親愛なるキティーたちへ

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著者 : 小林エリカ
  • リトル・モア (2011年6月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898153123

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親愛なるキティーたちへの感想・レビュー・書評

  • 「これから生まれ来るキティーたちに向けて」


     この本は旅をする。2009年の東京から、1945年を経て、1929年のフランクフルトと弘前へと。その旅の途中で訪れる場所と時間は、さまざまに交錯しながら、現在のわたしたちへと繋がっている。
     アーティストである小林エリカの最新刊『親愛なるキティーたちへ』(リトルモア)は、幼い頃から『アンネの日記』を愛読していた作者が、2009年に父・小林司の80才の誕生日に訪れた実家の書庫で、65年前に父がつけていた日記を発見するところから始まる。そこには作者自身も知らない父親の姿、若き日の小林司がいた。
     精神科医でもあり作家・翻訳家でもあった小林司と、アンネ・フランク。父親とアンネがともに1929年の生まれであったことに気づいた小林エリカは、異なる場所で同じ時間を生き、自らの記録を付け続けていたふたりを重ね合わせた。そしてこのふたりの日記に、もうひとつの日記を付け加えることを考える。

    アンネはユダヤ人の少女だった。私の父は日本人の少年だった。  かつて、ユダヤ人たちを虐殺したナチス・ドイツと日本は同盟関係にあった。歴史的な事実を考えると、戦争の中で、彼女は死に追いやられ、彼は間接的に彼女を死に追いやったということになる。  それと同時に、彼女は私が心から尊敬し夢中になったアンネ・フランクであり、彼は愛する私の父小林司だった。(25頁)
     彼女は父の日記とともに、アンネ・フランクの人生をたどる旅に出た————その旅の間に彼女自身が記すことになる白い日記帳を携えて。本書『親愛なるキティーたちへ』は、アンネ・フランクの死と生をたどる記録であり、戦中・戦後に青春時代を過ごした父の姿を探す作業でもあり、そして小林エリカ自身がみずからの生の意味を確認する手記である。と同時に本書は、いかに個人が————読者を含むひとりひとりが————過去と現在を結び、未来への礎としての役割を担っているかを力強く物語る。「異なる時間、異なる場所で、私たちの人生の中の、ある一日は過ぎていく」(112頁)。
     
     小林の旅は、2009年3月30日に始まり、4月15日に終わる。この間に彼女はアンネ・フランクの人生を、死から生へとたどっている。すなわち、アンネの終焉の地であるベルゲン・ベルゼン強制収容所から、アウシュヴィッツ強制収容所、ベステルボルグ強制収容所、アムステルダムの《隠れ家》、フランクフルトのガングホーファー・シュトラーセ24番地、そしてアンネの生まれた場所マールバッハ通り307番地へと。小林がたどった道は逃れようのない死の瞬間から、無限の可能性を秘めた時間へと遡る旅だった。
     ベルゲン・ベルゼン強制収容所を訪れたあと、近くにあるツェレの町に戻ったときのことを、小林はこう記している。

     

    まだ旅は始まったばかりだというのに、はやくも憂鬱。
     コーヒーを甘くして飲む。歯ぎしりしながらパンを囓る。ひたすら飲んで食べる。
     石畳の広場の明るい日差しの中を大勢の人たちが行き過ぎてゆく。
     一体全体、その時代に生きていた人たちは、こんなにも無残に人が殺されてゆくのを、いったい、どうして平気で見過ごすことなんてできたのだろう。けれどどうして、そんな事態を誰一人止めることができなかったのだろう。そこに生きていた人々は野蛮人ではない。学校へ行って、本だって呼んでいた。
     わたしは憤りながら、クリームスープをスプーンですくう。
     学校へ行って、本を読むと、野蛮なんてめではないほど野蛮に、そして残忍で無関心になるのか?
     しかし、今を生きる私は、それと全く同じ問いを後に投げかけられることになるのだろうか?
     この時代に生きていた人たちは、こんなにも無残に人が殺されてゆくのを、いったい、どうして平気で見過... 続きを読む

  • 著者の方、パルコのCMで見たことのあるイラストを描いている人だったんですね。史実を父、アンネ両面から追っていて貴重な試み・記録だと思う。一般市民の生死が関わった第二次世界対戦が舞台なので、深く沈みこみながら読んだ。でも食べることが好きなようで、本人の旅中の食事について細かく書かれていて、気分転換に楽しみながら読めた。

  • 915.6
    父と同じ年に生まれたアンネ・フランクを巡る旅

  • 2013.8.19読了。

    何とも言えない。この余韻に浸りたい。
    「アンネの日記」を読んだのは、あれこれ十数年前。読み返そう。

  • 著者が、アンネと父の日記と共に、アンネを辿る旅にでる。

    小林さんの情景描写が好き。

    THE歴史小説よりもときにぐっとくるフレーズが印象的。
    戦争についてもっと詳しく学び、もう一度読み返したい。

  • 光り、食べもの、花、お喋り、戦争。私に結びつけられている全てのものへ。

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親愛なるキティーたちへの作品紹介

ひとりひとりが、その人生の選択の余地を、握っている。-ユダヤ人の少女、アンネ・フランク13歳。私の父、小林司16歳。戦争という同時代を生きた二人の日記に導かれ、ドイツ、ポーランド、オランダへ。死から生へと向かう、命の感触をもとめた17日間の旅。

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