どうぞ、目を上等のリネンのハンカチーフで覆って
閉じていてください。
この秘密が誰にも知られることのないように。
可憐な花達が自ら望んで人間となり、生きていく。
彼女達は最初、誰もが上手くいくと信じて疑わない。
人間は生きていく間に、誰にも困難が待ち受けているというのに。
文字通り蝶よ花よと生きてきた花達に待ち受けるは試練や
苦痛、また悲劇ばかり。
なかには例外もいるけれど、無垢で純真な花達に人間の世界は
汚れすぎている。
愛でて育てられる薔薇さえも愛を与えることを出来ないのは、
やはり愛される立場を享受していたせいなのだろうか。
物語の間に挿入されている花達はどれも艶めかしく悩ましい。
巻末に収録されている花達の話も読んでみたかった。
永遠の愛のしるしである彼女はよく知っていたのです。
人間の世界に、彼女のための居場所などないということを。