三国志〈12の巻〉霹靂の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.98
  • (152)
  • (141)
  • (150)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 1331
感想 : 64
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894569706

作品紹介・あらすじ

英雄は去り行く。劉備の遺志を受け継いだ諸葛亮は、疲弊した蜀の国力を一年で回復させた。蜀に残された道を進むべく、孔明は、自ら豪族たちの蔓延る南中の平定を目指す。一方、大軍を率いて呉に大敗した魏帝曹丕は、周囲の反対を押し切り、再び広陵への親征を強行する。だが、度重なる敗戦は彼の身体をも蝕んでいく。魏の侵攻を悉く退け、さらなる飛躍の機を伺う陸遜。孔明の乾坤一擲の北伐策に、その武勇を賭ける趙雲。遺された志に光は射すのか。北方「三国志」慟哭の第十二巻。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 孔明と司馬懿を中心に物語が進められていく。
    三国時代の結末を知っているので、曹丕の親征の失敗が無かったら、蜀の南征が劉備の大敗の前であったらなど、もし・・を考えてしまう。
    曹丕が短命であったためにいよいよ司馬懿の力が強くなってくる大国魏と、若い将軍が(小粒ながら)育ってきており、厳しい訓練で兵も精強な蜀、影が薄い呉という感じで物語が進展していく。
    英雄が軒並み舞台を去った後では孔明の奮闘がかえってさみしさを誘い、物語の終焉が近い、晩秋の肌寒さの様なものを感じる。

    姜維が出てきた。孔明との出会いやその評価は、後の姜維の歩みを暗示しているように感じる。
    陸遜についても、有能であるが故に抱える不満や葛藤は、彼の死に様を暗示しているように読める。
    次巻末の孔明の死で物語は終わるが、それ以後の事も見据えたうえで最後まで手を抜かないからこそ北方の作品は物語の続きが読みたくなる余韻を残すのだろうと思う。

    街亭後の趙雲の馬謖に対する言葉(臆病さが武将にとっての優れた気質;臆病であるが故にとことん考える、天才はそんなことをしない)は自分によく当てはまる部分なので、自分のことを言われているようでちょっと嬉しい。

    巻の終盤に来て、孔明が気負い(劉備の死の影)から開き直ったような印象を受け、劉備死後に漂っていた寂しく悲壮な雰囲気が和らぎ、落ち着いた優しい感じを受けるようになった。
    巻末で趙雲が病死するが、残される孔明も逝く趙雲にも悲壮感はなく穏やかで晴れやかな描写になっている。
    次巻の最後はどんな雰囲気で描かれるのだろうか?さみしく悲壮な最期のイメージで来ていたが、ここに来て分からなくなった。

  • 孔明の南征は思いの外あっさりと済んだ。
    武将たちは死に際まで潔く。病気でも戦でも何しろ潔い。
    寂しくもあるが、納得しながら死に向かっていく。それを見送る側も、不要な言葉はかけないのだ。最後の武将、趙雲も病に倒れる。
    あと1巻を残すところ。
    少し名残惜しくもあるが、残る武将もなく、あとは国がどうなるかなど、山河を駆けた過去に比べると些少事に思えてしまう。

  • 劉備が墜ち、趙雲墜つ。群雄割拠の時代から残る武将は孔明・魏円・司馬懿・孫権・陸遜のみか。次はいよいよ最終巻。

  • なぜ馬謖に重要な役割を与えたのか、馬謖の性格、人間性を見抜くことはできなかったのだろうか?スーパー軍師である孔明ともあろう人が、迂闊ではないか?
    吉川版や横山版の三国志で感じた違和感は、北方版でも払拭できなかった。「泣いて馬謖を斬る」の前振りエピソードがやけに長くて、どうも言い訳がましく感じてしまった。魏延の扱いを対称例と考えると、孔明の人間らしさを描こうとしたということだろうか?
    曹丕が死に、いよいよ趙雲も死んでしまった。北方三国志は、死に際をきちんと描くところがよい。

  • 曹丕の偉大すぎる父親に対するコンプレックスから親征を繰り返すのにはある種の可愛らしさを感じた。そんな彼に対し司馬懿がはっきりと「戦が下手です」と伝えたことに二人の表には出さない深い関係性が伝わってきて、とても良いシーンでした。魏は司馬懿がいなければ滅亡しているのではないかと思うほど人材が不足していますね。

  • はぁ…

    孔明殿も魅力的なんだが…
    趙雲までもが…

    はぁ…

  • <慣> 先の11巻で劉備が死んだ。この巻の感想を読もうとしている諸兄は既に先の11巻は読んでいるでしょうから,例のネタバレと云う奴には相当しないと思って書いている。なのになんで後二巻まで続くのだ・・・とは考えると投げたくなるのでやめておこう。

    そして近況。
    良いんだか悪いんだかよくわからないゴールデンウイーク。天気予報通りの雨の降る朝,コーヒーと全粒食パン二枚で朝食。その後昼まで読書。お昼はご飯を炊いて豆腐とおからではいいただきます。今日の楽しみは夕方からの晩酌。シャワー浴びてビールから始まり焼酎を経てラストのウイスキーまで。この間に文藝単行本を一冊読み終わる・・・午後からの予定。

  • 南征に向かう諸葛亮。
    孟獲との戦を含めた一連のやり取りが興味深い。
    蜀の話が大部分を占めている。
    「出師の表」「泣いて馬謖を切る」

    そして趙雲も亡くなる。

  • そして趙雲も死す。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    諸葛亮が天才であることとそれでも埋められない国力の差というもの実感する話だった。
    特に第一次北伐は他の作品でもあと少しで成功したと書かれているが、北方三国志では本当にあと一歩だったと印象が強く残った。
    一方で魏は曹丕に死が早すぎるといった印象だ曹丕が長命していれば諸葛亮の北伐はもっと苦労していたかもしれないといった感じだ。自らの矜持のために命を削ってしまったな。
    呉は相変わらず引きこもっているなと言った印象だ。漢の再興が国是である蜀と天下統一が現実的に可能な魏と異なり、領土を拡張する強い理由がないためだろうか。それが孫権と陸遜の対立とまではいかないが考え方の違いを生み、後々の事件に繋がるのだろうと思うと色々と思うことがある。

全64件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北方謙三の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×