頭はよくならない (新書y 82)

著者 :
  • 洋泉社
3.06
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本棚登録 : 60
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896917123

感想・レビュー・書評

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  • 「頭がよくなりたい」という思いをめぐるさまざまなテーマについて、比較的自由に著者自身の考察がつづられている本です。

    「ひとには無限の可能性がある」といった言説を吐く人びとの無責任さを指摘するとともに、それにもかかわらず「頭がよくなりたい」というコンプレックスに囚われてしまう人間の「切なさ」にせまるところは、実存の観点に立つ著者らしい興味深い問題設定だと感じました。ただ、著者自身の少年時代から大学受験までの体験が率直に語られている一方で、「切なさ」を掘り下げる方向に議論が進められておらず、期待はずれに感じてしまいました。

    他方で、著者自身が「頭がよい」と考える知識人や、反対に「頭が悪い」と考える知識人について、具体的に名前をあげて露悪的な議論が展開されています。著者は「あとがき」で、「私はときどき、こういう下品で挑発的な本を書きたくなります」と語っており、自覚的にこうした「芸風」をえらんだのだと思われますが、批判の対象になっている知識人の議論をある程度詳細にたどりつつ反論をおこなうのであれば、こうしたスタイルを採用するのは避けるべきではなかったかと感じます。

  • 批評家らしくはっきりとした物言いを書いていた。でも、納得することばかり。時にやわらかい口調もあるので、安心して読むことができた。
    4章が特によかったのだが、私は果たして頭の「いい人」に入るのか「悪い人」に入るのか。最後に希望を与えてくれる言葉があったので、救われた。何かと興味深い本でした。(図書館)

  • 分をわきまえないな。
    という内容だな。

  • [ 内容 ]
    「頭がよくなる」とシアワセになれる?
    「勉強ばかりがすべてじゃない!」と思っているクセに“頭がよくなる”という宣伝文句にはついつい惹かれてしまう。
    ノーベル賞受賞者の劣等生エピソードに快哉を叫びながらも自分の子どもにはやっぱり世間並み以上の学歴を期待している。
    …そんなだれもが抱える「頭の良し悪し」への切ないこだわりは「健全なあきらめ感情」を肯定することでしか解消できない!
    頭のいい知識人・バカな知識人から、著者自らの学校歴までを俎上に載せ頭脳コンプレックスなるものの諸相を徹底的に検証する。

    [ 目次 ]
    序章 切ないコンプレックス(人はなぜ「頭がよくなりたい」のか;三人寄れば学歴の話 ほか)
    第1章 「頭がいい」とはどういうことか(頭の良し悪しをめぐる行き過ぎた礼節感覚;ホンネにはTPO、タテマエにはガス抜きが必要 ほか)
    第2章 この人を見よ―私自身の場合(Q.ところでおまえは「頭がいい」のか?;あらゆる謙遜は「見栄」である ほか)
    第3章 頭のいい知識人、バカな知識人(頭のいい知識人;もともと頭が悪いことがすぐわかる人 ほか)
    第4章 あきらめと痛みから出発する21世紀の教育論(脳生理学にすがっても「頭はよくならない」;勉強は「汝自身を知る」ためにこそ ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 「頭はよくならない」
    なんて冷たいアプローチだなぁと思ってたけど、読み終わるこれには最高に思いやりのある言葉だとわかりました。
    ちょっと肩の荷が下りました。

  • 序説・第一章まではとても感心しながら読み進められた。語り口も軽く、読みやすいしうなづくことばかりだったので。
    3章は個人名もでてくるし、具体例の上げかた及び説得力がイマイチだったので、逆に筆者の頭のよさポイントが下がってしまった。残念。

    あえて残った文章を引用させていただくなら、
    ・教育場面では「お互いに傷つけあわないように」「全ての人を平等に」という「道徳」の根本論理が存在する
    ・勉強は「汝自身を知る」ためにこそ であり自分の性能を限界内でその性能を腐らせずに存分に生かすところ
    ・知的能力と道徳心はシーソーのような対立命題ではない。勉強が出来て道徳心も人並みにあればそのほうが言いに決まっている。
    「学問の要は活用」にある

  • 本音トークみたいな文章で、読んでいる側が「ここまで書いても平気なの?」と逆に心配してしまうほど。現代の教育論に関しては、正にそのとおりだと思います!

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著者プロフィール

1947年、横浜市生まれ。
批評家、国士舘大学客員教授。
『日本の七大思想家』(幻冬舎)『13人の誤解された思想家』(PHP研究所)、『時の黙示』(學藝書林)、『大人への条件』(ちくま新書)、『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)など著書多数。自身のブログ「ことばの闘い」においても、思想、哲学など幅広く批評活動を展開している。(https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo)

「2019年 『倫理の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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