[正当の旗を掲げて]占領,破壊,国際法侵犯といった数多くの批難が浴びせられるイスラエル。「巨人であるその国に投石で対抗するパレスチナ人」というイメージが固定化する中で,「本当にイスラエルは悪なのか?批判は的を射ているのか?」という点を徹底的に検証した一冊です。著者は,ハーバード大学で教授を務め,中東問題に関して数多くの言及をしているアラン・ダーショウィッツ。訳者は,ユダヤ及び中東問題を研究している滝川義人。原題は,『The Case for Israel』。
扱っているテーマもその切り口も,読む前に物議を醸してしまいそうなのですが,イスラエルにおけるいわゆる右派(まぁこの用語も多様な用いられ方を同国ではするのですが......)の主張が明確に記されているため,その論理構造を考える上で非常に参考になります。下記の一文などは一人の日本人からすると「おっ」と思わせられるのですが,この冷ややかさが中東問題の底知れなさなのかもしれません。
〜民間人を標的にすることは占領から生じた結果ではありません。むしろ,占領こそが(少なくともその一部は)アラブ人による民間人殺害の長い歴史の結果なのです。(注:訳は評者による)〜
思考の枠が広がる読書でした☆5つ