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- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784901998512
感想・レビュー・書評
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初めての幻戯書房。「げんぎ」書房と思ってたら「げんき」書房だった……もう覚えた。
吉田一穂の詩と童話と、詩作の技法、思想、文壇への態度、芸術論等々の試論でそれらを詳解する趣の傑作選。詩と童話のごく一部なところに少々拍子抜けはしたものの、試論の読み応えでむしろお釣りが来たかも。岩波文庫『吉田一穂詩集』と合わせて読むと隙が無いか。そもそも試論の一部は、これに見えた作品をある程度散文化したもののように読める。ちなみに、のってくると飛躍するのか、散文化してむしろ読みにくくなった部分もあると思う。
著者についてはストイックな印象を強めた。同時にそれが行き過ぎた狭量のきらいも。大衆芸術、大衆文芸、大衆作家への当たりの強さに相槌のち敬遠したくなる。一部の人への、生きていて恥ずかしくないのかといわんばかりの悪口にはなかなか閉口。いっそ詩情豊かな、滑らかで美しい罵倒に代えてくれないものか。賛美し称揚する文章はたぶんに詩的なのに。
それから、これだけ色々にぶち上げながら、すでに世に出た作品を繰り返し修正するのは芸術家の態度ではないと思う。誤植を正すのは別として、発表してのちに認めた瑕疵も含めてのその作品なのでは……。私としては、書ききったあとのことはよう知らん、というくらいのスタンスが好き(神林長平がそんなことを言っていた)。作品のタイトルだって、商業戦略や恩義の人のすすめなんて関係なく、自身の良しとするところをはじめから貫くべきだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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