亡命ロシア料理

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制作 : 沼野 充義  北川 和美  守屋 愛 
  • 未知谷 (2014年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896424584

亡命ロシア料理の感想・レビュー・書評

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  • ボルシチの作り方を知りたくてロシア料理の本を探していたら、アマゾンがこの本を推薦してくれた。30秒ほど表紙を見つめた後、「カートに入れる」をクリックした。そんなわけで、この世紀の奇書が今、私の手元にある。

    まずタイトルが凄い。亡命ロシア料理ーーこの破壊的なセンス。いったい誰が、誰に向けて、何を訴えたくて書いた本なのか、まるで見当がつかない。新書のタイトルだったら一発でボツだろう。

    この本は、旧ソ連から米国に亡命した2人のロシア人によって書かれたものだ。ロシア料理についてのレシピ付きエッセイ集だが、料理にとどまらず、広義の文化論ともいうべき内容になっている。

    本書がそこらの軟弱な本と異なるのは、自分たちに対する生ぬるい親近感を断固として拒絶しているところにある。試しに冒頭の一文を引いてみよう。「日本語版への序文」の書き出しはこうである。

    “ロシア料理には、日本料理との共通点はまったくない。”

    シベリアの永久凍土のようなクールさだ。普通、そこは社交辞令として、強引にでも何らかの接点を見いだす所じゃないだろうか。にべもないとはこのことだ。相互理解など不可能かもしれないという予感は、第2章の一文を読んだ時、確信に変わった。

    “お茶はウォッカじゃない、たくさんは飲めない”

    むろん当人たちはいたって真面目なのである。終始こんな調子で暴走トークが続く。

    “民主主義と同様、仔牛の肉は少々軟弱だ”
    “国際主義の理想がわれらの祖国で実現したのは、料理の分野だけだった”

    各方面をdisりつつも、英国人や現代日本人とは違い、不毛な冷笑主義には陥らないのがロシア人だ。食にかける彼らの思いは、おそらく地上のどの民族よりも熱い。平凡なキッチンも彼らにかかれば、たちどころに魂のブートキャンプと化す。

    “いい料理とは、不定形の自然力に対する体系の闘いである。おたま(必ず木製でなければならない!)を持って鍋の前に立つとき、自分が世界の無秩序と闘う兵士の一人だという考えに熱くなれ。料理とはある意味では最前線なのだ…”

    「冷凍作りおきでラクしてほめられご飯☆」とか言ってる場合じゃない。生半可なレシピ本では満足できない硬派な貴方へ、自信を持って本書をお薦めします。

  • 亡命×ロシア×料理。面白い組み合わせ!
    ぶくろぐで見かけた奇妙なギャップのある題名に惹かれて読んでみる。
    米国へ亡命したロシアの文学料理人が、ロシア料理にあるときは故郷への想いをのせて、あるときはジャンクフードへの怒りをこめてつづるエッセイ。
    ロシアって僕にとっては思想的にも文化的にも近そうで実は最も遠い国ではないか?
    ものすごい手間をかけて作る想像もつかないレシピ。魚は川魚が主流だということも改めて納得ですが、実にエキゾチックというかカルチャー・ショックな料理の数々。並みのSFなんかよりもよほど異世界感を感じます。

    本物のボルシチ食べたい。北海道にいるうちにサハリンに行ってみよう。

  • すごい面白かった。
    40ぐらいのロシア料理のレシピや薀蓄が書いてあるんだけど、
    「お茶はウォッカじゃない、たくさんは飲めない」
    「民主主義と同様、仔牛の肉は少々軟弱だ」
    とかソ連ギャグをちょいちょいはさんでくるし、ボルシチやビーフストロガノフの材料も全部5人前50皿分だ(笑)。

    著者は70年代にラトヴィアからアメリカに亡命した二人組みの文筆家だが、ハンバーガーやダイエットとかのアメリカの文物のこき下ろしっぷりも気持ちいい。亡命者の愛国心には特有も悲哀がある。旧ソ連がどんなだったとしても、文化の多様性が失われるのは悲しいことだ。

  • ロシア料理はピロシキとボルシチくらいしかイメージがなかったが、他にもいろいろあって美味しそうで食べたくなる。

  • 壺とかディルとかサワークリームとかキュウリのピクルスとか、とにかく物品を揃えたくなる……

  • 米原万里氏が、ロシア人は会話にユーモアを必ず盛る、とか ひとつの物をいろんな言い方で表現する、と書いていたが、なるほど、砕けた調子で書いているからとはいえ、これは面白い。随所にユーモア、自虐、そして亡命ロシア人のアイロニーがあふれている。

  • 斜めな視線も毒舌も大変面白いんだけど、いかんせん胃弱者故、文字だけで胸が焼けてくるよロシア料理w 圧倒される。

  • 3F閲覧室
    A/596/717733

  • 旧ソ連からロシアに亡命した批評家が、亡命の地で現地の料理に対する皮肉をぶっ放しながらロシアの味を再現するレシピを、料理への情熱といろんな方位への攻撃をたっぷり混ぜながら紹介していく快著。
    読むと料理したくなるけれど、基本的にどれも時間と手間をかける料理が多い。
    別に料理をしなくても読んでいて楽しい+ロシア料理をちゃんと食べてみたくなる。

    ・・・それにしても、しょっぱなから料理に必要なものとしてツボをあげるってのが! 「なんか深めの器のことだろう」と思ってたら入手方法にエスニックな土産物店とか言い出してて本気でツボじゃないか、あるかいそんなもの!!

  •  料理は才能よりも熱意を必要とするユニークな芸術で、賢明な人は生まれつきの直観と節度をもって絶えず腕を磨き、熟練し、手順を途切れなく確実に進める。ものを創り出す過程のうっとりするような精神的昂揚に身をゆだね、利益と美徳を兼ね備え時間とお金のかからない実験的な仕事を喜び、最前線にあって世界の無秩序と闘う兵士の一人だと考えれば熱くなれる。

    『自分の知っていること、自分にできることをすべてお伝えしたいま、私たちが願うのは、読者のみなさんがもう私たちの助けなしに、料理の叡知の頂点にまでのぼりつめてくださることです。その頂上では、筆舌に尽くしがたい美点に輝く数々の料理がみなさんを待っています。』207頁

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亡命ロシア料理の作品紹介

アメリカとロシア二つの文化の狭間に身を置いた亡命者のノスタルジアが、極度に政治化された20世紀末、イデオロギーを潜り抜け、食という人間の本音の視点から綴らせた-実践レシピ付料理エッセイ。機智に溢れた文明批評の45章。

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