台で話が展開して、幅広いな~と思います。
    噎せ返るようなエロスあり、ミステリありです。

    赤江作品は名前の付け方が秀逸だな~と思います。登場人物の名前もだし、タイトルも、こういうのが好きな人が絶対読みたくなるような引きがある。

  • 赤江瀑作品を読んでいると、日本語とはなんと美しい言葉だろう、といつも思う。目で追う字の形は美しく、口に出すその語感は気持ちいい。妖艶で耽美で不思議で難解。でもそれがとても心地いい。

  • 私の読んだのはもっと古いバージョンなんですけどね。それは表紙がなかったので、こちらを。これで赤江文学にハマったといっても過言ではない。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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