人間はなぜ歌うのか? −−人類の進化における「うた」の起源

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制作 : 森田 稔 
  • アルク出版 (2017年4月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901213592

人間はなぜ歌うのか? −−人類の進化における「うた」の起源の感想・レビュー・書評

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  • どなたかがSNSで本書をシェアされていたのに興味を惹かれて早速購入した。
    かなり斬新な説を提唱している部分もあるが、良い本だ。
    私はポリフォニーというとついつい、バッハ的な「対位法」とごっちゃにしてしまう傾向があった。本書はまずポリフォニーの再定義をうながす。
    ひとつの(一人の歌唱による)旋律に、打楽器の伴奏がついているような場合も厳密にはポリフォニー(多声音楽)と呼べるのではないかという気がするが、本書では打楽器などはさておいて、あくまで人間の歌による、「声楽」ポリフォニーを基本的に論じている。その上で、グレゴリオ聖歌のようなユニゾンでの歌唱もポリフォニーと分類する。これは音楽的にはポリフォニーだが、社会的にはポリフォニーであると。なるほど。更に、ドローンやオスティナートの利用も当然ポリフォニーに属する。
    一般常識として、人間世界にはまずモノフォニーがあった。そこから、より高度になって、ポリフォニーへと発展した。とするのが、普通である。しかし本書では逆である。まず最初に人類にはポリフォニーがあって、モノフォニーは後から出てきた、とするのである。
    たしかにピグミーの対位法的な歌唱を聴くとそれはなかなかに複雑なポリフォニーであるし、ほかにも世界各地には、ポリフォニックに高度な集団歌唱の例がたくさん存在するらしい。
    びっくりするのは、本書中頃で人類の進化論のど真ん中に声楽ポリフォニーをもってくる奇説を著者が堂々と提唱してくるところだ。
    樹上の比較的安全な場所から地上に降り立った人類は、地上に棲む種としてはあまりにもひ弱であるが、そこで息をひそめるのではなく、むしろ大勢で歌を歌うことにより、猛獣のような敵を威嚇し、かつ、戦闘の際には合唱による集団的トランス状態で能力を高めたというのだ。
    この仮説には、よく読むと証拠がまるで無いので、まあ「話半分に」受け止めるしかないのだが、なんとなく信憑性がるように思えてくるのは、本書の不思議な力である。
    話半分と受け止めるにしても、唱和する=音楽することによる集団的自己の高揚した結合、トランス状態が見られることは確かなので、その点は音楽の社会的効用の重要な点として再認識させてくれる。
    また、興味深いのは、言語と音楽との関係である。著者は歌唱が先にあって、言語による発話が後から来た、と推定している。
    アフリカや南米などでは口笛、トーキングドラムのようなものを用い、「主に音高によって」離れた場所で会話が行われるという。これは楽音的なものが、完全にシニフィエを有する言語記号として機能している例であろう。
    たとえば単一音符で長2度をメインにこまかく上がったり下がったりする日本語のあり方が、そのまま日本的な「歌」の傾向に直結していることを、私は以前から気にしていた。これに対し、4度くらいでおおきく上がったり下がったりする中国語パロールに対応した中国の旋律も、そのように上下がはげしい。
    したがって、音楽と言語のあいだに極めて密接な関係があることは確かなのである。
    本書は、やや突飛な進化論の部分はそのまますぐに信じることは出来なくても、音楽そのもののもつ集団性=社会性への結びつき、そして音楽と言語との密接な結びつきについて改めて呈示してくれることによって、「音楽」についての私の考え方を転換してくれた。とても有意味な読書体験だった。

  • 人類の歌唱の起源はモノフォニーではなくポリフォニーであるという主張を起点に、歌唱と人類の進化や繁栄とのつながりを喝破する。
    中盤からは歌唱のみならず人類はなぜそうなったのかについて広く説明され、意外だが腑に落ちる内容であった。

  • 集団の歌と踊り、リズム、それによる戦闘的トランス状態、と言われると真っ先に思い出すのがラグビーのハカ。なるほど確かに、と感覚的に思える部分と、学術的な根拠と、非常に面白かった。

  • 世界で最も孤立したポリフォニーの伝統は、東アジア、つまり日本列島の先住民族であるアイヌのあいだに存在する。

    と言うパワーワードを見た

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人間はなぜ歌うのか? −−人類の進化における「うた」の起源の作品紹介

音楽と言語の起源を探る挑戦的仮説。

人間はなぜ歌うのか? −−人類の進化における「うた」の起源はこんな本です

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