〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)

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  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896919745

感想・レビュー・書評

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  • 80年代にハリウッドで勃興したニューシネマの作家と作品の背景のハイコンテキストを解説してくれる本。子供の頃に「アメリカでヒットしたから」という理由でなんとなく見た映画(グレムリンやロボコップ、ターミネーター、プラトーン)、あるいは少し大人になってツタヤのカルトムービーコーナーで見た映画(ブレードランナー、ブルーベルベッド、ビデオドローム)などの作品が実はこういう監督によって、こういう文脈で描かれていたのか!ということを、「ポストモダンとはなんぞや?」というテーマを共通に莫大な薀蓄を混ぜながら描いてくれる、なんというか実に教養深い本であり、一度見た映画の感想の再構築にはもってこいの本である。

    圧巻の章はロボコップ、ポール・ヴァーホーベン編。作る作品がどうしてもエログロナンセンスの超問題作となって(でも大ヒット)、全く母国(オランダ)の間尺に合わず、追い出されるようにハリウッドに行ったヴァーホーベンは、"グレートウォリアーズ"という中世ヨーロッパの騎士道物語を見事にエロとグロの地獄に突き落としてしまう。(これを見たスピルバーグは、スターウォーズ3の監督をヴァーホーベンで推薦しようかと思っていたのだが躊躇してしまった)。そんな中でロボット刑事が悪人を退治するという実に三文劇このうえない脚本の映画化の話がヴァーホーベンに来るのだが、「バカにするな!」と脚本を捨ててしまう。だが妻の「読んでから捨てれば?」との一言で一転、この映画の製作を引き受けることになる。結果としてはレーガン政権への皮肉たっぷりな(これは他のニューシネマ系映画にも通底する)、なんとも不気味で小気味よいエンターテイメント作品に仕上がって大ヒット、ヴァーホーベンも一躍ハリウッドの一流監督入りをした。

    とまあ、こんな感じの才能をもった変態がハリウッドにケンカを売って大成していく物語が全八篇ありとても楽しめる。そして、これら跳ねっ返りであったり、ド変態な才人たちを最終的には飲み込んでビジネスにしていってしまうハリウッドと言うプラットフォームの力強さしやたたかさを感じずにはいられない内容となっている。映画をコンテキストで楽しみたい、訳知りで語りたい人にはオススメの本です。

  • タイトルで「ぬぬッ!」となった。

    未来世紀?ブレードランナー?
    これはもしや!!!!

    本屋で手に取って興奮した。
    そう、映画の本だ。
    しかも、観たことのある映画ばかり。

    ビデオドローム
    未来世紀ブラジル
    ターミネーター
    ブレードランナー
    プラトーン
    などなど!

    しかも帯には「映画がわかるってこんなに愉しいことなんだ!」って書かれていて、まさにその通りだった。

    この本はその映画を解説付きで観ているような気分にさせられる。良いとか悪いとかの評論ではなくて、このとき監督はこんなことを考えていたとか、製作に至るまでの背景とか、このシーンはあの映画に影響されているとか、もう興味深いことが詰まっている!!!

    今思い返せば、映画に興味を持ったのは「死霊のはらわた」からだ。初めてあれを観たときはなんてチャッチイ映画だろうと思ったが、おかしなことにまた観たくなるのだ。

    いつしか地を這いずり回るようなカメラの移動方法やテンポが良く飽きさせない演出にくぎ付けになっていた。

    低予算の映画でもこんなに面白いものがあるのか。
    もっと映画を観てみたい。

    父がどこへも連れて行ってくれない休日は、母が映画館に連れて行ってくれた。昔の映画館は、満席でも客を詰め込んで立ち見をさせていた。それでゴジラを観て怖くて泣いて、映画が終われば併設されたドンキホーテでハンバーグを食べて、バスに乗って帰るのだ。

    両親のおかげで休日はいつも楽しみだった。

    それは人生観にも表れていて、どんなに辛い日々が続いてもいつかは楽しい日がくるだろうと思える。子供の頃の休日のように。

    子供ができたら映画館に連れて行ってあげたいものです。

  • ハリウッド映画史にメスを入れたような作品を作り出した監督8人.監督の生い立ちから作品背景,俳優特撮などあっと驚くような事情も含めてユニークで興味深い解説.もう一度作品を見直したくなった.

  • 前作と同じく、作品の解説や制作の裏話にとどまらず、監督の生い立ちや人生を変える出来事、それが作品にどう影響しているのかまで調べつくしている。観て分からなかったシーンの意味も分かり、納得感がある。

    あとがきで「実際に監督本人に会っても、皆自分の作品に人格をさらけ出しているので初めて会った気がしなかった」というのが印象に残った。

  • 町山さんの本に、はずれなし

  • 【ブレードランナー】の解説はいつ読んでも感動的だなあ。

  • 「ブレードランナー」や「未来世紀ブラジル」がタイトルになっているので、SF映画の評論と思っていたのですが、「プラトーン」や「ブルーベルベット」など80年代の様々なカルト映画の評論が書かれています。
    評論というよりもひとつの読み物としてとても、楽しめて冒頭の「ビデオドローム」は非常に面白かったです。
     私も非常に気になっていた「未来世紀ブラジル」のタイトルの意味も知ることができ、一気に読む事ができました。

  • 3連休でやっと読む時間ができた。
    今回紹介されたのは
    デヴィット・クローネンバーグ「ビデオドローム」
    ジョー・ダンテ 「グレムリン」
    ジェームズ・キャメロン「ターミネーター」
    テリー・ギリアム「未来都市ブラジル」
    オリヴァー・ストーン「プラトーン」
    デヴィット・リンチ「ブルーベルベット」
    ポール・ヴァーホーヴェン「ロボコップ」
    リドリー・スコット「ブレードランナー」
    「ビデオドローム」「未来都市ブラジル」は観てなかったけど、80年代の映画だけあって他の映画は観てはいた。
    だけど子供だったから全然意味が分かってなかったし、監督の個人的問題や考えをこれだけ映画に叩き込んでいたとは知らなかった。
    いま日本で流行っている映画は一体何が込められているんだろう。

  • 『80年代ブロックバスター篇』が待ち遠しいです。

  • ターミネーターを見る前に予習。

著者プロフィール

1962年生まれ。映画評論家。1995年に雑誌『映画秘宝』を創刊した後、渡米。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。近著に『トランピストはマスクをしない コロナとデモでカオスのアメリカ現地報告』(文藝春秋)、『映画には「動機」がある「最前線の映画」を読む Vol.2』(集英社インターナショナル)、『最も危険なアメリカ映画』(集英社文庫)、『町山智浩のシネマトーク 怖い映画』『町山智浩の「アメリカ流れ者」』(スモール出版)などがある。

「2021年 『町山智浩のシネマトーク 恋する映画』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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