この世の富

  • 未知谷
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896424393

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  • 第二次大戦の只中のフランスをリアルタイムで描いたところは、この後のフランス組曲の「六月の嵐」につながる。ドラマのダイナミズム、闊達な人間描写、所々の美しい描写も共通している。
    後書きではピエールが主人公のように解説されているが、私は妻のアグネスの「女の一生」に感じられた。身分違いの恋で愛する人と結婚し、夫を戦争に送り出し、息子を戦争に送り出し、戦乱に立ち向かう。最後の文章は美しい。「自分はこの世の富を全て蓄え、地上のあらゆる苦さも甘さも実を結んだ。そう思った。二人は一緒に人生を全うするだろう。」
    しかし、ネミロフスキーはアグネスの立場、フランス人ブルジョワにはなれない。本書を書き終えて僅か2年後に、全うできずに亡くなった作家の運命を思わずにいられない。ネミロフスキーはその人生を送れなかった、しかし死後何年経とうが不滅の「フランス組曲」が次に来るのだ。

著者プロフィール

1903-1942年。キエフ生まれ。ロシア革命後に一家でフランスに移住したユダヤ人。1929年、長篇第一作『ダヴィッド・ゴルデル』で成功を収め(31年J・デュヴィヴィエ監督が映画化)、一躍人気作家に。第二次大戦が勃発すると、夫と娘二人とともにブルゴーニュ地方の田舎町イシー=レヴェックに避難、やがてフランス憲兵によって捕えられ、42年アウシュヴィッツで亡くなった。娘が形見として保管していたトランクには、小さな文字でびっしりと書き込まれた著者のノートが長い間眠っていた。命がけで書き綴られたこの原稿が60年以上の時を経て奇跡的に世に出るや、たちまち話題を集め、本書は「20世紀フランス文学の最も優れた作品の一つ」と讃えられて2004年にルノードー賞を受賞(死後授賞は創設以来初めて)。フランスで70万部、全米で100万部、世界で約350万部の驚異的な売上げを記録し(現在40カ国以上で翻訳刊行)、映画化された。

「2020年 『フランス組曲[新装版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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