心ふさがれて

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制作 : Marie NDiaye  笠間 直穂子 
  • インスクリプト (2008年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784900997202

心ふさがれての感想・レビュー・書評

  • 彼女は一体、何を孕んでいたのだろう。

    マリー・ンディアイ は大好きな作家。

  • めちゃめちゃ不穏な話。テレビを持たず見ない主人公ナディアとアンジュの中年の夫妻は何が起こっているのか、知らない。自分達が疎外され攻撃されているわけはずっとわからないままだ。教えてくれるひとに聞く耳を持たないから。自分の知りたくない真実に全く耳を傾けないナディアに苛立ちを覚えた。テレビを見ないんですか?って何人にも聞かれる。なのに私たちはテレビなんて見ないんですとか居丈高に言う。ニュースも見ない、新聞も読まない、ラジオは音楽しか聞かない。あちこちに疎外されるワケのようなものはヒントのようにちりばめられている。ナディアは自分が正しいと思い込んでいるのでそれもどこまで真実なのか分からないけれど。なぜ人々にとって悪者になっていったのか? ナディアが待っていても路面電車は止まってくれないし、電車も途中までしか乗せてくれない状況へ陥る。お腹は妊娠しているかのように膨らんで、体は重くなる。最終的にたどり着いた場所は多分死後の世界に近いところではないかと思った。そこは良い場所なのか悪い場所なのかは分からないけれど。

  • どんどん追い込まれていくようでいて読んでいて体調が悪くなりそうな圧迫感。それなのに終わった後は奇妙な解放感。癒しさえある。
    自分の中の「決まり事」を大事にしてきた(し過ぎてしまった?)どこにでもいる女性の、憑き物(孕んだもの?)が体の外へ出て行くまでの物語。悪夢のような、魔女の出てくるお伽話のような、でも現実に自分の身にもいかにも起こりそうだと感じさせる文章。

  • 悪意。ホロコースト。善意の押しつけ。ハリー・ポッター。ガルシア・マルケス。剥き出しの「私」。「私」の中に巣食う異物。胎児。自意識。

    ある日、悪意のただ中に放り出される恐怖。ある日、世界に生み出されてしまう恐怖。選べない。選ぶ権利は与えられてはいない。他者によって意味付けられる、不安定な私の「性」。でも、それを「暴力」と言い切ってしまえるほど、「暮らし」や「生きていくこと」って、それほど単純なものじゃないとも思う。よくわからない。自分を自分で定義なんてできない。知りたくもないと思う。わからないままに世間に投げ出されて、耐えてみたり、悲しんでみたり、そしていつの間にか、気づく。嵐は過ぎ去っていってしまったということに。

    <嫌悪描写>
    P27 あなた方はほかとは違うのです、根底から...釣り合いが取れていないのです、それをご自分では理解していらっしゃらないか、それとも、もしかしたら、知らずにいようとされているのかもしれない(中略)...あなた方のお顔には見ていて我慢できない部分があって...ほかの人にはまったくないものがあって...実際、吐き気がするようなものなんです、私は感じませんよ、ええ、いまはまだ、でも......そのうちにそうなるかもしれません、周りの言い分に、ひっそりと迫ってくる空気に抵抗できるかどうか.......

    <ノジェを毛嫌いする理由>
    P44 退職後の生活が強いる耐えがたい無為、アンジュと私にとって事実上、唯一の生き甲斐である仕事から公的に引き離されて長い陰鬱な暮らしを送ること、これがつまり私たちの唾棄するものであり、私たちがかくも貪欲に彼を忌み嫌う理由なのだ。追放された者、これこそが彼の正体、それを自覚していればこそ私たちの温情や共感にあずかろうと躍起になる。そんなに乞い求めてどうする。働かぬ者に、もはや生きる価値はない。

    <主人公「私」の容姿>
    P69 シャワーを浴び、黒いセーターとズボンを身につけ(私は太っているので黒い服を着る)、赤毛に染めた短い髪を整え、潰れた眼鏡をなんとかおおむね元どおりに戻す。

    <学校を出て>
    P80 眼鏡のレンズが曇るので、なにもかもがふんわりと、遠くにあるように見える。そのせいだろうか、私は最初、自分がどれだけ孤立しているか気づかない。自分の周囲一帯を取りかこむ無人の空間がどれだけ広々としているか気づかない、それはまるで、と私はずっと後になって思う、私が手にしているのは鞄ではなくピンを抜いた手榴弾だったとでもいうほどなのだ。

    P86 しかし、これに加えて、おわかりでしょう、もしやとお思いでしょう......あなたの顔、あなたの顔が醸し出すもの......

    TV(メディア)の拒絶。

    ............................................

  • 新潮2009年1月号書評より

  • 装幀:間村俊一/表紙写真:湊千尋
    中身:(Proust+Kafka)÷2

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