ブローチ

著者 :
  • リトル・モア
3.97
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本棚登録 : 1177
感想 : 181
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898151402

作品紹介・あらすじ

小さな祈りを胸にかざる。心を静かに揺さぶる。溜め息と希望の絵物語-。新しい名作の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • だいじなものを探す旅が、そのまま人生の歩みのようにも思われる文章と、トレーシングペーパーに描かれた、芸術性の高い繊細な絵とデザインが合わさった、この絵本は、今を生きている大人の女性に捧げられた作品だと感じました。

    薄いトレーシングペーパーに描かれているので、次のページの絵や文章が透けて見える事で、今のそれと合わさった絵になるような構成は面白いが、実際捲ってみると、文章の真下に重なっていた文章が現れたり、思っていたのと違うデザインだったりと、その意外性は、まるで思い出せそうで思い出せない人間の心象風景のようにも思われますし、よくよく見ると、絵の中に目的のものが見えているのに、そこでは見付けられないところには、人間の不完全さを表しているようにも思われました。

    しかし、不完全であるかどうかは、これまでの数え切れない人生の歩みを否定するわけでも、人生をつまらなくするわけでもなく、これまで色々あったとしても、この先何が起ころうとしても、「今どうしたい気分なの?」といった、シンプルな問いに帰結するようなメッセージも感じられました。

    そして、それ以上に、私が最も印象的だったのは、内田也哉子さんの文章で、途中からの一連の流れは、恵まれているようで何故か生きづらく感じてしまう、その言葉にし難い心情の描き方に、とても共感できるものがあり(最後の言葉よりグサッときた)、それを書きたいのですが、ネタばれを気にする方はご注意下さい(結構、長々と書いてるので)。











    隣のひとが
    笑っている
    「なに、笑ってんの?」
    よせばいいのに むっとする
    そのうち
    何だか おかしくなる
    わけもわからず けたけた からから 伝染する笑い
    時には
    わけがわからないくらいの方が
    いまを味わえるのかもしれない
    なんて
    のんきに思ったり
    そして何だか
    空しくなる
    またか
    誰が何人まわりにいようと
    たったひとりの孤独
    泣いてみたりする
    叫んでみたりも
    沈黙とも勝負する
    溜め息をしすぎたら
    深呼吸になった

  • なんて大胆で、そして繊細な絵本!

    トレーシングペーパーのような薄くて透ける白い紙に、緻密な色鉛筆のイラストが描かれていて、短いセンテンスの文章がぽつんぽつんと散りばめられている。
    言葉が重なり合い、浮かび上がってくる。
    読んでいると、まるで複数の人が朗読をしているような、そんな不思議な感覚になった。
    イラストはどこかさみしそう、でも優しくて好き。

    ぜひ手に取って“感じて”欲しい作品。

    • nejidonさん
      5552さん、コメント欄ではお久しぶりです(^^♪
      私もこの本が大好きなので、レビューを見て嬉しくなってしまいました。
      行きつけの絵本屋...
      5552さん、コメント欄ではお久しぶりです(^^♪
      私もこの本が大好きなので、レビューを見て嬉しくなってしまいました。
      行きつけの絵本屋さんで買ったのですが、その時お店の方に「表紙が
      見えるように飾っておきたい一冊です。」と言われたのを良く覚えていますよ。
      電子書籍では決して真似できない作りで、そこも気にいっています。
      5552さんの「まるで複数の人が朗読をしているような」という感覚、よーく分かります!
      また素敵な本に出会ったら教えてくださいね。
      2019/04/15
    • 5552さん
      nejidonさん、こんにちは。いいね!とコメントありがとうございます(^_^)
      白にゃんこちゃんのお顔が覗くといつも嬉しくなります。
      ...
      nejidonさん、こんにちは。いいね!とコメントありがとうございます(^_^)
      白にゃんこちゃんのお顔が覗くといつも嬉しくなります。

      この絵本は内田也哉子さん目当てで読んだものなんですよ。彼女のお父様の式の時の謝辞が、あまりにも心に響いてしまったので・・・。
      素晴らしい感性と重みのある言葉をお持ちの方なんだなと思いました。
      造本といい、中身といい、大人な絵本ですね。

      「まるで複数の人が~」というのはレビュー読んでる方に伝わりづらいかな、と思っていたので同意していただいて嬉しいです!
      2019/04/15
  • トレーシングペーパーのようなごく薄い紙に、花や蝶などの小さなモチーフのイラストが色鉛筆で丁寧に描かれている。
    紙が薄いので、次のページの絵もうっすら透けて見える仕組み。
    なんてお洒落。これは電子書籍では決して真似できない。
    当然のことながら、そおっとめくっていく。
    文章は、1ページに一行か、せいぜい二行。
    繊細な本のつくりを損なわない、詩のような短い言葉たち。
    でもちゃんとメッセージは伝わってくる。
    宝箱のようなこの本は、つまり丸ごと「ブローチ」のようだ。

    次はどんな絵?と一度目は楽しみにめくって読んだので、二度目は内容に集中して読んだ。
    心が揺れてしまう女性の気持ちを、とても上手く表現していて、終わりに近づくにつれ希望が見える。
    縄跳びがだんだん気球になっていく流れと、終盤の『満ちている今を 忘れてしまわないように』という部分の二枚重ねがそれはそれは素敵。
    タイトルの意味するとことは、読まれた方がそれぞれきっと見つけてくださるかと思う。

    週末に立ち寄る絵本屋さんが、この本のことをこう評していた。
    【表紙が見えるように飾っておきたい一冊ですね。】
    私もそう思います。大人向けの、特に女性向けの本。

    ちょうど、映画【わが母の記】を見終えたばかり。
    樹木希林さんの若かりし頃の役を演じていた内田也哉子さん。豊かな才能をお持ちなのね。

  • ブクログのレビューに興味をそそられて読んでみることに。
    これは、本の形をした芸術品ですね。
    ちょっと不思議な体験ができました。
    電子書籍にはできない作品です。
    次とその次のページが透けて見えるからではなく、そーっと優しくページをめくることが大切だからです。
    図書館で借りたのですが、(10年以上も経っているのに)綺麗なままでした。
    この本を手にした皆さん全員が、丁寧に扱っている姿が目に浮かびます。
    「あるかしら書店」にさりげなく置いてあるに違いないと思ったりして楽しめました。

  • ブクログ本棚で見つけて
    衝動的に借りてしまいました。
    登録者も感想も凄く多い本
    なのに知りませんでした。

    透かしの技法っていうのでしょうか。
    とても綺麗で繊細
    よくできていると思いました。

    でも、「文章」の透かしはどうでしょう。
    私にはメリットは感じられませんでした。

    絵本ってめくるたびに新しい世界が出るのが楽しいでしょう。
    「絵」については透かしに意味があるのでOK。
    でも次のページの「文章」がうっすら見えるって
    何か良いことあるんでしょうか?

    いくつかレビュー読んでみたけど
    「なるほど」と思うものは見当たりませんでした。

    私が未熟なせいでしょうか?

  • 絵がずっと奥まで続いき、透けて見える先のページが、今のページにちゃんと映る。
    今は、未来へ続いていることを、未来は今によって作られていることを示しているよう。繊細な絵本。

  • 薄いスケスケの紙を効果的に使った繊細な絵本。

  • 大人向けの絵本

    イラストが透けて、めくるたびにシーンがどんどん変わっていくのが素敵

    アニメーションみたい

    インテリアとしても素敵

    子供にはまだ触らせられない(笑)

  • 文字で音楽を奏でたかのような絵本。
    音として頭に響いてくる不思議な体験。

    エコーがかったように聞こえたり。
    リフレインがあったり輪唱があったり。

    文字の全部や一部を絵で隠すことで
    ページの前後で異なる意味を含ませたり。

    目を落とす時文節の順番が変わる面白さ。
    楽しい。

  • 透けて見えるページの仕掛けが面白い。

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著者プロフィール

ゲスト/内田 也哉子(ウチダ ヤヤコ):1976年東京都生まれ。樹木希林と内田裕也の一人娘として生まれる。夫は俳優の本木雅弘。三児の母。エッセイ、翻訳、作詞、ナレーションのほか、音楽ユニット〝sigh boat〞としても活動。著書に『新装版 ペーパームービー』(朝日出版社)、『9月1日 母からのバトン』(樹木希林との共著/ポプラ社)、『なんで家族を続けるの?』(中野信子との共著/文春新書)、翻訳書に『たいせつなこと』(フレーベル館)、『点 きみとぼくはここにいる』(講談社)、『うみ』(岩波書店)など。

「2023年 『梅おばあちゃんの贈りもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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