- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896916157
感想・レビュー・書評
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筆者の言うように、何かことがあるたびに、「心のケア」が強く叫ばれるのに違和感があった。
そんな疑問に答えてくれたのが本書。
カウンセリングによるケアで、救われる事もあるかもしれないが、問題の本質的解決にはならない。確かに欧米では、カウンセリングによる問題解決が根づいているのかもしれないが、何でもアメリカ流は如何なものか。
一度、業界(カウンセラー)ができてしまうと中々解体は難しい。後は、利用者がしっかり声を上げるのと、行政が安易にその業界を使わないのが望ましいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
081230購入。090102読了。
「心の専門家は必要か?」「治すとはどういうことなのか?」
著者は臨床心理学「論」者の立場から、現代社会に蔓延る「心理主義」の問題や、カウンセラーの必要性などを本著で懐疑的に考えていく。
たしかにある時期から「心」というものがやけにクローズアップされてきた感がある。長年、科学や哲学で、近年は主に脳科学の領域でその研究対象とされてきた「心」は、そもそも対象としてすら定まっていない。概念なのか実体なのか、「心」とはどこにあるのか、「心」とは何なのか、漠然としたこの対象物を良く言えば「治療」、悪く言えば「商売」のために扱っているのが臨床心理士たちである。カウンセラーと相談者の「やさしい権力関係」、問題を個人に還元することで背景や環境を無視し根本的な解決にならないこと(例えば、不登校とは悪いことなのか。不登校児個人の問題に還元してしまえば、学校という制度の欠陥が見えなくなってしまう)、「関係」は生き物で、制度と相性が悪いこと。心理学の理論と実践、両方からの問題の検討はわかりやすい。身体的な怪我や病気において人間に自然治癒能力が備わっているように、「関係」から発生した問題はゆっくりと「関係」によって戻していく。何かあったらすぐ専門家に頼るのでなく、日常を復権すべきというのが著者の主張である。 -
カウンセラーについて,マイナスの側面について書かれている本です。
一般的に,カウンセリングは必要とされており,カウンセラーは人気の職種です。しかし,カウンセリングを行うことで問題の本質を覆い隠してしまうことになるという視点も重要です。カウンセラーについて,そんな視点もあるよという意味で重要だと思います。 -
【こころ主義(心理学化する社会)への警鐘】
人間関係を商品化することについて考えさせられました。
「商品化」=「悪」ではありませんが,何をどこまで商品にしてもいいのかどうか考えなければならないと思いました。
暴走した資本主義はすべてのものに対して商品化の圧力をくわえてきますが,その波に無批判にのまれないようにしなければならないと思いました。 -
臨床心理(河合隼雄)批判の書。「心のケア」を巡る業界暴露的内容。資格問題から学会分裂したようで、著者は資格反対派の立場で、資格推進派の河合隼雄を攻撃している。資格推進派と政治との繋がりまではさすがに知らなかったし、ちょっと陰謀論的な憶測にも感じられるが、総じて説得力はある。国家権力が心理学を使って国民を操作し統治していこうというのは過去の歴史が物語っているので間違いはないだろう。河合隼雄にこんな側面があったとは少々イガイではあるが。
また、臨床心理の問題点として、生活の問題を心の問題に置き換えて論点ずらしをし、個人還元的にする事により、社会的問題や人間関係の問題が放置されるという側面はあるようには思える。結果、カウンセラーに相談するのではなく、弁護士に相談すればよいという事が言われたりもする。
約20年前の本なので業界事情も変化しているのかもしれないが、患者とカウンセラーの権力関係は普遍的なものだろう。AIが発達すれば、患者の方も話しやすくなり、権力関係も消滅するのではないかとも思うのだが、まだもう少し時間がかかるのかもしれない。 -
250円購入2006-01-07
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臨床心理士の視覚認定についての議論がもう少し欲しいと思ったけれど、要するに筆者は反対派で、職能団体として一枚岩になれなかったということが問題なのだろう。15年前の本だが、その後公認心理士というのが作り出されることになったその経緯も知りたいところだ。
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主張のすべてに賛同はできないけど,
視点は興味深かった。