- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894569201
感想・レビュー・書評
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とても、とても静かな作品。
江國さんは私が一番好きな作家だけれど、何年か前に読んだ時にはこの本はあまり好きになれなかった。
こんなの私が知っている、そして望んでいる恋愛ではないと思ったから。
でも今なら分かる。世の中には確かにこういった恋愛の形があるし、それには望む望まないは関係ないのだ。
絶望。絵。恋人。死。
完璧な世界ではないか。
p,110
今度恋人にあったら絶対に言わなくてはならないと考える。誰かをどこかに閉じ込めるなら、そこが世界のすべてだと思わせてやらなければならない、と。自由なんか与えてはならない、と。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
B'zの『スイマーよ』の歌詞の一節
~夕闇に吸い込まれそうな我が身にうっとりしているだけ~が、
どんぴしゃにはまる、絶望と仲良しの主人公の恋愛小説。
現実世界なら面倒くさいだけの女だけれど、
小説だと、どうしてこんな美しいのか。
一緒に嵌まって、どっぷりうっとりするのが楽しい。
それから主人公の子供時代の回想も、すごく共感できた。
子供時代って本当に不条理な事ばかりで世の中が満ちている。
嗚呼、大人バンザイ!!・・・と呟いて、
大人子供はウエハースの椅子を齧る。 -
久しぶりに江國さんの作品を読みました。主人公の心の動きや彼女の視点から見る風景の描写など、本当に伝えたいことをダイレクトに書いているわけではないのに、なぜか共感できてしまう、共感しなくとも理解することができる、江國さん独特の描き方がやっぱり好きだなぁと感じました。江國さんの作品を読むたびに、好みの文章にぶつかっては、何回も読み返して感嘆のため息を漏らしてしまいます(笑)。
主人公の見ている世界はとても美しく、一見すると彼女も満ち足りた生活を送っているかのように見える。けれど、本当は孤独と不確かさの中で虚しさや寂しさを常に抱えながら生きているのだという事実は、彼女とかけ離れた生活をしている私でさえも共感してしまう。というか、ああそうか、そういう表現の仕方があったのか、そうそう、私が言いたかったのはそういうことです、とおこがましくも言いたくなるような、そんな誰しもが共通して持っているような、でも共有はできないような、そんなお話でした。そしてなにより、数ページ読みはじめてすぐに予期できたことではあったけれど、読後感じたこと…不倫ってやっぱり切ない…(笑) -
【「愛してるわ」
恋人は私の目をじっとみて
「僕も愛してる」と言った。
まっすぐ、誠実に。
私は毎日少しずつ壊れていく。】
妻子のいる男性と恋をする画家。
かるく、甘く、
そよ風のように描かれる日常。
そこでは”死”さえも
幼馴染のように、遊びに誘いにやってくる。
【ベッドに入ろうとすると、やあ、と言って、
ひさしぶりにそれがやってくる。
私は仕方なく、ドアをあけて迎える。
絶望を追い返すことなど、誰にも出来ないのだ】
壊れていく、
それでも続いていく命。
甘く柔らかく私たちを誘うのに、
触れたらすぐ崩れてしまう。
まるでウエハースで出来た椅子のように。 -
人生観とか、恋愛観が似ていると感じる作品
生き方とか
死にたいしてのとらえ方
恋人の在り方
自分の存在など
過去の日記をひっくり返したような作品でした。 -
どんどん追い詰められていく主人公に息苦しくなる。
怖い作品だと思った。 -
ものすごく久しぶりに読んだ江國香織さんの本。
「紅茶に添えられた角砂糖」という表現が気に入った。この本は沸騰することも冷めることもなく、生温い温度でずっと半身浴をしているような感覚。江國香織さんの本を今年はたくさん読んでいきたい。 -
「ポトスライムの舟」に続けて憂鬱になる本だった…
こっちの方がずっしりくる。鬱雲が感染する~