死んでしまう系のぼくらに

著者 :
  • リトル・モア
3.82
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本棚登録 : 2139
感想 : 147
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  • Amazon.co.jp ・本 (100ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898153895

作品紹介・あらすじ

ネット世代の詩人が綴る、表現の新次元。

現代詩の概念を打ち破るような「詩で遊ぶ」ウェブアプリのリリースや、
twitterやtumblrで作品を発表するなど、ジャンルを軽々と越え、
現代詩の新たな楽しみ方を提示し続けてきた最果タヒ。

3冊目となる待望の新詩集は、
鋭利かつ叙情的な言葉で、剥き出しの感情と誰もが抱える孤独を浮き彫りにする、
書き下ろし含む44篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 第33回現代詩 花椿賞受賞。
    2014年刊。

    とってもひねくれていて、世界とか、人との関係を冷めた目でみているちょっといじわるな詩が多いと思いました。
    言葉通りに全部受け取ると冷めているのに、大火傷をしてしまいそうな詩だと思いました。
    というか、新しい紙きれの端で、指をさっと切ってしまうような、そんな感じです。
    でも、本当はあたたかい心も持っている方だからこういう冷めた詩も書けるかもしれないと思いました。
    この前に拝読した2018年刊の『天国ととてつもない暇』のほうが、私は好きな詩が多かったです。


    「その長い線」
    冬の第三角形のひとつが、そろそろ消えてなくなるらしい。そしたら、
    三角はきっと、冬の長い線として、云い伝えられてしまうんだろう。
    取り消し線をつけた恋は、なかったことになって、夜から朝に移動する。空の溝に捨てられる。都合がいいことばかり言って、愛とかゆめとか恋とか言ってる大人達みたいな顔になる。細い指だからこぼれていく、感情は、具体的な名前を持つ、感想だけに簡略化されて、きみへは友情、きみへは愛情、よくわからないものは無視と、決められていってしまうのね。
    ほんとうはきみはあいつを好きじゃない。
    好きとか嫌いとかない世界で、きみはあいつを好きにはならない。
    楽器の貸し借りと本の貸し借りを、繰り返し行うだけのそれだけの、名前がかわいいあの人、という印象。
    それを50年後まできっと忘れず、ふと未来の友人達に、語りたくなるような思い出。
    それだけの関係。だったはずだ。
    きみは好きじゃない。あいつのことなんて。そしてだからきょう、恋じゃなかったと告げて、かれの顔に線をつける。さよなら、あなたを忘れます。
    愛なんて、恋なんて、ゆめなんて、言わなければきみは、細い針みたいに感情を指先に刺しながら、きみだけの名前をきみ以外の人が、ずっとくちずさむのを聞いていられた。
    殺しちゃったね、またひとりの友人を。

    (さみしさがいつかきみを殺す)



    「絆未満の関係性について」「きえて」「2013年生まれ」「LOVE and PEACE」「さよなら、若い人。」「わたしのこと」もよかったです。

    • まことさん
      やきにくさん。

      やきにくさんが、わからないと思われるのなら、無理にわかろうと思わなくてもいいと思います。
      さしでがましいコメントをし...
      やきにくさん。

      やきにくさんが、わからないと思われるのなら、無理にわかろうと思わなくてもいいと思います。
      さしでがましいコメントをしてごめんなさい。
      でも、わたしは最果タヒさんは言葉で自己表現を楽しんでいるだけとは思いませんでした。
      私は、最初「この人の詩は意地悪だから好きじゃない」と思ってしまいました。
      でも、どの詩集かははっきり思い出せませんが、最果さんの「あとがき」を読むと、この人はちゃんと人の痛みを考えて書いていらっしゃる方なのだということがわかりました。
      でも、無理に「わからない」ものを読まなくても、他にも素敵な書物はたくさんあるので、そちらを読まれたほうがいいかもしれません。
      最初のコメントと違うことを言ってしまってごめんなさい。
      でも、私は最果さんの詩も大好きですよ。
      私も父ですが早くに(父が50代の時)に亡くしています。
      2021/03/18
    • まことさん
      やきにくさん。

      やきにくさんは、私なんかより、きっとずっと深く考えられているのだと思います。
      なんか、エラそうなこと言ってしまってご...
      やきにくさん。

      やきにくさんは、私なんかより、きっとずっと深く考えられているのだと思います。
      なんか、エラそうなこと言ってしまってごめんなさい。
      長田弘さんの詩はきっと、気に入られると思います。
      『詩ふたつ』『奇跡ミラクル』が特に私は好きです。
      『新装版 長田弘詩集』とは別の本ですが。
      2021/03/18
    • まことさん
      やきにくさん。

      そんなことは、ないと思います。
      私はやきにくさんの心の素直さに、最初思わず笑ってしまいましたもの(決して馬鹿にして笑...
      やきにくさん。

      そんなことは、ないと思います。
      私はやきにくさんの心の素直さに、最初思わず笑ってしまいましたもの(決して馬鹿にして笑ったわけではありません。自分も、あの詩集に関しては、わからないと、同じ感想を持ったからです)
      御自分の思った感想は、思ったように書いていいと思いますよ。
      2021/03/18
  • 鋭利で叙情的 儚く美しい表現
    とても強いなにかを持つ人
    そして 息をするように 死 という言葉を使う
    他の言葉でいくらでも表現できる人だろうになぜ 

    「今」の僕の心には ということだけれど
    届かない種類の 鋭利さだった




  • 夢やうつつは冒頭すこし知っていて、それだけでかなり好きだったけれど、詩全体も最後までずっと素敵で大好きだった。
    きえては、はじめの2行が良かった。
    その他にも好きな詩がたくさんあった。
    “絆未満の関係性について” という言葉の語感がすごく好きだった。

    8 夢やうつつ
    16 ぼくの装置
    32 きえて
    7.10.13.15.18.21.37.40.51.63.71.73.86

  • 「わたしをすきなひとが、わたしに関係のないところで、わたしのことをすきなまんまで、わたし以外のだれかにしあわせにしてもらえたらいいのに。わたしのことをすきなまんまで。」

    『わたしはすべてを忘れ、すべてを知って、眠るの
    寝顔が可愛いのは少し死んでいるからよ、
    そうだれかが隣で囁いている』

    『生きているか、死んでいるか。たいして変わりはありません。変わるのは、わたしが土に帰り、家が崩れ、緑だけが残されたとき。二千年後。』

    『私達のこのセンチメンタルな痛みが、疼きが、どうかただの性欲だなんて呼ばれませんように。』

    『軽蔑こそが、私達の栄養。』

    『70億人ふえたって、だれとも肩すらふれあわないから、大勢が死んだニュースに涙すらこぼれない。』

    『私たちが支配したいのは他人の興奮だなんて、どうしてみんな知っているの。』

    『美しい人がいると、ぼくが汚く見えるから、きみにも汚れてほしいと思う感情が、恋だとききました』

    『意味付けるための、名付けるための、言葉を捨てて、無意味で、明瞭ではなく、それでも、その人だけの、その人から生まれた言葉があれば。踊れなくても、歌えなくても、絵が描けなくても、そのまま、ありのまま、伝えられる感情がある。言葉が想像以上に自由で、そして不自由な人のためにあることを、伝えたかった。私の言葉なんて、知らなくてもいいから、あなたの言葉があなたの中にあることを、知ってほしかった。』

  • 何度も死んで、何度も恋をする。
    幾重もの言葉が、静かに沁みる詩集です。
    最期の「あとがき」を読んだあと、これまでの詩が、また違った色合いを帯びるような感覚になる。

  • 最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』を読む
    最果タヒのデビュー時
    彼女を読んだ時より
    判る感
    今あり

    それは
    わたしが若くなったわけでは
    もちろんない
    おそらく
    わたしの中で
    言葉の運動が多くなったからだと考

    吉本隆明は
    年上の言うこと書く事を理解するのはできる
    ただ
    年下の言うこと書く事を理解するには
    三倍の力がいる
    とは誠である

    最果タヒを若い人たちが読んでいる
    わたしも読む
    判りたいと思う
    判らないが好きじゃない
    だからしつこく読む
    とにかく読む
    判るまで読む
    赤本も併用して読む
    最果タヒを徹底的に読む

    そういう覚悟があるわけではないけれど
    判らない
    というのが嫌いなのだ

    けれど
    今不思議だけれど
    以前より
    ずっと最果タヒの詩が判る
    それはわたしにとって
    喜び以外何物でもない
    無理してでも
    理解したい
    たとえ
    実感が伴わなくても
    言葉への思いがつづられた
    「あとがき」を読めば
    作者の言葉への思いが判る
    「あとがき」こそ
    今回の読書において
    大事だった

    そうだよな

    そう思った


    長い詩
    短い詩
    最果タヒは
    「ご立派なことをいうのはもうやめませんか」
    と言っている
    最果タヒは
    「花がきれい、ということをいうのはもうやめませんか」
    と言っている

    最果タヒを読んでいて
    思うことは

    ・できる限り正確な言葉を使いましょう
    ・そうでないなら黙りましょう

    この誠実さ
    言葉への誠実さがきれい

    また随所で出てくる
    『獣』という言葉が気になった
    けれど
    それを理性との反復などと
    「乱暴な言い方はやめませんか」

    最果タヒは言うので
    言えない

    思潮社の『現代詩文庫』シリーズの
    詩人たちはわずかだけれど
    好きだし
    そこには
    自然と思想がたくさんある
    けれど
    最果タヒの詩は
    その自然と思想の外側に出て
    「窮屈です」
    と言う
    そこらへんが
    一番面白い

    判らないものを批判してはいけない
    自分の持っているものがすべて
    だと確信することは危険
    「感動しなかった」で
    済ませてはいけない
    と切に思う

    判らないの向こうに
    荒野がある
    それをわたしは
    高橋源一郎が判らないと思った時
    執念で一年は食べた
    結果
    パッとわかった
    そのあとの言葉の豊饒さ
    広がりほど
    凄いことはなかった
    そういう実感があるから
    今回も食べます

    まだ数冊借りてきている
    もっと食べる
    冬眠前の
    熊の如く

  • 無邪気にはしゃぎ回るまだ無垢で小さな子供達を眺めながら、この子達に自意識というものが確立し、世の中のあらゆる善と悪を知った頃、この時代に生まれた子達は可哀想だ、なんて言葉が聴こえてくる気がして私はよくそんな未来を考えている。
    祖母が死んだ時に生まれた姪。妊娠がわかった日に叔母が癌だと知る。ああもう世界はどうしてこんなにも美しく残酷に、現在を未来を駆けていくの。
    他人は所詮他人事って、それって自分が死のうが生きようが他人事。
    私が死んだ際には菊の花ではなく真っ赤な薔薇を死ぬほど敷き詰めて下さい。私の骨は砕いて桜色にして星の砂の様に小瓶に詰めて貴方だけが持っていて下さい。僕が死んだら臓器なり何なり勝手にどうぞ。
    そんな風に好き勝手に死についてよく考える。それは生について考えることでもある。
    こんなにも悲しみ苦しみを知り、醜くなった私でも、死んだら一番綺麗な星になれるかしら。肉体を失った骨は、白く美しく貴方の目に映りますか。
    ああ、透明な涙が出てきた。涙だけはいつだって澄み切っていて、流れても流れても憎い。
    死ぬのが怖いのは、独りが怖いからかもしれない。
    生きるのが辛いのは、私という心が独りのもので理解されないからかもしれない。
    毎日死ぬほど苦しい想いをしている、ああ死にたい!吐き気が止まらないよ、助けてくれ!月一で大量に身体から流れ出ていく血、なんで生きてられるんだよもういっそ殺してくれ。
    君が車の前に飛び出し、私は必死に生へ連れ戻す。生きてくれ。生きてくれ。死ぬな!!

    「死ぬな、生きろ、都合のいい愛という言葉を使い果たせ。」

  • 水に浮かぶように苦しくて心地よい言葉

    泳げなくなっていたんです。いつの間にか、時が経ち。不自由な私のために言葉はあると、そう話してくれたから、私はその言葉を信じる。そしていつか、私の、言葉も信じる

  • 詩集を読むことはほぼないし、正直同四でいいのかわからなかったけれど、
    普段何も考えずに使っている、ことば、について、
    ツールとしてじゃなくて、ことば自体を、
    感じ直すというか、

    不思議と落ち着いた。

  • こんな物騒なタイトルの詩集が若い人たちのバイブルなのかとの心配もタヒさん特有のボクやキミに寄り添う親和性の高い言葉たちがそれはちがうよと教えてくれる。
    そうそれはどうせいつかは死んでしまうのだから一所懸命に生きなさい、一所懸命に愛しなさい、それが出来る今は今しかないのだから…との応援のメッセージ。
    残念ながら死んでしまう系ファイナルラウンドのおっさんのくたびれた肌はヒリヒリとはならなかったがこんな素敵な言葉を今受け取れる世代を羨ましく思ってみたりする。
    人生あっという間だぞ、いのち短し恋せよ乙女

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著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
詩人。一九八六年生まれ。二〇〇六年、現代詩手帖賞受賞。二〇〇八年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。二〇一五年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(二〇一七年、石井裕也監督により映画化)『恋人たちはせーので光る』『夜景座生まれ』など。作詞提供もおこなう。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では一〇〇首の現代語訳をし、翌年、案内エッセイ『百人一首という感情』刊行。エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞【←無限大記号、寝かす】』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、絵本に『ここは』(絵・及川賢治)、対談集に『ことばの恐竜』。

「2021年 『神様の友達の友達の友達はぼく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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