官賊と幕臣たち: 列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート

著者 :
  • 毎日ワンズ
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本棚登録 : 276
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901622868

作品紹介・あらすじ

恫喝外交をしかける欧米列強外交団、大英帝国の支援を受けた薩摩・長州のテロリズム、命を賭してわたり合った幕臣官僚たち。日本近代史を覆す衝撃の維新論「明治維新という過ち」待望の第二弾!

感想・レビュー・書評

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  • マーケッティングの専門家による江戸時代の幕臣を中心とした政治体制の話。官賊と幕臣について分析するのみならず、前半は、特に鎖国や切支丹、さらにオランダ、ポルトガル、イギリス等列強との南蛮貿易をはじめとする外交政策について書かれている。全体的に浅く広く述べられており、焦点がはっきりしない。薩長批判等、同意できる内容もあるが、思いつくがままに、都合のよい資料をつなぎ合わせて論理構成がされているように思え、説得力がない。あまり得るものがなかった。
    「(薩長)尊王という時代の気分に乗って、その皇であるはずの天皇を政治的な道具として利用しつつ、ひたすら幕府の足を引っ張った。彼らが尊皇攘夷の実践として京で繰り広げた反幕行動としての殺戮は、どうみてもテロリズムと断じざるを得ない。残念ながら、よほどの胆力を以って臨まない限り、いつの世もテロリズムは一定の効果を上げるものである」p10
    「(戦国時代の)乱獲りは、放火と人捕り、物取り、強姦がセットになっているのが普通である」p41
    「徳川体制になってからの大阪の陣においても、大阪の町中で激しい乱獲りが繰り広げられ、この様子は大阪夏の陣図屏風にもはっきり描かれているから、広く知られているところである」p41
    「百姓たちには「御恩」と「奉公」という思想は根付いていない。まして武士道など、精神の埒外であろう。仮に命がけで闘ったとしても、恩賞を与えられるわけでもない。そういう百姓たちを、下人として陣夫として、あるいは侍(雑兵)や足軽として動員するには、時に乱獲り休暇を与え、落城させた後の火事場泥棒のようなご褒美乱獲りを許しておかざるを得なかったのである」p44

  • 「明治維新という過ち」で、著者が意を通すことができていないと感じた点を中心に記載したものらしい。
    その点、主張を同じくしながらも、丁寧に綴られ、過激な内容が抑えられているだけに、読み易かった。
    徳川幕府という組織は、時代に取り残され、硬直化していたのは確かだろうが、それでも200余年の平和な世を築いたことで、経済的な余剰が生まれ、文化水準が上がり、優秀なテクノクラートが育ったのであろう。
    歴史解釈は一筋縄ではいかない。教科書で学び染みついた考えを払しょくするのは難しいのだが、歴史を見る視点を変えてくれる本をまた読みたいと思う。

  • 全力でおススメ

  • 前作の焼き直しのように思えるところは、著者の影響を受けつつあるということかもしれない。(その話なら知ってるよ、の後知恵バイアス。。)
    阿部正弘を絶賛しているのが意外だった。
    小栗上野介忠順についてもっと知っておきたいと思った。司馬遼太郎も珍しく褒めてた幕臣であるし。

  • 前のがおもしろかった。

  • 【読書・勉強】官賊と幕臣たち―列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート原田 伊織 / 20170515 (46/642) <260/77331>
    ◆きっかけ
    ・日経広告

    ◆感想
    ・徳川幕臣にも優秀な人物が沢山いて、幕府の存続のさらにその先の日本を守るために命を懸けて努力をした、という主張は興味深い。確かに、幕臣は無力で、坂本龍馬を始めとする明治維新で活躍した志士たちは美化されすぎ(司馬遼太郎の影響?)、という単純な対比ではないハズだとうすうす違和感を持っていたので頷かされる点は多い。
    ・ただ、長州をテロリスト呼ばわりするのはいかがなものか。

    ◆引用
    阿部正弘、堀田正睦、言い直助政権が敢然と対外協調路線に踏み切り、川路聖膜、水野忠徳、岩瀬忠震、井上清直、小栗忠順といった英傑といってもいい優秀な徳川幕臣テクノクラートが、その知力と人間力というものを武器に欧米列強と正面から渡り合い、時の考明天皇がいじん嫌いでありながらも、幕府に対する大政委任という政治上の大原則を一貫として崩さず、薩長を中心とした尊攘激派、いわゆるテロリストが喚く復古主義というものを忌み嫌ったことが、この国が二元政治状況に陥ることを辛うじて、防ぎ、それによって、幕末日本は欧米列強の侵略を防いだと見ることが出来る。

  • 倒幕は「維新」などというものではなく、関ヶ原の合戦で徳川家に恨みを抱いた薩長2国による武力クーデターであり、特に長州はテロリスト集団であったとする著者による幕末の諸外国との条約交渉についての再評価。

    馬関戦争始め、跳ね返りによる武力テロは体制の足を引張るばかりで、何物をも生み出さないとの著者の指摘は、安重根による伊藤博文暗殺や5.15事件、2.26事件を見てもよく頷ける。

    150年続いた薩長史観の命運も、もはやこれまでか。

  • 教科書レベルでなんとなく知っている明治維新のイメージをひっくり返す本。江戸幕府が無能だったわけでも、薩長が新時代を先取りしてたわけでもなかったことが知れてよかった。もう少し幕府側の視点から幕末について勉強したいなと思う。

  • 今までの歴史観がまるで違ってきた。
    日本人を奴隷として大量に売りさばいていた東インド会社とイエズス会。
    幕臣達は有能だった!

  • 29年3月28日読了。戦国時代の人狩り、人買い、人売り。それに加担するイエズス会の真の姿。オランダ風説書に関わる日本人通詞の仕事。幕末期に薩摩長州のやったこと。知らなかった事もあったけど、作者の薩長嫌いと徳川幕府至上主義っぽい考え方が、半端なかった。まあ、山口県にはいまだに汚い所があるような。観光地の説明板にしても、専門家が間違いを指摘しても、都合が悪かったら直さないとか。これは本当だと、指摘した本人が言ってたから、間違いなし。偽錦旗制作場所なんかも堂々と看板あるし。勝てば官軍だな、やっぱり。私的には、川路さんや、岩瀬さん、浦賀奉行所与力の中島三郎助さんの生き方に、感銘を受けるけど。

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著者プロフィール

原田伊織(はらだ・いおり)
作家。京都伏見生まれ。大阪外国語大学卒。2005年私小説『夏が逝く瞬間(とき)』(河出書房新社)で作家デビュー。『明治維新という過ち』(毎日ワンズ)が歴史書としては異例の大ヒット作となり、出版界に明治維新ブームの火をつけた。「明治維新三部作」として、『明治維新という過ち』『列強の侵略を防いだ幕臣たち』『虚像の西郷隆盛 虚構の明治150年』(共に講談社文庫)がある。その他の著書に『官賊に恭順せず 新撰組土方歳三という生き方』(KADOKAWA)、『明治維新 司馬史観という過ち』(悟空出版)、『消された「徳川近代」明治日本の欺瞞』(小学館)、『日本人が知らされてこなかった江戸』『知ってはいけない明治維新の真実』(共にSB新書)など。雑誌「時空旅人」に『語り継がれなかった徳川近代』を連載中。

「2021年 『昭和という過ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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