エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901234337

感想・レビュー・書評

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  • 1.超優良企業とはなにか?を考えたくて読みました。

    2.超優良企業には8つの特徴があります。
    ①行動の重視
    ②顧客に密着する
    ③自主性と企業家精神
    ④人を通じての生産性向上(ここオモロい)
    ⑤価値観に基づく実践
    ⑥基軸から離れない
    ⑦単純な組織、小さな本社
    ⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ
    これらが備わっていることを前提に日々の仕事をしております。そして、この条件をふまえ、超優良企業とは、新製品を生み出して利益を稼ぎ続けることに加え、あらゆる変化に対応できる器用さも兼ね備えてる企業のことを言います。
    本書ではこのような特徴ある企業の成功・失敗について述べられています。

    3.合理主義だけでは人はついていかないと最近感じることが多くなりました。とにかく効率を!という考えだけでは人は動かない。なぜならば、効率を上げることで自分の仕事が減っていくからです。そうなれば、自分の役割が減ってしまい、存在価値がなくなってしまうことを恐れるからです。「それなら自分で努力しろよ」とわたしは思ってしまうのですが、人間の現状維持バイアスが出てしまい、「いやーめんどくさいから」と切ってしまいます。
    いかに現状維持バイアスを打破できるか、1日にどれだけ違うことに取り組んで実践できて成功と失敗を繰り返せるのか、これに尽きると思いました。

  • 物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
    東大OPACには登録されていません。

    貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
    返却:物性研図書室へ返却してください

  • エクセレント・カンパニー

    ■超一流企業でやっている事の一般化
    ①行動の重視

    ②顧客に密着する
    ③自主性と起業家精神
    ④人を通じての生産性向上
    ⑤価値観に基づく実践
    ⑥基軸から離れない
    ⑦単純な組織・小さな本社
    ⑧厳しさと穏やかさの両面を同時に持つ

    ■まずは何より「実行」
    ・自主性を持って考えて、実践する。

    ■価値観を変えていく力
    ・新しい価値観を獲得できた企業が生き残り、それが出来ない企業は淘汰
    ・環境の変化とともに、価値観を変えていく力が必要
    ・ビンから出られないハチにならない。ハエになって色々試す
    ・戦後の一時期うまくいったからと言って日本的経営にしがみついている姿は、知恵と成功体験を持つ八の群れ
    ・心のリセット

    ■オープン化
    ・ITとグローバル化による時間と場所の制約がなくなる。
    ・自前主義にこだわらず、ハードやソフトを社外からオープンイノベーションする

    ■日本企業の弱点
    ・簡単な合意ですむように、すでに取引実績のある相手とビジネスをしたがる。
    ・欧米・米国企業は自らが必要とするものを最も安価に提供してくれる企業であれば、どこの国でも構わないという判断基準
    ・初めての相手と意思疎通し、明確で断固としたコミュニケーションの力がないと、オープンソース方式の生産はマネージ出来ない

  • ページ数がものすごい量だが、読ませてくれる。名著というのもうなずける。何度でも読み直したい。

  • ○重要となるのは、小数のどうしようもないのろまでもなければ、ひとにぎりのやり手でもない。むしろ、ごく普通の人々に気を配り、彼らをのびのびと働かせることだ。
    ○燃えるような仕事への情熱を示す従業員の秘密を解くことはできない。
    ○人間がほんとうに怖れるのは、生体として消滅していくことではなく、むしろ、無価値なものとして、他人に忘れ去られる形で社会から消滅していくことである。……
    ○「全体の能率」を求める流派の人は、心をひとつにして働く人々からなる小集団に敗れる。
    ○分厚い 規則書 に基づいて動くのではなく、みなが自発的に力をつくすのがいい。
    ○古い習慣は一朝一夕に変えられるものではない。
    ○生産性に対して主要な意味を持つのは労働条件それ自体ではなく、 労働者に対する経営者の配慮なのだ
    ○経営者たちは(たとえば、ドラッカーのような啓蒙的)、 専門家の大部分が報告するように、計画、組織づくり、動機づけ、管理、といった〝重要事項〟に多くの時間を優先的にあてることをしていない。逆に時間は分断され、ひとつの案件に費やされる時間の平均は九分間だという。
    ○要するに、組織を構成する一人一人の人間がいまでも重要なのだ、といういわばあたりまえのことを私たちは見出したのである。一人一人の男女社員の限界(情報処理能力の)と力( 献身度 と熱意から湧き出る)をとことんきわめた組織を作り上げること、これが超優良企業と言われる組織の強さの根源なのだ。
    ○技術の確立、つまり、新しい筋肉を鍛え、古い癖をかなぐり捨て、いままでの習慣になかった新しいものに習熟していくことはむずかしい。
    ○ひとに対する配慮なくして良い機構などというものは考えられないし、逆もまた真なのである。
    ○項目とは、機構(structure)、戦略(strategy)、ひと(people)、経営の型(management style)、体系と手順(systems & procedures)、指標となる理念(guiding principles)、および企業文化とも言うべき共通の価値観(shared values)、最後に現有する(または望ましい) 企業の強さ、あるいは技術(present and hoped for corporate strengths or skills) の七つである。
    ○1 行動の重視  どんどんやれ、というのである。こうした企業の多くでは、行動指針が「やってみよ!だめなら直せ!試してみよ!」なのである。とくに印象的なのは、超優良企業がまことにさまざまな具体的工夫をこらしてフットワークの軽さを保ち、巨大さにどうしても伴いがちな鈍さに かたくなに 対抗しようとしていることである。
    2 顧客に密着する  超優良企業は、お得意様から学ぶ。革新的企業の多くが製品アイデアの最良のものを顧客から得ている。つねに、熱心に耳を傾けていることによって、はじめて可能になることである。
    3 自主性と企業家精神  革新的な企業は、社内に大勢のリーダーと創意ある社員をかかえており、それは、私たちが「チャンピオン」と呼ぶ人々の巣箱である。
    4  ひと を通じての生産性向上  超優良企業は、ごく末端にいる一般社員を、品質および生産性向上の源泉 のように扱っている。
    5 価値観に基づく実践 トーマス・ワトソン・ジュニアは、「組織体の持つべき基本的考え方(フィロソフィー) は、技術力、資金力、組織構造、新製品の導入、タイミングといったことより、はるかに強く企業業績とつながっている」と言う。
    6 基軸から離れない 多少の例外はあるものの、自分たちが熟知している業種にある程度固執する企業の方が、卓越した業績をあげていることが多い。
    7 単純な組織・小さな本社 管理階層が薄く、本社管理部門が小さいのである。
    8 厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ  超優良企業は中央集権と権力分散(分権) の両面をかね備えている。
    ○超優良企業は、ひととの密接なかかわりあいを実践する。
    ○基本というのは、迅速な行動、顧客サービス、実用的な新しいアイデア、そしてほぼ全員が一丸とならなければこれらをひとつでも達成することは不可能、という事実なのである。
    ○基本を身につけ、超優良企業たりうるレベルにまで基本を徹底させ、磨き上げていくのは、たんに頭の中で「画期的戦略」など組み立てあげるよりは、はるかにむずかしい。
    ○結果について話をしていると、かならず出てくる質問がいくつかある。第一に、自分が個人的に知っていることに基づいて、私たちに〈各論で〉反論してくる人がしばしばいる。事実として、これらの企業は長いあいだ、立派な業績をあげてきた……私たちにはそれで十分なのである。
    第二に、革新的な体質を持っていると私たちが判定した企業が、このさきもそうであるだろうとなぜわかる?と尋ねられる。
    第三に、はじめの予定になかった企業、および当初の「超優良」の定義にあわない例を追加したのはなぜか(読者はまもなくおわかりになるはずだが)ということを聞かれる。
    黄色のハイライト | 位置: 808
    ○残念ながら、私たちもまた超優良企業には例外なく一人あるいは二人の強力な指導者がいて、その会社を超優良企業とするそもそもの原動力になっているという結論に達したのである。
    ○企業のトップの役割は組織の価値観を管理していくことなのではないか、ということである。
    ○プランを実行する者がプランを作らなければ駄目だ
    ○管理部の連中は、マイナスの面だけ見、かつ指摘している方が自分たちの保身のためには安全なのである。こうしたつけ焼刃の才覚のかげに隠れて、総合的な経営能力の欠陥が見えなくなってしまう。こうした人々は、手を汚さなければならないときに逃げ場を求めたり、収益をあげ問題を処理し組織を前進させる責任を任せられると、つまり、本当に経営を任せられると、みじめに失敗するのである。  
    ○経営者は製品を愛さなくなった。むしろ失敗してくれなければいいが、とつねに被害者意識でモノを見るようになった。
    ○生産性の問題は日本人の神秘などということでなく、普通の人間の問題……つまり経営の根幹にあるのは、忠誠心、効果的な訓練から生ずるやる気、会社の成功を自分のものとする一体感、そしてもっと単純に、労働者対管理者の人間関係──なのだ。
    ○意思決定などの経営計画のモデルづくりをやるテクノクラートは、その複雑に入り組んだ図を提示することによって、いかにも有用性がありそうに見せることができる。うなずいている現場の責任者たちは、内容がわからないので、その複雑さに感銘を受けているにすぎない。
    ○ひとつには、 数値的・分析的なやり方は本来保守的な傾きを持っている、 ということである。たとえば、 定量化しやすいコスト削減がなににもまして優先され、 不確実さを伴う売上げ高増大はあとまわしにされる。経営における意思決定を分析的にやろうという考え方に内在している本質的弱点は、どうしても分析しやすいところから分析し、それにばかり時間をかけて、他を軽視しがちだということである。分析的方法ばかりを無制限に追究すれば、人間味のない抽象的な考え方に行きつく。
    ○自分の仕事は椅子にすわって決断することだと信じているような経営トップは、新しいアイデアに対して、かならず拒否権を行使する。なぜなら、新しいアイデアというものは、通常『非実用的』であることが多いからである。
    ○元来、否定の主張を展開する方が肯定の主張よりやりやすい。
    ○今日のいわゆる「 合理主義」 は実験精神を評価せず、 誤りを犯すことを極端に恐れる。合理主義的な考え方は、〝 価値観〟というものがいかに重要かを忘れさせる。
    ○決定者、すなわち物事を決めていかねばならぬ人のイメージとしては、システム・アナリスト、エンジニア、MBA(経営学修士)、統計専門家、〝プロ〟の経営者などが入る。とっつきにくい連中である。
    ○実践型の職業としては、他人といっしょに働くことに興味を示す人種が多い。心理学者、セールスマン、教師、ソーシャル・ワーカー、そして日本の経営者の大半。
    ○開拓者型の職業としては、詩人、画家、企業家、個性の強い指導者などが数えられる。  
    ○1)人間はみな自己中心的に考えており、少しのほめ言葉で有頂天になり、自分を成功者と考えたがるのが普通だ。
    2)空想と映像をつかさどるわれわれの右脳は、合理的・演繹的思考をつかさどる左脳にけっして劣らぬほど重要である。
    3)情報処理機としての人間は、欠陥とすばらしい力とを合わせ持つ。
    4)人間は環境によって作られる。人間は外的な「ほうび」と「罰」に対してひじょうに敏感に反応する。
    5)人間は言語化された信念が重要であるかのようにふるまうが、言葉よりも行為の方がより鮮明に真実を語る、ということを知っている。
    6)人間は人生の意義を見出さねば生きていられない。だから、その意味を与えてくれる体制のためには大きな自己犠牲をもいとわない。
    ○私たちはみな自分がなんらかの形でトップだと思っている。自分のこととなれば「合理」などそっちのけで自信満々なのである。
    ○きつい言葉は人を萎縮させてしまう。
    ○私たちが研究の中でひじょうに強く感じとったメッセージというのは、「人間は自分を成功者と考えたいのだ」ということだった。
    ○失敗者のレッテルを貼れば、その男はかならず失敗者として行動しはじめる。
    ○心理学者の興味をひく責任所在の誤りというのは、私たちが、とかく成功は自分のものとし、失敗は組織や制度のせいにしがちであるということを指摘する。  
    ○動機づけのうちいちばん重要なのはたんに、自分はうまくやっているという自覚なのだという。
    ○人間は勝つ側につきたいと心から願い(「優越感を求め」)、小さなグループがうまく機能し、友情が得られるときには生き生きとし(「孤立を嫌い」)、少なくとも自分の運命の一部だけでも自分で左右したいと願う(「無力さを恐れる」)存在である。  
    ○1)われわれは先例や過去のことにあまり注意を払わない。
    2)ふたつのことが、たとえ漠然とにせよ、同時に発現すると、われわれはとかくこの二例だけでなんらかの因果関係を求めようと思考を飛躍させがちである。
    3)われわれは、統計上の母数の大きさに関しては、まったくいい加減な側面を持っている。
    ○人間が直感に基づいて推論してしまうことは、何千という実験データが証明している。
    われわれは無数のこまごまとした情報の洪水をかきわけて進む方法を身につける必要がある。それが、 発見的解決法 ──もっとやさしく言ってしまえば、連想類推、隠喩、そのほか以前役に立ってくれたさまざまな 方法 ──なのである。
    ○短期的に確実に記憶しておけるデータは、最大でも六つから七つ、というのである。
    ○どのような分野であっても、ほんとうに プロ と呼びうる人は、何年もの教育や実地の経験を通じて、パターンを豊富に蓄えてきた人々なのだ。ベテランの医師、画家、熟練機械工といった人々は、みな豊かな「ボキャブラリー」を持っている。現在サイモンは、この特殊な経験に基づくパターン言語のことを(いつか見た)「旧友(オールド・フレンズ)」と呼んでいる。経験豊富な管理職は、直感において優れている。(旧友) パターンの蓄積によって、そのとき良い方に向いているか悪い方に向いているかを即座に判断できるのである。
    ○マイナスの強化がもたらす行動の変化は、思ってもみなかった望ましからぬ方向へ向かうことが多いが、プラスの強化がもたらす行動の変化は、ふつう意図したとおりの方向へ向かうというのである。スキナーも言うように、マイナスの強化を繰り返すことは、戦術としても拙劣で、その効果は薄いのである。
    ○あらゆる研究・開発は、本来リスクを伴うものだ。だから、なんらかの成功を願うなら、試行錯誤を繰り返すしかない。経営陣の第一の役目は、多くの試行錯誤を引き出すことである。それがよい試みで、それからなにか学ぶものが得られるならば、たとえ最後は失敗に終わったとしてもほめてやるべきだ、というのである。
    ○プラスの方向への動機づけは、流れに逆らわないで、むしろ自然に人の心の流れのままにいく方法なのである。
    ○プラスの強化を演出する際に重要なのは、定量化に重点をおくよりも、その方法がなるべく具体的であることが好ましい、と述べている。第一に、それは 具体的 で、なるべく中味のある多くの情報を含んだものでなければならない。第二に、プラスの動機づけの強化は、タイミングが重要である。第三に、「フィードバック」・システムは、 達成可能性 を考慮したものでなければならない。第四に、フィードバックのかなりの部分は、トップ・マネジメントからの さりげない 関心──それだからこそ意義のある──という形をとるべきである。
    最後に、定期的・定形的な強化は、予想がつくようになるのでインパクトを次第に失う、とスキナーは主張する。
    ○人間は絶対的な基準によってでなく、自分を他人と比較することによって自分の業績を評価しようとする傾向がひじょうに強い、という。
    ○簡単に言えば、人間がある仕事に本気で取り組むためには、それが本質的にやる価値のあるものだとその人間が思いこむことが必要である、というのである。
    ○ひとつは態度(信念、方針、声明) が行為に先行する──「言ってからする」──という説である。もうひとつの説は──こちらの方が優勢なようだが──その逆、すなわち「してから言う」というものである。
    ○いわゆる「訪問調査」でも、あることに本気でコミットしてもらうためには、小さな行為を順次積み上げてエスカレートしていくことが重要であることが知られている。
    ○「行動していること」(実験と試行を繰り返す)ことによって、効果的ですばやい学習、適応、拡散が行なわれ、意欲と責任感が生まれる。
    ○ひと言で言えば、リーダーは行動に「意味」をみつけだす人、 意味づけをする人 なのである。
    ○人々の意味づけに対する欲求はひじょうに強く、大部分の人々は、意味を与えてくれる組織には自分の自由をかなりの程度奪われてもいい。
    ○多くの人にとって意味を与えてくれるような体質とは、他の人たちにとっては、逆にじつに受け入れがたい、けむたいものとなることが多いのである。
    ○業績の優れた会社の強味である構造と体質そのものにも多少は欠点があるのではないか?第一に、それら会社の因習が強力すぎるために、大きな環境の変化があった場合に、盲点が生ずるのではないかという恐れである。
    ○強い信念を通じて意味づけを与えようとする立場の人々が、ともすれば安易に権力を行使しがちだということである。
    ○「権威をその発生源とする行為に 内的 コントロールを与えるという点において、人間の文化は無力でしかない」というものであった。  
    ○自分がどれほど巨大なバックアップ・システムに支えられているかに気づいていなかった。
    ○意味づけとそれに伴う安心感を与えてくれる組織に、われわれはとかくたやすく身を任せてしまいがちであると述べたが、それと同時にわれわれはまた、自分のことは自分で決定したいという欲求も持っている。同等の熱心さでわれわれは、 自己決定と安心の双方を同時に求めよう とするのである。
    ○人間は自分の運命を少しでもコントロールできると思っているときには、課せられた任務、仕事に忍耐づよく取り組む、ということが明らかになっている。そういうときには、人間はいい仕事をし、仕事に意欲と責任を感ずるようになる。
    ○人間は誰でも、成功し、傑出したいと願う──それも切実に。したがって、やさしい仕事の達成可能性を過大に予想するのである。逆に、むずかしい仕事では、恥をかきたくない、安全を保ちたいと願うから、その達成可能性をかなり低く予測してしまうのである。
    ○人間というものは、 ほんの 少しでも選択の幅が広がったと 思うだけで、 はるかに 大きく〝その気になる〟ことができるのだ。
    ○超優良企業が超優良であるのは、平凡な人々から非凡な力を引き出すような組織を作っているからだ、というのが私たちの主張である。
    ○ひと口にリーダーシップと言っても、その中味はさまざまである。それは、社内のまとめ役を忍耐づよくつとめるという退屈な仕事であり、組織という器の中に、いつか発芽することを願ってさまざまなタネをまいていくことでもあり、経営システムをわかりやすく説き聞かせることによって全体の注意を少しずつ変えていくことであり、あるいは「方針」を書きかえて、新しい優先項目に注意が向けられるようにする、ことである。
    ○それは、考え方のほぼ一致した献身的な経営チームをトップに作り上げることであり、人の話を注意深く聴き、励ましの言葉を頻繁にかけてやり、その言葉を信頼できる行動で裏づけてやることでもある。主として言語の持つニュアンスで。
    ○彼は、人間どうしをしっかりと結びつける変容への欲求を喚起すると同時に、それをみずから例示しなければならないのだ。彼はまた、自分の打ち立てた一、二の価値観を、一貫して、かつかなり長期間にわたって信じつづけるという野暮くさい演技をつづけなければならない。どんな機会でも、どんな集まりでも、どんな聴衆を相手にしたときでも、けっして気を抜けないのである。
    ○真のリーダーは、人間性と説得力で圧倒し、力ずくで人を従属させるものではない。……実際は聴く者を元気づけ、インスピレーションを与えることによって影響力を及ぼすのである。
    ○人間はストーリーをもとに推論をし、自分がどんな成績であっても、上位一割にはいっていると思いこみ、傑出したがりながらも、他方では意味づけを求めてやまない(か弱い) 存在だ。
    ○要は、従業員に積極的な関心(または刺激) を与えることが、生産性と大いに関係するらしい
    ○このため集会ばかり開き、企業というよりは社会集団や信仰集団のようなことを始め、脱落していった会社も出てくる始末であった。
    ○バーナードは、ニュージャージー・ベルの社長をつとめたあと定年退職後ハーバード大学に移り、そこで自分の体験をもとに『経営者の機能』という本を書いた。
    ○経営者たる者は従業員のやる気を喚起し、インフォーマルな組織を積極的に活用すべきである、
    ○経営者の肝心な機能は、第一に社内相互間のコミュニケーションの仕組みを作り、第二に会社本来の作業について社員のやる気を確保すること、第三に企業目的を形成し、定義づけることである」
    ○組織の価値観と目的は経営者の作る標語や発言よりも、彼の行為そのものによって決定される、
    ○リーダーシップがたんなる組織体の能率という段階を超えるのは、(1)組織体の基本的使命を設定し、(2)その使命を完遂できる社会的有機体を創り出すとき、である。
    ○チェスター・バーナードが一九三八年に出した『経営者の機能』は、おそらく経営理論として完全なもの、と呼ぶに値しよう。
    ○ハーバート・サイモンによって書かれた『管理行動』もまた自己完結型の巨編である。一九五八年に出たマーチとサイモンの共著『組織』では、組織づくりに関して互いに関連した四五〇の提案が論じられており、これもやはり経営理論としては完璧に近い総括的なものである。
    ○まず出発点としてはっきりしているのが、合理主義の限界をわきまえることである。つぎに組織の人的側面に沿って四つの重要な前提条件が浮かび上がってくる。(1)人々は意味づけを求めている。(2)人々はほんの少しの管理を求めている。(3)人々はプラスの強化を求めている。つまり、ある意味で自分自身を成功者と思いたがっている。(4)会社の中にいる人々の行為と行動が、会社の姿勢と信念を形成する(その逆ではない)、の四点である。
    ○とくに強調したい概念がふたつある。(1)企業、とくに超優良企業を独特な企業文化として捉える考え方。(2)たとえ具体的に計画することは不可能であっても、目的をはっきりと定めることによって、すなわち企業進化の方向を明確にすることによって、企業は次第に成功に導かれていく、ということ。
    ○彼の言うグレー・フラノの背広を着た順応主義者のイメージが世間一般に定着し、ルールブック一点ばりで管理するには、大組織というものは、あまりに複雑すぎるのである。
    ○スタッフが特定のデータを探すというより、現場の監督が感覚を研ぎ澄まして異常信号がどこかにないか見張る
    ○身近なところから好ましい事例をたくさん拾っていくことに意味があるのである。
    ○適応力と会社の規模を他の大半の会社よりもうまく両立させている、
    ○超優良企業は 学習する組織 なのである。
    ○ある一定の──通常考えられているよりずっと小さい──規模を超えると「規模の不経済」が働きはじめる、「スモール・イズ・効率的」
    ○「この世に新しきものなにもなし」である。
    ○(舞台)成功の八〇パーセントは、その場に姿をみせることだ。行動重視〟について正確に述べることはむずかしい。会長みずから、あらゆる従業員から寄せられる苦情に答えるということをつづけているのである。
    ○歩きまわる経営
    ○(1)トップの人ばかりでなく、とくにラインの末端の人々がなにか価値のある行為を完遂した場合、あらゆる認知の手段をもってそれを称えること、(2)成果を互いに報告し合う機会をできるだけ多く設けること、
    ○ビジネスで成功をおさめるのにいちばん重要なのは、なんでもいいから手近にあるものを、いま 解決していくことだ、
    ○タスクフォースの人数は少なくあるべし。普通、一〇人以下。タスクフォースのメンバーになる人の資格条件は、「タスクフォースにはとてもはいる余地のない超多忙、超重要な人」という公理である。
    ○タスクフォースが325もあるという官僚化した会社では、驚いたことに、各チームごとに正式の設立趣旨その他を規定した書類(それも長文のものが多い) が作られていた。
    ○同一テーマで毎週半日間のミーティングを行なうなど、考えられない
    ○第一に、費用対効果と「規模の経済」を表面的に追究していくと、巨大な官僚機構に行きつくことになり、動きがとれなくなってしまうこと。第二に、超優良企業では、組織を分割して流動性を高め、各々の問題に適材を振りあてる方法や仕かけをいくつか(会社によっては無数に)知っている、ということ。第三に、個別撃破の手法は、まわりの状況が整っていなければ正常に機能しないこと。最後に、臨機応変の行動が横溢する自由な環境においては、一見組織が混乱状態を呈しているかに見えても、それはあくまで表面的なものであること。
    ○超優良企業に見られる〝 行動重視〟 の姿勢の中でもっともわかりやすい形で出てくるのは、これらの会社における実験や試行に対する取り組み方である。
    ○大部分の大企業が、企業といえども実験をし、学習する必要があるのだ、という基本を忘れてしまっている。
    ○あらゆることをもれなく分析することにお金をかけるのではなく、「できることをまずやる」ことによって、費用対効果の改善ができるということであろう。
    ○実験というのは単純な行為だから、理不尽なほど厳しい期限内でもやってのけられる。本来実行可能な行動に期限の圧力が加われば、不可能なことがいつも可能になる、
    ○実験は革新的なアイデアを実行に移すもっとも強力な手段なのです。
    ○「なにが障害となっているか?」ではなく、「これからさき、短時間でできることはなにか?」と考えるべきなの
    ○「当面の問題を一連の単純な事実に分けていくよう練習させることも、私の仕事の一部です。こうしてはじめて、みなが頭を使った行動ができるようになる」
    ○わずか一ページのレポートで、どうして あれほど 完全に、慎重かつ厳格にやっていけるのだろう、と部外者は疑問を抱く。その答(の少なくともひとつ) は、一ページにすべてをまとめるために、たいへんな苦労をするからだ。通常、ブランド・マネージャー補佐や若手のブランド・マネージャーが最初に書くメモは、一五回も書き直しが必要だ、という。
    ○個々の部門が記録をつけておくという書記のような作業は、七〇年代はじめに終わっている。
    ○「ほんとうのことを言えば、財務数値などはどうでもいいのです。数字を使うのはただ、責任者を喜ばせるためだけです。もし行動目標が達成されていれば、数字もひとりでによくなるものなのです」
    ○優良企業の持つ特質のうち、なんといってもいちばん重要なのが、その行動指向である。行動指向とはいっても、実験、臨機応変に組織されるタスクフォース、小グループ、一時的組織等々、一見どうということのないような仕かけである。
    ○けっして常任の委員会を作ったり、タスクフォースを何年間もつづけさせたり、ということを許容しない。
    ○基本的な人間の限界──つまり、人が一度に扱える情報は限られていること、自分に多少なりとも自主性があると思えば(少しでも自主「実験」の余地があれば)向上していくこと──に沿って動いているのである。
    ○顧客は無視されるか、厄介者扱いされているのである。
    ○どんなビジネスでも、その成功は、「物を売る」ことにかかっていて、この行為は、一時的にせよ企業と顧客を結びつけるものなのだ、という教訓である。  
    ○収益は顧客指向の結果として生まれる
    ○「たいていのセールスマンがやらずに私だけがやっていることがひとつある。それは、セールスはものを売るまえでなく、売ったあとに始まるのだ、という私の信念を実行していることです。……
    ○IBMの本社管理職たちでさえ、きちんと定期的に顧客を訪問し、セールスを行なっている。
    ○完全競争のマーケットでは、(製品差別化のできない) 小麦農家は高いマージンを得られないということである。
    ○ネメロフは、効果的なサービス指向に共通して見られる三つの特徴をあげている。(1)経営幹部が徹底的かつ積極的に参加していること。(2)従業員指向がきわだって強いこと。(3)従業員に対するサービスのチェック評価とそのフィードバックが徹底していること。
    ○多くの会社では、サービスで他社に抜きんでることが第一の目標とされている。
    ○利益目標は確かに必要である。しかし、それは社内指向の目標であって、組織の末端にいる何千という人々をそれによって動かすことはむずかしい。これに対しサービス目標は、末端の従業員にとってもつねに意味のあるものなのである。
    ○従業員のためのプログラムには、製品と同様にライフサイクルがある。そのライフサイクルは、製品のそれよりもさらに短い、と考えるのだ。
    ○すべてみずからをサービス業だと規定している、
    ○「サービスに金と手間をかけすぎる」ことがありうるか、という疑問である。もちろん、絶対的な意味でいえば、それはありうる。だが、絶対的な意味での答が「イエス」であるとしても、相対的な答は「ノー」だ、と私たちは言いたい。
    ○どれほどのサービスをすれば十分なのか、またなにをほんとうの品質と呼ぶのか、ということに対する答は市場にある。
    ○どんな会社でも なにかを作っているわけで、それに どれほど愛着をもてるかというところで、大きな差が生まれるのである。
    ○「100パーセントを目指さないというのは、はじめからミスを許容するということだ。求めないものを手に入れることはできないよ」
    ○「一方は『きちんとやるしか道はない』という心構えであるのに対して、他方はお客を統計上の数字として扱うのです。しかし、もしそれがあなただったら、『許容範囲内のミス』で片づけられたのではたまらんでしょう?」
    ○ニッチ戦略によって顧客に密着している企業には、五つの基本的な特質があると思われる。それは、(1)テクノロジーを抜け目のないほど巧みに利用している、(2)価格設定がうまい、(3)マーケット細分化に一日の長がある、(4)問題解決指向が強い、そして、(5)差別化のために費用をかけるのを惜しまぬ、ことである。
    ○ニッチに生きる人々は、進んで他との差別化に金を費やす。
    ○超優良企業を動かしているのは、テクノロジーやコストよりも「顧客に密着しよう」という姿勢なのだ、ということである。
    ○超優良企業の大半で、コスト以外の「なにか」にもっとも重点がおかれているということは十分言えると思う。そして、その「なにか」とは、それぞれのやり方で顧客に密着しようとする努力である。
    ○超優良企業は他企業とくらべ、ライバル企業分析では明らかに質量ともに勝っているからである。
    ○「よく耳を傾ける」トップ企業は先駆的ユーザーにとくに注意を払っている、ということなのである。
    ○技術の最先端あるいはそれに近いところにいるユーザーの声を聞き、ぴったりとフォローしていくことと、昨今の流行についてアンケートをとったり、パネルディスカッションを行なうこととは、まったく違うものである。
    ○その最大の役割はアイデアを生み出すことであり、そのアイデアを現実的な社内の企業家精神に富んだ人々──たとえばプロダクト・チャンピオンとか、顧客のクレーム処理にあたるセールスマンや「先駆的顧客」、それに顧客指向のマーケティング担当者たち──が「盗み」、いじくりまわし、そして応用すること──それも今日それをやること──が重要なのである。
    ○これらの企業では、分権化が進んでおり、驚くほど末端にまで自主性を持たせているのである。
    ○(失敗したプログラムは) 例外なく、そこには 自発的に行動する チャンピオンが欠落していた。かならず〝他人のプログラム〟でまわりからなだめすかしてその任にあたらせた場合であった
    ○その言葉を行動に変える役割を買って出ないからで、不足しているのは、革新を 実践 する人々である。不足しているのは、実践のためのノウハウとエネルギー、持続する実行力を持った人々である。
    ○〝プロダクト・チャンピオン〟とは、一般社員の中にいる「モーレツ」な熱中家で、普通のいわゆるサラリーマン・タイプとは違うことはすでに述べた。
    ○〝重役のチャンピオン〟として活躍するのは、例外なく 元 プロダクト・チャンピオンである。
    ○〝ゴッド・ファーザー〟の典型は、みずからチャンピオンとはなにかという模範となるような老指導者である。
    ○つきつめれば「個別化」「細分化」であり、「規模の経済」や「重複の排除」を目的にしたやり方ではなく、たとえ最適単位以下の規模しかなくても、管理しやすく、運営上の焦点の定まりやすい単位で組織する、という考え方なのである。
    ○優良企業で、革新を生み出すコミュニケーションのシステムには、五つの特徴があるようだ。1 コミュニケーションのシステムが形式主義的でないこと。2 社内コミュニケーションがとくに緊密であること。3 コミュニケーションの道具がふんだんにあること。4 徹底化をはかる工夫。革新的アイデアを生むシステム、実質的に革新を積極的に制度化しようというプログラムである。5 形式ばらない活発なコミュニケーションのシステムは、 逆にきわめて厳密な管理のシステムでもある。
    ○誰も気づかない理由は、書類さえ時間どおりに(!)整っていれば、すべてうまくいっているハズだ、という官僚的な前提、思い込みがまかり通っているからである。
    ○社長として間違いをおかしていなかったら積極的に決断を下している、とは言えない。
    ○失敗するのも 能力 のうちだ。失敗を恐れていたら、革新的なことはできない。
    ○船長は血の出るほど舌を噛む。
    ○多くの会社では、そのアイデアの欠点をすべて指摘し、貧困なアイデアだと決めつけて、自分は安全地帯へ逃げこんでしまうこと
    ○われわれが用いた方法にとくに変わったものはありません。いまなにをやっているか、どんなことが起きているのか、などを艦内放送でこまめに伝えるようにしました。こうした細かいことよりも大切なのは、われわれのやっていることのすべてに関心を抱かせ、そこに喜びを見出させ、みずから進んで意欲的に行動するようにしむける、そのための努力をつねに怠らないということでした。
    ○従業員を十分に教育し、妥当かつはっきりとした目標を与える。従業員に自主性を持たせ、すすんで業務改善、業績向上につとめるようにしむける。そうした意思と責任感を企業の側が持つという意味で、人を大切にせよと言っているのである。
    ○秘密主義をとり、従業員に情報を与えまいとする。言わんとすることははっきりしている。(大人でない)従業員にそんなことを知らせても、百害あって一利なし、という考えだ。
    ○書類をうまく作ることじゃなくて実績をどんどんあげることが大事なのだ、誰とでもどこでも話し合える能力が必要なのだ、と言う。  
    ○仕事が楽しい、仕事の中に楽しみを見出す──超優良企業のほとんどに共通して見られる特徴である。
    ○1ページの簡単な経営方針を発表した。その要点はつぎのようなものであった。人々をまきこみ、人々の信頼を得、人々の意欲、熱意をかきたてるのに、面と向かってのコミュニケーションほど強力なものはない。
    ○自己の技量をのばし、昇進の機会を広げ、あるいは自己研鑽につとめたいと願っているわが社の創造的な人々に、教育訓練により自己啓発の機会を与えることは、われわれの義務である。わが社の人々に安定的雇用を保証することが重要である。
    ○勤勉さに対する報奨策はもちろん必要だが、よいアイデア、よい提案に対する報奨策も作り出せ。
    ○彼は各部門の管理職が部門の構成員のすべてと毎月最低一回は対面して、その月の業績について話し合うことを求めている、彼は「タウン・ミーティング」と呼ぶ集会を開き、誰もがみな出席するように求める。
    ○人間関係や人の扱いについてほんの少しでもへまをしたら、それでおしまいさ。たとえどんなにいい業績をあげている者でも、許されることはないのだ
    ○私たちはそこにいくつかの驚くほど共通した要素が見られることに気づく。第一には、使われている言葉である。人間尊重の組織体で使われている言葉には共通点が多い。私たちは、真の人間尊重の考え方にはかならずそれにふさわしい特別な言葉がなければならないのではないかとさえ考えている。呼称によって従業員の〝位置づけ〟を高める配慮がそこに見られる。これらの試みに成功した企業は、企業家精神を失うことなく、同時にひとつの社会的母体となったのである。もうひとつ、超優良企業に共通して見られる驚くべき特徴は、 厳格に従わねばならない命令系統といったものが、 どの企業にも見出せないことである。情報交換はインフォーマルに、というのがこれらの企業のやり方なのである。ぶらぶらと あちこちを動きまわることは、たしかに誰にでもできることではないかもしれない。自然にそうしたことができる管理者はあまり多くない。その態度が不自然だと、管理者はぶらつくことで従業員にへつらっているとか、ぶらつくふりをして従業員を監視しているのだ、と誤解される恐れもある。現場をぶらついてあまり即断即決を連発すると、命令系統を乱し、ぶらつきながらの現場訪問の本来の意義、形式にとらわれない自由な意見交換等々の目的が失われてしまう。
    ○形式ばらないという特徴は、ほかの面にも数多く見られる。たとえば、超優良企業の事務所、工場では、まずレイアウトに違いが見られる。形式の排除は、簡素な家具備品、開かれたドア、少ない間仕切り、大部屋主義からうかがうことができる。
    ○超優良企業が教育訓練に費やす時間が普通の会社よりはるかに多い、と断言することはできない。だが、そう断定してもおかしくない証拠、 教育に対する熱心さは随所にうかがえる。
    ○新しくはいってくるマネージャーたちを、いかにはやく 自社の体質に適応させ、 とけこませるか。この点でも超優良企業にはきわだった特色が見られる。大まかな目標、価値基準が設定され、それについての情報が広く誰にでも共有されているので、働いている人々には、いま自分がやっている仕事がうまくいっているのかいないのか──そしてまわりの誰がいい仕事をし、誰がいい仕事をしていないかまでも──すぐわかるのである。情報を共有するプロセスでもっとも重要なことは──大がかりな心理分析調査によっても裏づけられていることだが──それが報酬などに直接ひびく業績評価を伴うものではないということである。この一線が微妙であることは私たちも認める。
    ○マクファーソンは言っている。成功の鍵は真ん中にいる60パーセントの人々が一、二歩上の段階を目指せるようにしてやることにある、と。  
    ○デルタ、ダナ、ディズニーの例を思い起こしていただきたい。誰もがどの仕事でもできるというのが、これら企業では当然の原則なのである。
    ○組織が動きの鈍い、融通のきかない官僚機構と化す最大の元凶は、えてして階層があまりにも多すぎることにある。
    ○ビザ社のディー・ホックのつぎの言葉 「個々人の判断力の不足を社規や分掌を作って補おうとすると、かならず自己矛盾に陥る。なぜなら、判断力なるものは、使わないかぎり発達しないものだから」
    ○経営に関するただひとつの万能薬的な助言、「自社の価値体系を確立せよ。自社の 経営理念 を確立せよ。働く人の誰もが仕事に誇りを持つようにするためになにをなしているかと自問せよ。10年、20年さきになって振り返ってみるとき、満足感をもって思い出せることをしているかと自問せよ」
    ○優良企業に共通して見られる五つ目の特徴を、私たちは「価値観に基づく実践」と名づける。
    ○価値観は通常、文書によって正式に伝えられるものではない。もっとくだけたやり方で流布されることが多いのである。
    ○創造的なリーダーシップとは、会社づくりの技術であり、人にあらためて働きかけ、技術的な素材をうまく配置して、新しい普遍的な価値観を体現した組織体を作ることである。
    ○ひっきょう超優良企業とは、逸話や神話や伝説を臆面もなく収集し、それを広めて、自社の基本的信条を支えるものだということがわかる。
    ○超優良企業の間に、二、三の共通する特性があることを知った。
    第一に、私たちの最初の調査でわかるように、それらの価値観は、まずたいていの場合、量的な表現ではなく、質的な面を重視していることである。
    第二の特性は、組織の最底辺にいる人々を鼓舞しようとする努力である。
    第三のポイント 指導者の主要な責任は、歴史の各段階で内包する大きな矛盾を見きわめることだ。どんなビジネスも、 つねに ただならぬ矛盾──コスト対サービス、日常業務対 新機軸、正式対略式、「管理」指向対「人間」指向など──の融合体である。超優良企業の価値体系は、こうした明らかな矛盾の一方の側にかなりはっきりとふれて現われる、
    ○超優良企業についてよく見られる信条のきわだった特徴は、範囲が狭く、そこには二、三の基本的な価値観がもりこまれているだけである。1「ベスト」であるという信条 2細部をきちんとやることが重要であり、よい仕事の基礎だという信条 3人間の個性を重視するという信条 4優れた質とサービスへの信条 5組織のほとんどのメンバーが革新者となり、そこから当然失敗を進んで許容すべきだという信条 6形式主義を排して意思の疎通を強めることが重要だとする信条 7経済成長と利潤が重要だとする明らかな信条とそのことの認識
    ○部下を自分のオフィスへ呼びつけてはいけない。萎縮させてしまうからだ。むしろ、 彼らの オフィスへ出かけていくとよい。
    ○ひとつには、自分の会社に本当にふさわしいものは、考えられるさまざまな価値体系のうちのごく一部だけでしかないからである。またひとつには、その体系を浸透させるのが、ひじょうに骨のおれる時間のかかる仕事だからである。
    ○買収によって、あるいは内部の多角化によって領域を広げてもけっして基軸から離れない会社が、他社をしのぐ業績をあげている、ということである。
    ○意味するところは重要である。なんらかの形で分岐し、成長するが、なお自社の中心的な技術をしっかりと守っている組織は、そうでないところよりも優れた業績をあげる、ということである。
    ○ある程度の多角化をし、環境に適応して安定の基盤を追求しながら、しかも基本から離れない会社が、多くの場合、優れた業績をあげていることがわかるのである。
    ○製品別事業部制を基本とした場合の組織を有効なものにするためのヒントとしては、つぎのようなことがあげられる。 (1)各部門を完全に独立した形で保つこと。製品の開発、財務、人事を含めて、主要なすべての機能を各部門に持たせる。(2)異種のものがでてきたら、迷わずスピンオフし、独立させるとともに、独立を奨励すること。J&Jの150の部門は、10年まえに80しかなかったのを増やしたものである(この点は、われわれにとって興味深いところである。多くの会社が、これとは反対に、大がかりで重層的な組織を作ることに専念してきたからである)。(3)あるガイドラインを設置すること。これによって、新しい製品や製品系列を自動的に独立した部門とする目安ができる。たとえば、スリーエムでは2000万ドル(48億円) 前後が基準になる。(4)人や製品、あるいは製品系列をも定期的に事業部間で移動させるが、その場合、たいていの会社で起こるような反目が生じないこと。
    ○事実上どうしても本社が持たなくてはならない特定の機能はない、
    ○これまでに明らかにされた三つの主たる要請に応えるものである。すなわち、基本的なことを効率よく処理する、つねに革新的である、少なくとも大きな脅威に適切な対応ができる、の三項目で、これにより企業は、硬直化を回避することができる。 基本的なことを効率よく処理する、ということに関しての柱は、「安定性」である。つねに革新的である、という要請に対しては、「企業家精神」の柱がある。そして、対応力に関しては、「習慣打破」の柱がある。
    ○定期的に組織を改めるというのは、つぎのことを意味する。 (1)定期的に新しい部門を「分離」して、古い部門の巨大化と官僚化を改善する意欲。(2)製品ないし製品系列を部門から部門へと移し、特別な管理能力を最大限に生かし、市場の再編成に取り組もうとする意欲(スリーエムはとりわけこの面で優れており、ある製品がある部門から別の部門へ移されても、ほとんど縄張り争いが起こらない)。(3)優れた人材を集めてプロジェクト・チームを作り、つねにそのような調整が一時的なものであるとの了解のもとに、組織上の重要な問題の解決にあたらせたり、組織としての重点目標と取り組ませようとする意欲。(4)必要が生じたら、各部門を再編成し改造しようとする(ただし基本的な中心形態の一貫性は保つ) 一般的な意欲。  
    ○自主性が規律から生まれていることがわかる。 規律( 共有された価値観) がワク組みを提供する。 それが人々に、本当になにが問題であるかを確実に予想できることから生まれる自信( たとえば実験してみることへの)を与える
    ○超優良企業は、本当のところ、「長期的に考えて」いないし、これといった五カ年計画も持っていないのである。

  • 著者の2人はどちらもMBAの学位を持ち、R・H・ウォータマンはマッキンゼー社で21年の実務経験を持つ。訳者は技術者としても豊富な実務経験を持つ、大前研一氏。アメリカの62社をサンプルとして取り上げ、25年間のデータを分析した結果に基づいて書き綴られている。リーダーシップのあり方について論じている内容が多く、経営分析や経営計画などを偏った合理主義に基づいて推進すれば、生身の人間から構成される組織の活きた要素を取り除いてしまう点を問題提議している。「合理主義的な考え方は、価値観とういものがいかに重要かを忘れさせる」(P103)ということです。
    経営研究家のクリス・アージリス氏が1950年代にマトリックス組織の問題点として中間管理者の無力感や資料作成や会議の多さなど組織の非効率性を指摘していたことに触れられているなど、豊富な事例が紹介されており、現在の私たちが生きている組織を見つめなおす視点を養うことができると思いました。組織に関する考察は、時代を超えて参考になるものではないでしょうか。
    普段組織で働く社会人にとって、とても多くの気づきが散りばめられているように感じる良書だと思います。

  • 【読書メモ】
    チャンドラー「組織は戦略に従う」
    →7S「ソフトこそハード」

    大企業がいかにして活力を保ち、
    革新的でありつづけているか

    判断基準
    1. 年平均資産成長率
    2. 年平均資本金増加率
    3. 市場価格対帳簿価格の比率
    4. 使用総資本利益率の平均
    5. 資本金収益率
    6. 売上高収益率

    アンソニー・エイソス「優れた経営者というものは、もちろんお金の持っている意味合いをよく知っているが、それ以上に人そのものに深い意味合いをみつけるものである」「真実はたとえの中に潜む」

    組織全体が「有機的」で企業家精神が旺盛

    合理主義的プロセス(分析、計画立案、指示命令、特定化、チェックなど)
    非形式的経営プロセス(話し合い、試験、試行、失敗、継続検討、習熟、方向転換、調整、修正、観察、目視など)

    決定、実践、開拓

    人間は自分を成功者と考えたいのだ
    →成功のもとは成功

    人間は、理路整然と考えるかわりに、事例、小ストーリー、印象といったことを積み重ねて思考を行う。

    プロフェッショナルは、何年もの教育や実施の経験を通じて、パターンを豊富に蓄えてきた人々。

    プラスの動機付けの強化
    行動を主体とした目標管理

    アブラハム・ザレズニック「マネージャーは人々とともに働くが、リーダーは人々の感情を高める」

    バーナード「企業の目的は言葉による形成よりむしろ、とられた行為の集積によって決定される」

    グループの最適の大きさは7人前後
    先駆的ユーザーに注意を払う
    情報交換はインフォーマルに
    右往左往経営ーつねに現場と接触しつづける
    息の合ったトップ集団をつくる

  • 言わずと知れた名著、、、という事で読んでみました。

    革新的な超優良企業には、以下の8つの基本的特質がある。
    1.行動の重視、2.顧客に密着する、3.自主性と企業家精神、4.ひとを通じての生産性向上、5.価値観に基づく実践、6.基軸から離れない、7.単純な組織・小さな本社、8.厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ

    また
    「顧客・市場競争会社に関するしっかりした数値に基づいた客観的全体像を土台としない会社は必ず、権謀術数の複雑さの中で何を優先すればいいかわからない会社」
    「合理主義の限界をわきまえる」
    「経営をオフィスに閉じ込めない」
    「ビジネススクールああふれるほどの才能を持った管理者を生み出し、その才能は企業内で主流とはならない」
    「生きるためのwhyを見つけ出したものは、ほとんどいかなるHowにも耐えることができる」
    「ある目的意識を人の中に植え付けるということは創造性に対するひとつの大きな挑戦である」
    「ある産業の中で、企業が生産性を上げていくプロセスそのものが、その企業の柔軟性と創造性を奪う」
    「サービスで第一でやっていけば、利益はおのずからついてくる」
    「何かが成し遂げられるときには、かならず、その使命のほかにはなにも考えられない偏執狂的な人間がいるもの」
    「いつも新鮮であるためには、現場訪問を続けること、質問をしつづけること、これです。人々あいつもなにを考えてるか、と質問を怠ってはいけないのです」
    「自社の価値体系を確立せよ。自社の経営理念を確立せよ。働く人の誰もが、仕事に誇りを持つようにするためになにをしているか自問せよ。」

    など示唆に富む内容でした。古い本であり、多くの企業のバイブルにもなった本だと思いますが、振り返って読んでも考えさせられるものはあります。

  • 今の時代の話ではないなって感じ。

    取り上げている会社も世代が違うというか。

    あと、内容が難しくて読むのが退屈。

  • 以下まとめ

    ・優良企業と呼ばれる企業は、事実上の「サービス業」であると定義。品質とサービスが最重点になっている。

    ・チャンドラー曰く、「組織は戦略に従う」

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