〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)
- 洋泉社 (2005年12月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896919745
作品紹介・あらすじ
『ブレードランナー』の何が「二つで充分」なのか?『イレイザーヘッド』の赤ん坊の正体はウサギ?『ビデオドローム』の変態テレビ局は実在した?『未来世紀ブラジル』はなぜブラジルなのか?80年代に狂い咲いた映画作家たちの真実。『映画秘宝』連載の「Yesterday Oncemore」に大幅加筆の決定版。
感想・レビュー・書評
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この監督(クローネンバーグやR・スコット他)たちの映画ファンなら裏話盛り沢山で面白いんだろうけど、あまり観てない作品ばっかりだったので、内容が私にはコアすぎた。
でもこの著者の本はただ読むだけでも面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私の愛読雑誌「映画秘宝」に連載されているYesterday Onemoreというコーナーで連載されていた。それに加筆したのが本書。一つの映画作品と監督を深く掘り下げた興味深い内容。何度も読み返したくなる本。
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80年代にハリウッドで勃興したニューシネマの作家と作品の背景のハイコンテキストを解説してくれる本。子供の頃に「アメリカでヒットしたから」という理由でなんとなく見た映画(グレムリンやロボコップ、ターミネーター、プラトーン)、あるいは少し大人になってツタヤのカルトムービーコーナーで見た映画(ブレードランナー、ブルーベルベッド、ビデオドローム)などの作品が実はこういう監督によって、こういう文脈で描かれていたのか!ということを、「ポストモダンとはなんぞや?」というテーマを共通に莫大な薀蓄を混ぜながら描いてくれる、なんというか実に教養深い本であり、一度見た映画の感想の再構築にはもってこいの本である。
圧巻の章はロボコップ、ポール・ヴァーホーベン編。作る作品がどうしてもエログロナンセンスの超問題作となって(でも大ヒット)、全く母国(オランダ)の間尺に合わず、追い出されるようにハリウッドに行ったヴァーホーベンは、"グレートウォリアーズ"という中世ヨーロッパの騎士道物語を見事にエロとグロの地獄に突き落としてしまう。(これを見たスピルバーグは、スターウォーズ3の監督をヴァーホーベンで推薦しようかと思っていたのだが躊躇してしまった)。そんな中でロボット刑事が悪人を退治するという実に三文劇このうえない脚本の映画化の話がヴァーホーベンに来るのだが、「バカにするな!」と脚本を捨ててしまう。だが妻の「読んでから捨てれば?」との一言で一転、この映画の製作を引き受けることになる。結果としてはレーガン政権への皮肉たっぷりな(これは他のニューシネマ系映画にも通底する)、なんとも不気味で小気味よいエンターテイメント作品に仕上がって大ヒット、ヴァーホーベンも一躍ハリウッドの一流監督入りをした。
とまあ、こんな感じの才能をもった変態がハリウッドにケンカを売って大成していく物語が全八篇ありとても楽しめる。そして、これら跳ねっ返りであったり、ド変態な才人たちを最終的には飲み込んでビジネスにしていってしまうハリウッドと言うプラットフォームの力強さしやたたかさを感じずにはいられない内容となっている。映画をコンテキストで楽しみたい、訳知りで語りたい人にはオススメの本です。 -
刺激的で快楽的な読書になる。
あらすじを振り返りながら映画製作の挿話や薀蓄を詰め込んだ読み物。
これを読むこと自体がひとつの娯楽になる、映画評論としてはスタンダードなもの。
ああ。クローネンバーグとリンチを見直したくなったなぁ。 -
町山の映画評論は切れがいい。ちょっと、そこまで知りたくなかった、という裏話的なところまで出てくるが・・・。
「ブレードランナー」ってやっぱりすごい映画。 -
考え方がかわった。監督たちの価値観 に驚きの連続。作品の解説もよかっ た。勉強になった。
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「考え方がかわった。」
日本に住んでる者には判らないコトって一杯あるから、とっても有益な本だと思います。。。「考え方がかわった。」
日本に住んでる者には判らないコトって一杯あるから、とっても有益な本だと思います。。。2013/02/02
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タイトルで「ぬぬッ!」となった。
未来世紀?ブレードランナー?
これはもしや!!!!
本屋で手に取って興奮した。
そう、映画の本だ。
しかも、観たことのある映画ばかり。
ビデオドローム
未来世紀ブラジル
ターミネーター
ブレードランナー
プラトーン
などなど!
しかも帯には「映画がわかるってこんなに愉しいことなんだ!」って書かれていて、まさにその通りだった。
この本はその映画を解説付きで観ているような気分にさせられる。良いとか悪いとかの評論ではなくて、このとき監督はこんなことを考えていたとか、製作に至るまでの背景とか、このシーンはあの映画に影響されているとか、もう興味深いことが詰まっている!!!
今思い返せば、映画に興味を持ったのは「死霊のはらわた」からだ。初めてあれを観たときはなんてチャッチイ映画だろうと思ったが、おかしなことにまた観たくなるのだ。
いつしか地を這いずり回るようなカメラの移動方法やテンポが良く飽きさせない演出にくぎ付けになっていた。
低予算の映画でもこんなに面白いものがあるのか。
もっと映画を観てみたい。
父がどこへも連れて行ってくれない休日は、母が映画館に連れて行ってくれた。昔の映画館は、満席でも客を詰め込んで立ち見をさせていた。それでゴジラを観て怖くて泣いて、映画が終われば併設されたドンキホーテでハンバーグを食べて、バスに乗って帰るのだ。
両親のおかげで休日はいつも楽しみだった。
それは人生観にも表れていて、どんなに辛い日々が続いてもいつかは楽しい日がくるだろうと思える。子供の頃の休日のように。
子供ができたら映画館に連れて行ってあげたいものです。 -
面白すぎて時間を忘れて読み倒しました。
80年代の映画8本について解説した本なのだが、各監督の経歴やインタビューなどを丹念に調べてあり、映画とは別にこの本だけですごく面白い読み物になっている。
半分くらい観たことない映画だったが、まさか『ロボコップ』にそんな背景があったとは驚きでした。デヴィッド・リンチ監督がイケメンで、高校のプロムでキングだったとか、インテリ家庭出身とかのトリビアも面白かった。
町山さんにはこういった本をもっと沢山書いて頂きたいです。 -
ハリウッド映画史にメスを入れたような作品を作り出した監督8人.監督の生い立ちから作品背景,俳優特撮などあっと驚くような事情も含めてユニークで興味深い解説.もう一度作品を見直したくなった.
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作家性が強く、普通に観ているとよくわからない映画をたくさんの文献から読み解く本。
取り上げられた作品の多くは当時から他にないテーマ、新しさ、難解さ、派手な特殊メイク、などで話題になっていて、自分も観ていた映画もあったのですが、この本に書かれていることはさっぱり見当もつかなかった。
ざっくりまとめれば、若く、独創性、表現欲があり、技術も習得していた人が 1980年代アメリカにおける歴史、思想、現在を考え、自由に映画を作れる環境など様々な偶然もあって表現しえた作品群なのかと。
作品の影に隠れている膨大な背景を引き出す著者も相当なものですが、読み終わってのこの暗〜い気持ちはなんなんだろう。
自分もこんなふうに表現に取り憑かれたみたいな若い時間を過ごしたかったですね。