東京の沖縄人: インタビュ-:「東京」で暮らし「沖縄」を思う若きウチナ-ンチュたち
- ボーダーインク (2003年3月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784899820376
作品紹介・あらすじ
16人の「普通の沖縄人」が語った東京での暮らし、仕事、そして沖縄への想い。
感想・レビュー・書評
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東京で仕事をしていたのはもう6年以上も前だけど、僕は今でもあの頃住んでいたアパートの住所をそらで言える。それが普通なのかも知れないけど、僕にとってはそれだけあの街の印象が強烈だった証拠だ。
東京はやっぱり昔から地方人の憧れの場所だ。なんだかよくわからないけど、東京に行けば何かがあるはず。そんな思いを抱いて、とにかに何かを求めて、上京していく若者は数知れない。
<もしかしたら帰らないかも。でも好きだよ、沖縄は。>(本書帯より)
『東京の沖縄人』は、そんな東京で暮らす県出身の若者たち16人へのインタビュー集だ。1993年から2000年まで雑誌「wander」に掲載された連載をまとめたもの(雑誌掲載時には17人にインタビューしたそうだが、本書では都合上16名のインタビューを収録している)。そこで語っているのは、デザイナーを目指していたり、ミュージシャンを目指していたり、水商売で才能を発揮していたり、目的を見失ってブラブラしていたり、そんな名もない男女だ。
有名になった芸能人とか大成功を収めた経営者とかではなく、本当にそこらへんにいそうな普通の人たちへ取材しているので、彼らの等身大の声が直に伝わってくる。
その言葉1つ1つがとりとめもなくて、確固たるものがなくて、不安定だ。それは彼らがそれこそ「ただの人」であるためだろう。著名人のインタビューのように、読んでいて何か確固たる思想が学べるとか、ためになるとか、そういう類のものではない。
そこに吐露されているのはむき出しの「想い」だ。それぞれ依って立つ場所や背負っていく何かがあったりしてそれは本当に様々なんだけど、共通するのは沖縄に対する何らかの強い想い。
沖縄が好きだとは限らない。思うところがあって故郷を飛び出した人もいる。でも根底になにか特別な想いを持っている。本書中である人物が語る、次の言葉が端的にその心情を表しているのかも知れない。
<俺ね、沖縄のこととか自分のこととか考えてるとどうすればいいのかわからなくなって、すごくフラストレーションが爆発することがあるんですよ。なにをどうしたらいいのかわからなくなることがあるんです。>(p79)
本書の表紙のイラストも手掛けた金城勇二という人物の言葉だ。思うところはたくさんあるのだろう。でもその感情が自分でも表現できない。そんなもどかしさを彼はイラストで表現した。
この本が面白いところは、一度取材した対象を2001年から2002年にかけて再取材している点だ。こういうインタビューものでは、取材対象のその後が激しく気になったりするものだけど、やっぱり著者もそうだったらしくて、彼らのその後を追いかけている。
その結果がまた興味深い。あんなに熱く夢を語っていたのに、数年後には全然違う仕事についていたり、うまくいかないままくすぶり続けていたり、思わぬ運命に翻弄されていたり…。同胞として共感できる部分もできない部分もあったりする。一人だけ「その後」が掲載されていない女性がいるが、それはそれである種の物語があったんだろうなと思わせる。
それも含め、彼らの姿はもしかしたら読者自身の姿であったかも知れない。もしかしたら僕自身の物語だったのかも知れない。
読んでいて気になったのは、やはり女性の場合、結婚という事が人生を考える上で大きな意味を持っているのだなという事。まあ男だってそうなんだけど、女の人の場合は特にそうだ。印象的なことに、本書では皆、沖縄を出た経緯や将来の夢など率直に語っているが、多くの人が「いつかは沖縄に帰りたい」と語っている。そしていつか帰る場所としての沖縄があった上で県外の人と結婚を決断するという事の意味。それは我々男には想像できないような葛藤があるだろう。
著者は語る。
<東京に来たウチナーンチュの多くは、沖縄は「いつか帰るべき場所」、「将来落ち着く場所」だという。それは、男でも女でも、沖縄が嫌いで出てきた人も、好きだけど一度は東京で生活してみたかったという人にも共通している。(中略)現実ではなかなかそうはいかない。いちいち出身を確認してから恋愛するわけじゃないんだから。こっちの人と結婚したとき、特に女の子の場合は沖縄に帰ることを半ばあきらめざるをえないようだ。>(p145)
いろんな形での沖縄愛がある。情報社会が発達した今、具体的に出身の土地にこだわる事に意味があるだろうか。沖縄の場合はあるのだろう。何しろ5年に1度世界中から出身者が大挙して「里帰り」してくる島なのだから。
本書のどこにもルビは振られていないんだけど、版元の公式サイトによるとタイトルは『東京の沖縄人(ウチナーンチュ)』と読むらしい。
こんな時代だからこそ、“東京の沖縄人”(トーキョー・オキナワン)はますます複雑な想いを抱いているだろう。本書が出版されてから既に10年近く。ずいぶん日本も東京も変わっている。2012年版『東京の沖縄人』も読んでみたい。きっとたくさんの若者がたくさんの物語を今も紡いでいる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮古島へ行った帰りに空港で買った本。
過去
沖縄本島へ1度 離島へ1度行って沖縄の魅力にとりつかれ
住み着きたいとまで思ったけど
沖縄で生まれ育った人はどうなんだろうっていう興味本位で購入。
様々な沖縄出身の人の話をインタビュー形式で。