福祉社会と社会保障改革: ベ-シック・インカム構想の新地平

著者 :
  • 高菅出版
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901793049

作品紹介・あらすじ

社会保障制度の揺らぎを一つには「企業中心社会」の経済システムの変化ともう一つにはヨーロッパなどから始まったベーシック・インカム論の構想が芽生えてきたことから捉え、ベーシック・インカムを紹介する書であり、また日本でのベーシック・インカムの可能性を探るものである。

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000019958

  • 歴史から理論を通しての説明とは別に現実に応用した実例と日本での可能性に付いて、現状の福祉と照らし合わせながら幾つかのシュミレーションしているところが面白い。
    こうして数字を重ねて考えてみると、あらゆる人の損得を考慮してもまんざら無理な話でないことが分かる。
    問題はこのベーシックインカムの権利を担保に金を借りたり売り買いすることを禁止しない限り、貧困層の再発を止められないだろうと思う。
    すばらし手段も使い方次第だから、悪用の防止をしっかりしていないかないと元も子もなくなる。

  • p42まで読んだ。

  • 2010
    業務上の必要もあり、高菅出版さんから購入。


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    2009/12/6
    小沢修司さんは、先月聞きにいったシンポ「ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか」の登壇者のひとりだった。「Volo」10月号でも、BIの財源の話でマンガになっていて、シンポの後にほんの少し話したときにはそのマンガの絵のことを「実物よりも髪の量が多いと言われてるんです」とニコニコとおっしゃっていた。その頭は(べてるの向谷地さんに似てる)と私も思っていた。

    近所の図書館には小沢さんの本が1冊しかなく、このBIがらみの本をリクエストしたら、ヨソの図書館からの相貸でやってきた。

    どう見てもかたそうな本である。タイトルに漢字が10個も並んでるし。借りてから、ちらちらっと眺めてはいたが、小難しそうな感じで、タイトルからすると、橘木・山森対談の『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』の仲間なのだろうが、どうしよっかなー、読まずに返してしまうかなーと思っていた。

    が、ベーシック・インカムへの興味もあって、せっかくやしと読みはじめてみたら、ぱっと見の印象を裏切って、読みやすく、わかりやすかった。

    タイトルと見た目でちょっとソンしてる本である。

    2章の、社会保障改革と国民負担の話は、新聞を読んでるくらいではこんなのはわからんなーと思った。1994年に厚生省・高齢社会福祉ビジョン懇談会の報告書、いわゆる「福祉ビジョン」は、1980年代に展開された"日本型福祉社会"構想の破綻を自認したものだった、という。

    "日本型福祉社会"構想は、社会保障は経済成長の足かせだ、福祉水準を低い状態に留めておくことで、国民の自助努力=「飢餓的活力」を引き出し、その活力を経済成長につなげる、自助努力の主体を家族に求め、家族を受け皿にすることで公的負担を軽減する、というものだった。

    『We』163号で竹信さんが「女のタダ福祉」と言っていたあれである。家族に求めるとは、女にタダでやってもらって、それで国が負担する社会保障は減らしたらええ、と言ってたのである。

    まあしかし、それでうまくいかなかったから、「福祉ビジョン」では、適正給付・適正負担が必要と言い始めたわけである。何が「適正」かよくわからんが。

    小沢さんは、「福祉ビジョン」が考えた「社会保障の給付と負担」の試算の根拠として、「負担」の内実が正確に示されてないところが大いに問題だと、その計算の実像を出してくる。(これは、さいごのところで、税率50%というとビビるかもしれんが、ベーシック・インカムが導入されたとしたら、手取りとかはこんなもんでっせと見せているのと似ている)。

    ここがエライ。ほんとは、新聞記者なんかが、こんなのをわかりよく記事に書いて示してくれたらええよなあと思う。

    給付と負担は、みんなもらうほうはいいとして、結局は「誰が何をどれだけ負担するのがよいのか」という話である。税率50%というと「そんなにとられるんか!」と思ってしまうココロを利用して、政府としては「みなさんの負担が多いと大変でしょうから、国がこーーーーんなに負担してるんですよ」と言いたいわけである。

    そのときに「国民負担」とか「国民負担率」ということばが使われた。こんなコトバを使われると、それと「公費負担」とを引き比べて、これくらいやったらお互いさまや、しゃーないな、と思う。

    ところが!この「国民負担」にカウントされていないものがある。

    この「負担」の中に、いわゆる個人負担(例えば医者へかかったときの窓口での患者負担とか、保険が適用されない室料差額、交通費、付き添い費とか、あるいは社会福祉施設の利用にかかる費用徴収分とか)が一切カウントされていないのだという。もちろん、そういう個人負担をすべて把握するのはかなり大変だとは思うが、推計くらいはできるだろうよ、一切カウントしてへんて、どういうことやねん。

    こういう数字のトリックのようなことが行われているので、たとえば公費負担が半分、といったって、実態としてはその割合はもっと少なくて、私的負担、個人負担がいっそう多いのである。

    小沢さんは「受益者負担=自己負担の重さにあえぐ国民の実態がいっさい反映しないというのは、あまりにもお粗末な統計」と書いている。

    こんな実態にあわぬ数字を使って、「いやいや、国はもう十分負担してますねん、ホラこんなに出してるんでっせ、ちょっと財政も厳しいし、ここは一つ公的負担の抑制をお願いしまっさ」と言っていたりするのだ。

    ほんまに、こんなんは、ちょっと新聞をよく読んでるくらいでは、なかなかわからんことである。調査結果の読み方やらナンタラ統計の数字には注意が必要だといつもいつも思っているが、こんなへぼい統計の上で「負担と給付」が議論されていたとは!!!

    その他、BIについて、またBIに対してよくある批判についてもわかりやすく検討されていて、12/19の東京の講演「ベーシック・インカムのある社会を構想する」(http://femixwe.blog10.fc2.com/blog-entry-156.html)では、こんなのをライブで聞けるんかなー、近かったら聞きに行きたいなーと思いながら読み終える。

  • ベーシック・インカムを調べていて、参考図書として。
    これまでの日本の『社会保障』の前提として、強い性別分業があり、それにもとづいて男は企業、女は家庭で働いていた。企業は企業福祉、家族は家族のつながりという形で、社会保障制度の弱さを補っていた。という視点が翻訳本にはない点。
    BIは、所得に関する保障に限定されていて、医療福祉サービスや、現物給付は度外視しているとの記述は、そこのとこどうなるんだろと考えていたのでありがたかった。
    (が、BIがまだ実現されていないことを考えると、そこはどうなんだろう、という点ではなく、どうすればいいんだろう、と考えるべき点かもしれない)

  • 図書館

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著者プロフィール

京都府立大学福祉社会学部教授

「2002年 『福祉社会と社会保障改革』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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